闇の中の作戦会議INダンジョン
「まずい」
「ですねー」
「…誰じゃ、やらかしたのは」
「ウチのものじゃないですよ、ヴィヴィアンの100歳パーティしてたじゃないですか」
何がまずいかといえば、ダンジョンの維持魔力を取りに行っていた街が急に魔族を警戒しだしたのだ。
魔族は魔力の自己回復ができない。というか魔力の自己回復ができない種族を魔族と呼ぶ。
生きていくだけなら、人からじゃなくていい種族もあるし、はぐれダンジョンだけあってうちにいる者たち数十人の中で「魔族」はたったの8人。
この8人中5人が「魔力を奪うが比較的無害」と言われる淫魔&男淫魔。
必要魔力は、魔法などで使う分だけ、摂取方法もキスorセックスと平和的。ついでに言えば、人間と同じで、魔力は完全に枯渇すると気絶するものの、少なくてもダルい位で生存にはあまり関係が無い。
残りの3人は、死神・吸血鬼・人狼。
人狼は、満月の日に暴走するから無害とは言われないが、魔力補給はそこらの動物の生命力を食べて魔力に変換すればOKなので問題無し。変身しなければ消費もしない。同じく魔力が足りなくても生存には問題無し。
大変なのは死神・吸血鬼。
生きているだけで魔力を消費していき、一定量を下回ると暴走する。戦闘力が高く、必要魔力量も桁違いだ。
吸血という手段で生命力を魔力に変換する吸血鬼はまだいい。
死神は魔力の器を食べる。
食べられた人は魔力枯渇で気を失い、目覚めることは無い。
つまり、仲間からもらったりは出来ないのだ。
そもそもウチは、"はぐれダンジョン"とか"ごっちゃダンジョン"とか言われるダンジョンなので、ほとんどの人が魔族じゃない。
死神・吸血鬼・人狼・淫魔、エルフ・竜人・獣人・天使・魔女&聖騎士(人)。
たまに周りの森の木の精霊も遊びに来る。
家から出ずに引き篭もれるのでは?と言われることもある。
まぁ言われるだけで、死神ユピテルさんのことがあるので実際は無理だ。
個人単位で見ればユピテルさん以外はそれほど問題がない。
問題は、ダンジョン維持者が”死神”、ユピテルさんであること。
そして、ダンジョンの維持魔力は膨大な事。
更に、ダンジョンの維持にはダンジョン維持者の魔力が使われること。
なので、この家の維持魔力(ユピテルさんの魔力)は近くの街の人間から貰ってきていた。
その街が、いきなり魔族を警戒するようになった。
魔力を多くもつ高位貴族は対魔結界の中に引きこもって出てこない。
結界自体は破れるが、貴族街には聖騎士がうじゃうじゃ。
簡単に言えば、ユピテルさんの食事が無い。
問題だ!!!!
ということで
「まずい」
「ですねー」
と冒頭の会話になる。
何故バレたかというと、食事中の姿を見られて後始末せずに逃げたからです。
ダンジョン=ユピテルはとばっちり。