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お久しぶりです。
…遅くなって本当にすみません。
最初っから月一更新守れていないですね。はい。
これからもゆっくり書いて行く所存です。
お時間があるときにお付き合い頂ければ幸いです。
「あ、瑠衣ちゃんおはよー」
女子に埋もれる隣の席の人間から挨拶をされた。
…話しかけてくるな。めんどくさいから。
「………」
無視してやる。
「…瑠衣ちゃん?おはよう。だよ?」
とびきりの甘い笑顔でそう言われる。
首をかしげるな。
私に話しかけるな。
お前の周りにいる女子の笑顔がめちゃくそ怖いから。肉食系女子こえぇ。
私が無視をし続けたお陰で挨拶は諦めたらしい。最初から諦めてくれ。
この際だから人間観察でもしようかなと思い、攻略対象である大嫌いな彼を見た。
葉月 逢瀬
チャラ男。
攻略対象の1人。
いつも笑顔でいる。
金髪に麻色の瞳。
私の大嫌いなヤツ。
ヒロインに惚れた理由は忘れた。
見ていてもやっぱり好きにはなれなかった。
なんで、そんなに毎日毎日ニコニコしてられるんだろう。
軽薄そうで、中身が無さそうで、本当に嫌い。
毎日毎日笑顔を作って貼り付けて何が楽しいんだろう。
そういうキャラには大体後ろ暗い過去があったりするんだろうけどどうでもいい。興味ない。
ゲームのヒロインみたく解決したいとも思わない。
ローズモードの為だけに攻略したキャラ。
……だから、ゲームの時も、今も嫌い。
「あ、瑠衣ちゃんだー!一人でどうしたの?」
笑顔を貼り付けて私の顔を覗き込んでくる。
「……」
「ん?なんかあったの?」
作られた笑顔で、心配そうにしないでよ。
その顔、見覚えがあり過ぎてイライラする。
なんでそんなに他人の顔色を伺うの。
……あ。
…そうか。
だから嫌いなんだ。
"前"の私にそっくりで嫌いなんだ。
「…い…」
「何?」
「貴方なんか大嫌い」
私は真っ直ぐ逢瀬の顔を見て言った。
「え?」
逢瀬はびっくりした顔で私を見てきた。
まるで、嫌いなんて言われたことのないような顔で。
「なんで、毎日毎日ニコニコできるの?
笑いたくもないくせに。毎日毎日貼り付けたような笑顔をして。疲れないの?」
「え」
言い出したら止まらなかった。
ずっと、自分に言いたかった事。
これはただの八つ当たり。
「貴方がうわべだけだから、みんな貴方の事を本当の意味で求めないんだよ。そろそろ気づいたら?側から見たら貴方、ただの壊れた道化師みたい」
私は今、冷ややかな目をしていると思う。
何にも知らない奴に八つ当たりしてる私も馬鹿みたい。
「何、言ってるの?毎日笑うことはいいことじゃん。」
逢瀬は壊れたような笑みをしていた。
貼り付けていたものが取れかけているような笑顔。
「毎日笑うことはいいこと?それがアホみたいだって言ってるの。
泣きたい時も、辛い時も、笑顔なんて浮かべちゃって。馬鹿みたい」
「……何?何が言いたいわけ?お前に俺の何がわかるって言うの?」
逢瀬から貼り付けていたものがポロポロ剥がれていく。
「さぁ?何もわかりたくないね。
ただ、皆んなが皆んな貴方が思ってるような人じゃいよ。毎日笑って無いからって、貴方を捨てる人も、表情がないから気持ち悪いっていう人も、きっとここにはいないよ。
現に私は今、殆ど無表情で過ごしてるけど、気持ち悪がられたことなんてないよ」
そう言って見た逢瀬の顔にはもう何にも張り付いていなかった。ぽかんとしたアホヅラ。
「……少なくとも私は今の、貼り付けた笑顔をしていない貴方の方が好きだよ」
「………じゃぁね。もう、話しかけないで」
私は一方的に話を切り上げてその場を去った。
こんだけ言ったんだ。
もう関わってこないだろうと思いながら。
*・*・*・*・*・*・
逢瀬は瑠衣が去っていった廊下をずっと眺めていた。
「……………」
逢瀬は瑠衣に言われたことが衝撃的過ぎて、その場から動けなかった。
少ししてから顔に熱が集まっているのに気づき我に返った。
「……やばい。俺、初めて見破られた。初めて、俺自身を見てくれた………あーー。欲しい。瑠衣がほしい。」
逢瀬は自分の顔を両手で押さえてしゃがみこんだ。
「瑠衣が欲しい。じゃあ何をする?俺」
瑠衣には俺だけのものになって欲しい。
じゃあやる事は決まってる。
「とりあえず俺の周りの整理からかな。あの纏わりついてくる香水臭い女ども邪魔だし。今まで1人になりたくなかったからやってたけどもういいや。瑠衣1人が欲しいから。あ、俺のせいで瑠衣をいじめる奴らが出てきたら締めて回らなきゃ。そうなるとずっっと瑠衣を見ていないといけないよね!じゃあやる事は決まりだ」
「俺と瑠衣の仲を邪魔する奴らは徹底的に潰す」
逢瀬は不敵に笑って言った。
もう、その顔には軽薄そうな逢瀬はいなかった。
*・*・*・*・*・*・*
その日の深夜、瑠衣は飛び起きた。
「あれ、私やらかしたくね?」
理由は逢瀬の恋愛 理由を思い出したから。
理由は
『誰も気づいてくれなかった、本当の自分に気づいてくれて、救ってくれたから』
「………」
「うん。セーフ。セーフだよきっと」
「だって別に本当のあいつに気づいていないし、救ってもいない。今日のはただの八つ当たりだし。うん」
私は現実逃避をしてもう一度眠りについた。
はい。逢瀬くん、重度のストーカー化決定。
……私の描く男ども重たいのしかいなくない?