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神滅の竜王  作者: 野ノ珠
千年後
4/4

3話 滅竜騎士団

短いです。

それと、始めたばかりで申し訳ないのですが、バイトが忙しくなってきたので、投稿間隔が少し長くなるかもです……すいません。

荒く舗装された道を、二台の馬車が駆けていく。

その周りを何人もの騎兵が取り囲み、その一人一人が鋭い眼光を前方に向けていた。


その鎧には、竜の生首を模した紋章が刻まれている。その色彩は、彼等の竜に対する憎悪を移したように黒と朱に染まっている。



「団長、まもなく到着です」


「ああ。外のやつらに耐寒魔法の準備をさせておけ」


「はっ」



騎兵からの報告を聞き、レイナに伝える騎士。

騎士が馬車の端に座るのを見て、レイナは腕を組み、目を閉じる。

しかし、自分の前に跪く者の気配を感じ、苛立たしげにそれを睨み付けた。



「レイナ様」


「なんだ」


「お言葉ですが……竜は逃げてしまっていると報告が出ていてなお、進軍された理由をお聞かせ願いたいと」


「……足跡から大体のサイズを把握でき、もし鱗が見つかれば種が分かり対策が立てられるだろう。お前もここの所属ならば、そのくらい察しろ」


「はっ、申し訳ありません」



少し視線をずらし、隅に居る別の騎士にまるで獣のような目を向け、レイナは言う。



「この騎士団の名を言ってみろ」


「はっ、滅竜騎士団でございます」


「そうだ。私達のすべては、憎き竜を殺し、この世から滅することのみ。そのための最善を常に考えるがいい」


「はっ!」


「分かったら黙って自分の仕事をこなせ」



隊員は頭を深く下げ、外の騎兵への指示を再開した。

レイナは再び目を閉じ、外界から自分を隔絶する。集中を高めるため、体を休めるため……なにより、自分の中のマグマのごとき憎しみを押さえるために。


それから、馬車が霊峰の麓に停まるまでの数十分、レイナは目を閉じたまま微動だにしなかった。



「各隊、1人ずつ私についてこい。支援兵の耐寒魔法を受けてからな」



数分後、レイナの元には五人の騎士が集まった。

耐寒魔法はかけられる者の魔力量に比例して効果が高まる。並の者では霊峰に入ることも叶わない為、少数精鋭で挑もうというのが、騎士団の考えであった。


とはいえ、いくら騎士団の精鋭といえど、たかが人間が絶対零度を歩くことはできない。行けるのはせいぜい半分ほどであろう。


初めは順調であった隊だったが、雪に足をとられ、更に極寒の寒さにより疲弊していく。しかし、



「各自、前の者から2メートル以上離れるな!」


「おお!」



寒さに凍え、氷の粒に視界を遮られながらも、彼らは歩を緩めない。

皆が皆その瞳の中に憎悪の炎を宿らせ、まるで1つの生命体のように思えるほど、彼らの思想は統一されていた。



「目標はどこだ」


「あと50メートルほど登った先、拓けた場所です! 観測隊がそこで竜の魔力を感じたとのこと!」


「そうか」



レイナは再び口を閉じ、見えぬその場所を睨み付ける。


すると、確かに感じる。曖昧だが、確かな竜の魔力を。

それはカメラのピントが合うように、一歩一歩はっきりしたものになっていき──



「ここか」



山が削られてできたような平地に到着した。

手分けして辺りを捜索するものの、竜の姿は見られない。



「おそらく、付近に竜鱗があるはずだ。徹底的に探せ」


「「「はっ!」」」



極寒の中、視界も塞がれた状況で、広大な土地から鱗を探す。夜の砂漠から一粒の砂を探すような無茶な指示だったが、騎士は迅速克つ徹底的に、雪を掘り返し始めた。

上司の命令に従っている様子ではない。一人一人の揺るがぬ信念の下統率されたその動きにより、異常な速さで捜索が進む。


そして、数十分後。



「おい! あったぞ!」



一人の騎士が、雪混じりの竜鱗を掲げ叫ぶ。

レイナは全員に耐寒魔法をかけ直し、集合するように指示をする。



「団長、こちらです」


「ああ、よくやった」



そう言って手渡されたのは、まるで闇夜を溶かしたような色の竜鱗だった。

強烈な魔力を放ち、圧倒的な存在感を示している。



「火竜種……ではないようです」


「地竜種の魔力でもありません」


「まさか……未確認種?」



黒く、重厚な黒鱗が、鈍い輝きを放つ。

その輝きを瞳に映した途端、レイナの体から怒気にも似た魔力が発された。



「ぐわっ!」


「がっ!」



それは雪を弾き、氷を砕き、騎士達を吹き飛ばした。

佇むレイナの脳裏に過るのは、幼い頃の記憶。1日たりとも忘れたことの無いその記憶の中に、その鱗は存在していた。



「竜王ヴァレス……」



獣の呻きにも似た呟きが、白銀の世界にこだました。

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