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神滅の竜王  作者: 野ノ珠
千年後
1/4

プロローグ

拙い文章力で頑張らせていただきます。

どうぞよろしくお願いします。

当たり前のように魔法が使われるこの世界には、四人の王が存在する。



一人は、この世界で最も数の多い『人間』の王、人王アルザダール。


一人は、魔力に富み、身体能力にも優れる『魔族』の王、魔王ウィアドラ。


一人は、身体が魔力そのものである種族『精霊』の王、精霊王ティタラーナ。


最後に、圧倒的な力と巨体を持つ『竜』の王、竜王ヴァレス。



人間の王は万の兵を指先で動かし、その叡智と機転の良さを持って人間国を統一、魔王は、魔族1の戦闘力で山を吹き飛ばし、崖を埋めて戦場を駆け、精霊王は無限の魔力をもって、何万年と精霊達を守り続けている。


そんな、『王』の名を冠するに相応しい伝説を持つ王の中でも、最も粗暴克つ単純で、畏怖すべきは竜王である。


竜王は、『個』の意識が非常に強く、決して纏まろうとしない竜族を全て力で沈め、自分の支配下に置いた結果、王となった。


そんな、全ての物事は力で解決できると言わんばかりの伝説を残した竜王の根城は、大陸の北端にある竜族の領地のさらに先、『竜の牙』と呼ばれる、起伏の激しい山脈の向こうにある。

竜王は、そこで世界の行く末を眺めているのだ。



「竜王様」



ふいに、彼の元に一匹の若い火竜が降り立った。

その巨駆に陽炎を纏った姿は全ての生物を威圧するが、竜王の前に立てば子供も同然である。

それでも、一匹で大きな町1つを滅する程度は容易なのだ。



『なんだ』



脳内に直接重く響く念話に火竜は少し身動ぐが、直ぐに跪いて頭を下げた。



「人王、魔王、精霊王が対話を求めております。どのように?」


『三王がか? 珍しいな』



戦争等が起きたことは無かったため四人の王は別段仲が悪い訳でもない。むしろ古くからの友と言える関係だったが、それぞれがそれぞれの国を統治するのに忙しく、とても会う時間がとれなかった。

ヴァレスは少し考える仕草をして、火竜へ目を向けた。



『場所は何処だ?』


「大陸中央にある『霊峰』で行うとのこと」


『霊峰か……飛べば数秒だな』



そう言って、漆黒の鱗に包まれた翼を広げるヴァレス。

突如ヴァレスの身体が黒い光に包まれていき、小さくなっていく。


数秒後には、あの山のような巨体はどこにもなく、ヴァレスの居た場所には身長180センチ前後の黒髪の青年が立っていた。

背中に竜王と同じ漆黒の翼が生えていること、そして身体の所々に翼と同色の鱗が生えていることから、その青年が竜王ヴァレスである事がわかる。


翼の調子を確かめるように軽く動かすと、ヴァレスは自分を見下ろす火竜の眼前へ飛んだ。



「せっかくの三王のお呼びだ、暇を潰してくる」


「留守はお任せを」


「ああ。くれぐれも頼むぞ」


「はっ」



火竜が頷くのを一瞥すると、竜王は凄まじい突風を残してその場から消えた。






















大陸の中心。

4つの国の国境が交差するその場所に、霊峰は存在する。


由来はその美しい外観からであり、神々しさすら感じる白銀の山肌は見る者を虜にする。

だが、その神々しさは悪魔のごとき低温によるもので、中腹より上の気温は全ての生物を拒絶する絶対零度となり、あらゆるものの時間が止まっている。


そんな霊峰の頂上に、微かに見える3人の人影。

まるで、その3人を守るように吹雪が避けていく様から、その者達が普通の者ではないことがわかる。



「……来たか」



一人が呟くと同時に、新たに飛来する人影。

その影は大きく翼を広げて減速すると、その人物達の近くに着地した。



「120年ぶりか、ヴァレス。お主の事だから、来ないことも想定して竜族領地に向かうことも考えていたのだがな」


「アルザダールか。相変わらず堅物だな。なに、暇をもて余していてな。王は退屈で仕方ない」


「……一度でも、そのような台詞を言ってみたいものだ」



茶髪の髪を短く整えた壮年の男──人王アルザダールが、呆れたように首を振った。

その後ろから白髪の少女がひょっこり顔を出し、にっこりと笑う。



「ヴァレスだぁ! 久々ー!」


「ウィアドラか。お互い変わらんな」


「まぁねー! あ、そんなことよりさ、久しぶりにろうよ!」



そう言って、小柄な体躯に合わない巨大な剣の柄を握り、補助魔法を自身にかける魔王ウィアドラ。しかし、それは傍に居た女性が添えた手によってかき消された。



「こんなところであなた達が戦ったら大変な事になるので、止してください……」



苦笑を浮かべながらそう言ったのは、精霊王ティタラーナ。

高い身長に美貌を備え、見る者の目線を釘付けにする容姿をしている。

全ての魔力を従える彼女が望めば、触れた魔法は無効化されるのだ。



「たまにしか会えないんだからいーじゃん! ティナ姉のケチ」


「戦うことに関しては、百歩譲って多目に見ます。ですが、周りの被害も考えてくださいね」


「むー」



ティタラーナの言うことは最もであり、大陸で最も有名な観光スポットである霊峰を壊してしまっては、四国すべてに影響が出る。

ウィアドラもその事は分かっているのだが、納得ができないようだ。



「まぁ、今度相手してやるから今は我慢しろ」


「ほんと!? 約束だよ!?」


「ああ、約束は破らん」


「やったぁ! ……痛っ」



ぴょんぴょんと跳ねながら喜ぶウィアドラの頭を軽く小突いて落ち着かせると、ティタラーナは少し苦笑しながら「ありがとうございます」と礼を言った。



「ティタラーナも変わらないな」


「ええ。お久しぶりです、ヴァレスさん」


「さん付けはいらないと、1000年前から言っているだろう?」


「すいません、癖なので……」



そう言って、申し訳なさそうに軽く頭を下げる。

四王の中で最も古くから生きている精霊王にさん付けされるのはとてもむず痒いものがあるが、仕方ないかとヴァレスは肩を落とした。



「さて……そろそろ本題に入るとしよう」



手を一つ打ち、重々しい雰囲気で話し出すアルザダールに、自然と視線が集まる。



「わざわざ四王を集めるんだ。ただの世間話って訳ではないだろう?」


「ああ。だがまぁ、お前にとっては世間話程度かも知れんな」



つまりそれなりに重要だということだが、それにしてはウィアドラもティタラーナも深刻そうではない。



「で、率直に言えばなんなんだ?」


「うむ、ヴァレス。お前の討伐計画が、魔族と人間の間で進められている」


「ああ」


「……それだけだ」


「そうか」



本当に世間話のような、いや、それ以下の空気である。

予想していたアルザダールは、やはり、といった様子で苦笑を浮かべた。



「どうにもねー、魔族の上級階級の一部が手柄立てたがってるみたい。他の種族に手を出すのは禁止してるんだけど、どうやら竜王に町を襲わせてから救世主として登場! 討伐! それなら良いだろ的な考えらしいね」


「それは……なんとも都合がいい筋書き(シナリオ)だが、どうやって俺に町を襲わせようとしてるんだ?」


「わかんないけど、他の竜にちょっかい出して呼び寄せるとかじゃない?」


「……なんというか、悪と正義を両方演じているようだな」



ウィアドラの補足説明に、思わず笑ってしまうヴァレス。



「人間も同じようなものだ。国の上層部は腐りきり、民よりもなによりも己の利益を優先する者しかおらん。竜王討伐による報酬と名誉に目が眩んで、自分がどのような存在に攻め入ろうとしているのかわかっていないようだ」


「やけに俺を買ってくれてるみたいだが、なにか欲しいものでもあるのか? 俺には『カノン』しかやれんが」


「それは遠慮させてもらうよ。それに、私は真実を言ったまでだしな。このまま本当に進軍させてしまえば、竜族の領地に入った瞬間お主の『カノン』で吹き飛ばされるだけだ。これでは人魔どちらにも多大な被害が出てしまう。それはお主も望んではいまい?」


「まぁ、その通りだ。別にお前ら人間を絶滅させたいわけでもないし、そもそも報復に来られたら面倒だしな」


「確かに、その通りだな」



2種族の敵意が自分に向いているという事態にも関わらず、平常運転のヴァレス。


ヴァレスが面倒事が嫌いであることは、古くからの友である彼らはよく分かっている。しかし、それを抜きにしても、彼の強大すぎる力が一時の自由の為に振るわれないかということだけは、確認しておきたかったのだ。



「しかし、こんなことの為に四王を集めたのか? このような簡単な問題、『王』の権限を持ったお前なら全て自力で解決できる筈だ。ウィアドラも、わざわざ相談するくらいなら『魔王』の地位を使って殴り込むのが常だっただろう?」


「簡単なこと。私とウィアドラは、王ではなくなったのだ」


「……は?」


「私もウィアドラも、民の抗議を受け退任した。この平和な世に、四王の力は恐怖でしかないということだ」


「ヴァレスはわからないと思うけど、人里はかなり争いが少なくなってきてるんだよ。昔と違って、武装してるのは騎士と冒険者くらいだしねー」


「そうなのか」



100年ほど前、人間、魔族、竜族の三種族による戦争が起きた。

20年以上も続いたその戦争を鎮めたのが、代替わりした人王アルザダールと魔王ウィアドラ、唯一の中立国として止めに入った精霊王ティタラーナ。

そして、そこらの竜を吹き飛ばして回っていた竜王ヴァレスなのである。


それぞれが、その叡智を、あるいはその力を持って自分の国を1つに纏めることで領地全てを自分の影響下に起き、他の種族に手を出すことを禁じたのだ。

それによって戦争は治まり、世界は平和になった。

だが、80年の歳月が過ぎ、人々から戦争という言葉が頭から抜け落ちた今、過剰な戦力──つまり四王は危険視されているのだ。



「まぁ、そういう訳であまり自由に動き回ることはできなくなったが、策がないわけではない。奴等はヴァレスが目的なのだから、単純にお主が居なくなれば良いのだ」


「……それは、俺が竜の牙に帰らなければ良いってことか?」


「いや、人化の術で化けて人里に潜り込もうと、お主の人化の術では直ぐにバレる。それに、人間国には魔力探知の魔法があってな、既にお主の魔力を捉えてしまっているのだ。どこへ行ったところで逃れられん」


「なら、どうする」


「そこからは、私が説明します」



少し離れた所で話を聞いていたティタラーナが、見慣れない魔法陣を右手に展開しながら口を開く。



「ティナ姉、それなに?」


「これは『時跨ぎ』という、『失われた魔法(ロスト・マジック)』の1つです」


「時跨ぎ……聞いたことが無いな」


「はい。『時跨ぎ』は一万年前に私が開発したものですが、使い手が現れずそのまま廃れてしまった魔法なので、知らなくとも無理はありません」



ティタラーナが魔法陣に魔力を注ぎ込むと、魔法陣が色の無い光を放ち始める。

その光が一際強くなったと思えば、その魔法陣があった筈の空中に、青白く光る穴が空いていた。



「『時跨ぎ』は、時空に穴を開け指定した時代に飛ぶことができる魔法で、この穴は1000年後に繋がっています。この時代のヴァレスさんが居なくなれば、竜王討伐計画は無くなる筈です」


「ははっ、それは正攻法ではないな。実に四王らしい力技だ」



力技。その言葉は間違っていない。

この神のごとき所業が成せる要因はティタラーナの無限の魔力によるもので、宮廷魔術師を1000人集めても、必要な魔力の1割も満たすことはできないのだ。



「うむ……だが、これならば何事も無く事を治める事ができる。ヴァレスが居なくなったとなれば、奴等も解散するしかない。どちらにも被害のない方法だろう」


「ええ。ですが、1つ問題点があります」


「問題点?」


「はい。この時空の穴は一方通行です。一度1000年後に飛んでしまえば、もう元の時代に戻れません。そのことを踏まえて、選択してください」


「そんなことか。問題ない。…………と、言いたいところだが」



そう言って、根城である竜の牙に視線を向けるヴァレス。



「まだ、俺が居なくなる訳にはいかなくてな。その場しのぎでも良いから、他に策はないか?」


「ふむ……事情は知らんが、お主が言うのなら仕方ない。少し待……」


「! 皆さん気をつけて下さい! 術が何らかの干渉を受けて……きゃぁあ!」



アルダザールが言い切る直前、緩やかに渦を巻いていた時の流れがバチバチと音を立て、まるで激流のように速く、激しくなった。



「!」


「うわわっ!」



まるで見えない何かに引っ張られるような感覚が一同を襲い、一番近くのヴァレス、ウィアドラが穴に吸い込まれる。


その様子を見て、なんとか踏ん張っているアルダザールに向け反魔法をかけようとするティタラーナだったが、数瞬遅かった。



「ぬおぉっ!」


「アルダザールさん!」



抵抗むなしく、飲み込まれてしまったアルダザールに手を伸ばそうとした瞬間、魔法陣の魔力が切れて穴が塞がった。もう、外の景色は見えない。



「なかなかの勢いだ……!」



まるで鉄砲水のような時の奔流に逆らおうと、ヴァレスは翼を広げ勢いを弱めようとするが、少し減速するだけに留まる。



「ウィアドラ!」


「! ヴァレス!」



なんとか、近くに来たウィアドラの手を掴む。

このままアルダザールも──


しかし、アルダザールに手を伸ばしかけた瞬間、青白い空間は一瞬にして一面の雪景色に変わり、アルダザールの姿はどこにも見当たらなかった。

何度も何度も微調整を行った結果よくわからなくなってしまったので、しばらくして変なところが見受けられたら修正が入るかもです。

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