死を夢見る病
眠れぬ夜 胸が重くて
苦しくて苦しくて 夢見るのだ
それは眠って見る夢ではない
起きていて 心に浮かぶ夢
家人が寝静まった頃合い
一人厨房へ入り 出刃を出す
喉に押し当て 前のめりになれば
とおい大陸の武人と同じ 自刎となる
誰も起きていない頃合い
家を駆けだして 離れた林に姿を隠す
太い枝に縄を渡して 頚にかける
そうすると 人面の果実となる
死なれたときの 家人の嘆きは
いかばかりかと その夢の続きはなくなる
重くても苦しくても いとしい人たちに
同じ重さと苦しさを与えてはならぬ
すべてが雪のように融けてしまえばいいのに