問題 ○○さんは次の漢字の読みを答えなさい
山車とか、十姉妹とか、読みは知ってたけど、正直あまり分からないので不自然な点があるかもしれません。
問題】○○さんは次の漢字の読みを答えなさい。
というトレンドがあったのでそこから即興短編ごー。
① 蚊帳 かや
② 山車 だし
③ 十姉妹 じゅうしまつ
十姉妹の電子音のような声で目が覚めた。
どうやら山車に付ける装飾を作っている途中で眠ってしまっていたらしい。山車、まぁ、簡単に説明するなら担がない御輿だ。人が担がない代わりに車輪などが付いており、縄を使って大勢で引っ張るのだ。
僕は今、その山車に取り付ける装飾の一部を任されて、こうして家でチマチマと作っていたのだが、はっきり言って終わる気がしない。
というか、そもそもなんで部長は文化祭の出し物に山車を作ると言い出したのか、文芸部らしく、短編集とか書いて出した方がいい気がする。山車ってなに、山車って。
唸る僕を十姉妹が笑うようにプッ、プッ、と鳴いた。
「お前……雀の癖に生意気なっ」
きっ、と部屋の隅に置かれたゲージに顔を向けて、中で首を傾げる十姉妹を睨む。
暫く睨んでいると、自分が馬鹿馬鹿しくなってくる。精神的に参ってきてるのだ。ここ最近は学校でも家でも、装飾……まぁ、ただの裁縫を、大きな布にチマチマと針と糸を通しているんだから。
蚊帳を抜けてくる扇風機の冷えた風が僕の頬を撫でる。
外は白んでいて、ふと時計に目を向けると午前6時を少し過ぎた頃だった。
文化祭までは後少し、山車の本体も僕ともう一人が作る装飾も、完成する気はしない。部長は未完成でも出すと言っていたけれど、正直、山車の形を取れるのかすら怪しいくらいに制作は難航している。
はぁ、と吐いた溜め息が蚊帳の外から吹く風に拐われる。
ゲージで暢気に囀ずる十姉妹に餌を与えて、僕は制服に着替えた。今日はやっぱり、部長に抗議しよう。そろそろ部長も山車制作が無理難題な事に気付いている頃だろうし、ハードスケジュールから早く解放されたい。
だから今日はこの装飾は置いて行く。もう使う事はないだろうしね。
鞄に教科書やノートを詰め、リビングへ向かう。親がまだ寝ているから、音を立てないように慎重に移動する。食パンだけの質素な食事を終えて携帯を開くと一通のメールが届いていた。
『お前は今までの頑張りを無駄にしてもいいのか?』
部長からだった。着信時刻は昨日、多分僕が寝落ちする前。
「予知かよ……怖えぇ。てか無駄もなにも……」
はぁ、と本日二度目の溜め息が僕の口から吐き出された。
無駄にしても……無駄にすれば、もう今日から楽できるんだし。
そう頭は既に諦めているのに、僕の足は自然と自室へ動いて、山車の装飾を腕が勝手に鞄に詰め込み始めていた。
きっと今の僕は酷く不細工に顔を歪めている。
そんな僕を十姉妹は小さなゲージから電子音を響かせ笑っていて、僕はまた、ゲージの中にいる、部長と同じ名前をしたそいつを睨んだ。
「くそっ、雀の癖に生意気な」