七話
夕飯を食べながらある程度のことは決まった。 開催日は二週間後の土曜日の正午から、場所は会社の近くにある公園、雨天の場合は延期。 そして厳正なるジャンケンの結果により勝った藤井は料理や酒を用意し、負けた俺は場所取りをすることになった。
「いやー、悪いですね先輩」
手をチョキチョキ動かして、嫌味たらっしくてしょうがない。
「セイさんは、ジャンケンよわいからな。 いつもまけっぱなしだ」
将はだまってなさい。 それと口にご飯粒ついてる。
テッシュでご飯粒を取ってやる。 まだこういうところは年相応だな。
「それにしても、あの幼稚園の先生可愛くなかったですか?」
チンジャオロースに箸を伸ばしながら、話が花見から今日トイレに逃げ込んだ結城さんの話に飛んだ。
「一目惚れでもしたか?」
からかうつもりで言ったが藤井からの返事はあいまいなもので、ひょっとしたらひょっとするかもしれない。 「マジ?」と聞くと、にへぇっと笑って頷いた。
「センセイにやさしくすれば、コロっと、いくんじゃないか?」
恋などしたこともない将が恋愛事に首を突っ込んでくるが、その通りだと思う。
あの暴走から察するに男に対して免疫がほとんどないみたいだし、ちょっと優しくして話が盛り上がればいけるんじゃないか。
ただ問題をあげるとしたら、接点がないことだな。
今回は花見の打ち合わせを俺の家でやるため、たまたま偶然出会ったが今後会う機会があるかと聞かれたら、絶対にない。 針千本飲んでもいい、絶対にない。
藤井は会社員に対して結城さんは幼稚園の先生だ。 勤務時間も異なるうえに、帰り道もこっちでないから偶然会うなんてことは皆無。
かといって結城さんの帰りを待って幼稚園の前で待っていたら、確実に警察のお世話になる。
そうなってしまえば……。
「絶対にするなよ……」
将から結城さんの情報を聞いていた藤井が社会的に消滅しないように重々しく言った。 俺の言った言葉の意味が分かってないみたいで、呆けていた藤井にさらに言った。
「好きなら好きでそれはそれでいいが、変な行動にはぜっっったいにでるなよ」
「変んな行動って……ストーカーとかですか? そんなことするわけないじゃないですか」
「本当か? お前結婚とか出会いに飢えてるだろ? こないだも、お見合い失敗したとか言ってたからもしかしたらって思ってるんだが……」
「はっはー、いくら心の傷を負っても犯罪には手を出しませんよ」
「それもそうか、わっはっはー」と笑い飛ばしてこの話は終わったが、どうしてか藤井の言葉を信じることができなかた。