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六十四話

「先輩の悪い癖は良い癖でもあるんですよ。 ただ、今回は悪い方に出ちゃっただけなんです」


 ビールに口を付けながら藤井が言い出した。


「先輩の悪い癖は、ずばり! 考えすぎることです!」


 ビールを片手に俺を指差す。 それをチョップで叩き落として「うるせぇ、そんなことねぇ」と一蹴する。

 考えすぎることの何が悪い。 つまりは慎重ってことだろ? 俺達みたいな社会人にとって、慎重になることはむしろ大切なことだ。

 どこの会社と契約するのか、この商品を世に出していいのかとか慎重にならないといけない場面が多く出会す。

 契約するにあたっては、自分の会社と相手の会社の両方に利益がなければならないこともあって、最も慎重にならざるを得ない。

 商品を出すにしても、世の中のニーズや需要を考えないといけない。 社会人には常に慎重にならなければならない。 社会に出て、多くの失敗を繰り返しながらそのことを学んだ。


「あぁ……、でも確かにそんな感じはしますね」


 なるほど、と手を叩いて納得する結城さん。 

 固まる俺。


「そうですよね! 俺の言ってることは間違ってないんですよ! 将もそう思うよな!」

「ボクはよくわからない」


 味方を得て元気になる藤井に、興味無さそうにオレンジジュースを飲む将。

 俺の味方は一人もいないのか……。 いや、俺の考えが間違っているだけなのかもしれない。 だとしたら、俺の学んできたことはなんだったのだろうか。


「まぁ、考えすぎってのは単なる過程だと私は思うんですけど」


 藤井の意見を付け足すように結城さんは言った。


「中村さんは頭ガチガチなんですよ。 ガンコって言った方がいいほどに。 きっとですけど、信じたことをそう簡単に変えられないんだと思います」

「その通りです、その通りですよ!」


 藤井の合いの手が入ってくる。


「さっきもそうでしたけど、藤井さんが中村さんの悪い癖を言ったとき『そんなことねぇ』って言いましたよね? それって中村さん自身悪い癖と思っていないことで、変える必要がないと思ってたことでしょ?」

「……まぁ、確かに変える必要はないみたいなことは考えましたけど、別に悪い癖ではないでしょ!」

「藤井さんも言ってたように『悪い方向』にいってしまっただけです。 あと度が過ぎてたりするんじゃないですか? そこまでは知りませんが」


 自分の主張はすべて言った結城さんは、一足先に帰った。 保育士は、俺たちが思っている以上に人手が足りなくて毎日忙しいみたいだ。

 結城さんが帰ったあと、「もしかしたら無理につき合ってくれたのでは?」という話題を藤井として俺たちも帰ることにした。

 将も眠そうにしているし、俺たちも明日仕事がある。 あまり遅くまでいると明日が厳しくなる。

 それにしても、『ガンコ』か……。 自分の悪い癖は判ったのだが、どうやって治せばいいのか判らない。 そもそも治るものなのか? 『ガンコ』って個性ところが強い気がして、治る気が一向にしないのだが……。

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