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六十三話

 部長に打ち合わせのことを報告した後、藤井に前田さんと話したことを相談した。

 格好つけることはない。 自分自身が気づかない悪い癖。

 前田さんは今の状況だからあの言葉を俺に伝えた。 それは俺が将に知らないうちに、悪いことをしているように聞こえてならない。

 医者にいわれたとおり、不安を与えないために笑顔を作り続けた。 可能な限りそばにいた。

 何も悪いことはしてない。 将のことを第一に考えている。 それなのに。

 段々、苛立ってきた。

 こんなにも将のために一生懸命になっているのに、何をデタラメなことを言いやがって!

 俺の悪い癖だ!? クソッタレめ!!


「先輩の悪い癖ですか……。 アレのことですかね? いやあ、前田さんもよく見てますねぇ」

「なっ……! あるのか、俺の悪い癖……」


 そんなことはないと思うんですけどねぇ、と答えてくれると思っていたのに予想外だ。


「俺の悪い癖ってなんだ!」


 藤井に食ってかかるように言うが、藤井はなだめるように俺の身体を押して椅子に座らせた。


「教えるのはいいんですけど、治すには『アレ』の力がいりますね」

「『アレ』の力……?」


 藤井は俺の問に答えるより早く、誰かに連絡を取り始めた。




 会社終わりに居酒屋に連れてこられた。 店内にはカウンター席しかないが、まずまずの人がビールを片手に肴を口にしていた。


「アレって酒のことか? 帰り、車だから飲めんぞ」

「タクシーで帰ればいいじゃないですか! っと、いたいた!」


 藤井は適当に答えて、牛串を食べている女性に声をかけた。 女性は口元を手で隠して俺たちの方をみた。


「結城さん!? それに将も!?」

「あっ、どうも。 藤井さんに呼ばれました」

「おい……」


 問い詰めても、「まあまあ」とあやふやに応えながら結城さんの隣にしれっと座った。

 小さくため息をついて、将の隣に座った。


「幼稚園どうだった?」

「……だいじょうぶだった」

「えっ!?」


 突然、結城さんが声を上げた。


「しょ——」

「だいじょうぶ! だいじょうぶだから!!」


 結城さんがなにか言う前に将は言葉を被せ、結城さんを睨んで威嚇する。 結城さんは言葉を失ったように口をぱくぱくさせて、固まっていた。


「まぁまぁ、本人が大丈夫って言ってるんだから大丈夫でしょ! 今は先輩のことですよ!」


 まったく空気を読まない藤井の一言で将のことは、いったん置いておくことになった。

 それから、俺と藤井の二人分のビールを注文して俺の悪い癖を話した。

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