五十三話
意見がまとまらないうちに今日の練習は終わった。 セットを片づけてもらっている間に、ショウたちは一足先に教室に戻って着替えを済ませた。 それからみんなと一緒にセットを教室まで運んで、幼稚園は終わった。
迎えが来た子から帰っていくなか、残ってる子だけで再度最後のシーンについて話し合いをすることになった。 マシンガンのように意見が飛び交って、なかなか決まらない。
あーでもない、こーでもない、これが良い、それはダメ。
話がまとまらない。 誰かが進行役を務めなければ、どうしようもない。 できれば、みおちゃんかダイスケくんにやってほしいのだが、二人は周りの熱に圧倒されて呆けてしまっている。
センセイは見送りで外に出てるし……、仕方がないここはショウがやるしかないだろう。
立ち上がって、一際大きな声を出した。
「ちょっといいか? このままじゃ、どうしようもないからいけんをまとめたい」
みんなの同意を確認するため、ぐるりと視線をまわした。 誰も口を出さずにショウに注目する。 これを同意の合図として、まとめに入った。
「ええっと、きくかぎり『かっこいい』と『ロマンチック』ということばがよくきこえるけど、なにがどうちがうんだ?」
みんなに問いかけてみるけど、誰も答えはしなかった。
「だってそうだろ? ピンチなおんなのこをたすけるのがロマンチックで、かっこいいんだろ。 ちがうか?」
またしても声は上がらなかった。
「だったら、すぐおわるんじゃないか?」
聞いてるみんなが「おぉ……」と声を漏らした。
それからというもの、すぐに最後のシーンが完成した。 ダイスケくんもみおちゃんも、他のみんなも納得した終わり方になった。




