四十一話
毎年、地元の公民館で行われる夏祭りで、ショウたち年少組は和太鼓を叩くことになっている。
今日からその練習を始めることになり、ショウたちは体育館に集められた。
ざわざわしている園児のたちの前に、半被を着た体育のセンセイが太鼓のバチを持って出てきた。
いつも疲れている顔をしているが、やるときはやるセンセイではじめの体育の時間は驚かされた。
「えぇっと、担任の先生から聞いてると思いますが、皆さんにはこの太鼓を叩いてもらいます。 まずは先生が手本を見せるので、よく見ておいてください」
太鼓の前に立ち半身になると、両手をぐっと後ろに引いて構えた。 「よぉ!」と気合いに満ちたかけ声をあげ、おもいっきり叩いた。
おなかの底に響く大きな音でビックリするけど、どこか心が躍るような愉快な気持ちにさせてくれる音だった。
最後に息を吐いて見本が終わった。 ショウたちは体育のセンセイに拍手を送ると、困っているような笑みを浮かべた。
「えぇっと、ありがとうございます。 それじゃあ、叩き方からリズムまでを教えていきます。 各担当の先生方お願いします」
え? センセイがおしえるのじゃないの? と全員が思ったに違いない。 ショウも思った。
ふぅっと息を吐いて隅っこで座って休憩している体育のセンセイ。 普通はもっと熱意があって、情熱がある人がなるものじゃないのだろうか。
他のセンセイはそんなこと気にしないで、四隅に広がってそれぞれの組を呼んでいる。 ショウもみおちゃんに「いこ?」と言われて、体育のセンセイから視線を外してユウキセンセイのところに行った。
動作をしながらの説明が終わると、あいうえお順に太鼓を叩くことになった。 ショウの前の子たちはさっきの音にビックリしてか、控えめに音を鳴らしながらリズムよく打っていた。
——ショウはあんなふうにはならない!
無駄に気合が入った状態で、とうとうショウの番がまわって来た。
バチを前の人から受け取って、さっきセンセイがやったように半身になり構えた。 心のなかで『よぉ!』と掛け声をかけて力いっぱいバチを振るった。
今までやってきたどの人より大きな音が鳴った。でも手に重い衝動が走り、一瞬動きが止まってしまった。 それでもなんと最後まで叩き終わると、センセイに「少しリズムがずれてるところがあったね」と注意されてしまった。




