四話
「それじゃあ将くん、おかばん片づけよっか!」
センセイはショウの手を引いて教室に入った。 セイさんとは違った温かみのある手がショウの手を包みこんでくれて、どこか懐かしい気持ちになる。
「将くんのロッカーはここだよ。 ここにおかばんと、おぼうし入れよっか!」
センセイは教室の端から端まである長いカラーボックスのひとつを指差した。 そこにかばんとぼうしを入れてから、九時を知らせるチャイムが鳴リ始めた。
センセイは教室の外で遊んでいる園児に各教室に戻るよう言い、全員が教室内に入るとセンセイを囲むように集まって座る。
「これで全員ですね。 みんな、おはようございます!」
「おはよーございます!」
園児は声を合わせてセンセイに挨拶を返したが、ショウだけは少し遅れて「よーございます」になってしまった。
——むぅ、みんなであわせてアイサツするのか。
「はい、おはようございます。 今日からみんなの先生をします、結城 香奈子です。 今日はみんなに会えてうれしいです。 これからよろしくお願いします!」
「よろしくおねがいします!」
——よし! こんどは、あわせられた!
「それじゃあ、まずはみんなで自己紹介しよっか! お名前と自分の好きな物、好きなこととか言って最後によろしくお願いしますで終わりね。 みんなできる?」
元気に手を上げて返事をする園児にまたついていけなかった。
——みんなといっしょのうごきをするのは、トーゼンなのか!?
一人困惑するショウを置いてきぼりにして、センセイは一番前に座ってる園児から順に名前を呼んでいく。
みんなそれぞれ好きなアニメや遊び、将来なりたいことなど言って好きなように自己紹介をしていき、とうとうショウの順番が回ってきた。
前の園児たちがしていたようにセンセイに名前を呼ばれたら、元気に「はい!」と返事をして前に出た。
みんなが一斉にショウに注目してきたおかげで頭の中が真っ白になってしまった。
——あ、あれ? なにをいうんだっけ……? えっと……とりあえず、なまえ?
「えっと……なかむら しょう、サンさい。 よろしくおねがいします」
ぺこりと頭をさげたが、パラパラと戸惑うような拍手が送られた。
——ち、ちがう……?
「将くんは何が好きなの?」
戸惑ってるショウにセンセイが助け船をだしてくれた。
——スキなもの……あぁ、そっか! わすれてた、わすれてた。
「スキなものは……えーっと、すきなたべものはホシイモで、すきなテレビはしょうてんです」
これでもまだパラパラの拍手だったが、さっきのに比べると微かに拍手の数は増えていた。
センセイもち苦笑いを浮かべる。
「それじゃあ、次は……」
ショウが元の位置に戻ったところでセンセイが次の園児の名前を呼ぶ。
——ようちえんとはムズカシイなセイさん……。 ショウにトモダチできるかな……?




