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三十六話

 GW中泊まってもいいか聞いてみると「むしろ来い、今日来い」と言われた。

 その皆を将に話すと小躍りするほど喜んだ。

 さっそく着替えなんかをリュックに積め、車の後部座席に入れてた。

 後はカーナビに目的地を設定してっと。


「オーケー! 忘れ物はないか?」

「ない! ところでセイさん、おばあちゃんチってどこ?」


 おいおい、そんなのこと知らないでよく『おばあちゃんチでいいから』なんて言えたなぁ。


「どこって、去年も行っただろ?」

「1ねんもまえのことなんて、おぼえてない」

「ほら、京都で食事処やってる……」

「あぁー、あのカッポーギをきたヒトか!」


 ポンっと手を打って、記憶に打ち付けるように何度もコクコクと頷いた。


「ひょっとしたら、店を手伝うことになるかもしれんけどいいよな?」

「モーマンタイ」




 車を走らせること二時間とちょっと、混み合う道を進んでは止まっての繰り返しで、ようやくお母さんが経営する食事処に到着した。 昼時に着く予定だから、ここで昼飯にしようと車の中で将と話しをしていた。

 三階建ての一階部分を食堂にした小さいものだけど、それなりに車は入っていた。 店自体は俺が子供のころからやっていて常連さんが口コミをしてくれたり、週一で来てくれたりといろいろ支えてくれて今までやってきている。

 関係者専用駐車場に車を止めて、眠りこけている将を起こした。

 かばんは後で持っていくとして、とりあえず飯にしよう。 ぶっ続けで運転して疲れたし、腹も減った。

 寝起きでフラフラしている将の手を引いて店の中に入ると、三人のスタッフがうるさいほど賑わっている店内で忙しそうにしている。


「ごめんよぉ、今満席で……って、(せい)かい」


 厨房から首を伸ばして申し訳なさそうな顔を覗かせてると思ったら、俺だと分かると作業を中断して出てきた。


「ただいま、お母さん。 ほら、おばあちゃんに挨拶」


 店の騒々しさに呆気にとられていた将の背中を軽く叩いてやって、意識をこっちに戻してやる。


「こ、こんにちは」

「将くん、よぅ来たね」


 将の目線に合わせるためて、将の頭を愛おしく二、三回撫でた。

 本当はもっと撫ででやりたいかもしれないけど、店のこともあるからそうもいかない。


「ここでごはん食べたいんだけど、いっぱいだね」

「相席でもいいなら、すぐ用意できるけど……どうする?」


 「だって」と将の意見を聞いたら、ぐぅーとおなかの音で返事をした。

 

「じゃあ、今でいい?」

「はいはい! 中沢さん、この二人を座敷の一番テーブルに!」


 「はーい!」と中沢さんと呼ばれた女子大生がオーダーを書き終えて、一番テーブルの客に相席の確認を取りに行った。

 すぐに話はついて「相席のお客様、こちらへどうぞ!!」と大きく手を振ってきた。

 まだ呆けている将をつれて相席することになった相手に挨拶をしようと思ったら、白髪交じりの髪にハデな赤いメガネをしたお爺さんがいた。

 俺の顔を見るなり顔を皺くちゃにして微笑み、軽く手をあげて挨拶してきた。

 

「元気にしてたか? 静」

「太田さん!!」

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