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三十五話

 六月になって雨の降る日が多くなった。 ついに今年も梅雨がやってきたのだ。

 洗濯物は乾かないし、会社行くのもメンドクサくなるし、なにより休日のときどこかへ行く気がなくなる。 ぐてーんとソファに寝そべってテキトーに漫画を読んで休日を過ごしている俺とは正反対に、将は真面目に机に向かって絵を描いていた。

 結城さんから『GWにあったことを絵に描いて発表しましょう』と宿題を言い渡されたようだ。

 GWかぁ……、俺は家でゴロゴロしていたかったけどなぁ……。




 GW初日


「セイさん、ひまだ。 はたらきアリをみているジョウオウアリよりもひまだ」


 中古屋で大人買いした漫画を読んでいるとそんなことを言われた。 例えがよく分からん。


「そうか……、俺は虫になったことないから、その気持ちはわからんな。 それでもいいか?」

「のぞむところだ。 むしろセイさんが、ムシになったことあるっていったらひく。 きもちわるい」

「むしだけに?」

「ムシはきもちわるくない」


 それも子供のうちだ。 大人になるにつれて触れなくなるほど嫌いになるぞ。 カマキリなんてもう触れん。 


「それより、どこかにいきたい!」


 そうは言っても、もうGW入ってるからどの宿も満員だろうし、どこに行くにしても人がごった返してて俺としては行きたくない。

 それに社会人になってから、まとまった休みというのはそうない。 夏はお盆ぐらいだし、冬も正月くらいしか休みがない。 だからこそ、ダラダラしたい。

 将に背を向けてプッとおならをした。

 行きたくない、という返事。


「おならでへんじするな!」


 背中をおもいっきり殴られた。

 さすがにおならで返事をするのは、人間としてダメだった。 そこは反省して素直に謝ったけど、「どっかいくなら、ゆるす」と条件を出された。

 ほほぅ、そうきたか・・・。 だがな、GWがはじまった時点でもうどこにも行けないのだ。

 テレビじゃあ、『今からでも間に合うGW』とかいって観光地を紹介さてるけど、ほとんどが東京付近で中部の田舎に住んでる俺達には関係ないことなんだよ!

 行きに二時間もかかるのに日帰りだと疲れるわ! どうせ将は帰りで寝るだろうし、無理無理。


「近場の大型ショッピングセンターにでも連れてってやるよ」

「そんなのイヤだ! セーイーさーんー!!」


 服をつかんで乱暴に揺すられて、漫画がまったく読めない。


「おばあちゃんチでもいいからー!」


 お母さん家? ……あぁー、うん、いいかもしれんな。 距離的にはちょっと遠いけど車で行ける距離だし、何より日本を代表する観光地だ。

 おまけに宿代、飯代も節約できるしいいかも……。 それに小学校に入ったら絶対に行くところでもあるし、その予行演習ということでもいいのかもしれない。


「本当におばあちゃん家でいいのか?」


「ぜんぜんいい」と目をキラキラさせて何度も頷く。


「ん、じゃあ、ちょっと連絡してみるか!」 

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