三十四話
ショウにも呆れられてしまった。 むしろ、ここまでやってくれたことにまずは感謝しないといけないかもしれない。 俺とみおのことなのに力になってくれたし、後でありがとう、て言わないとな。
でもその前に——————
「まえは、あんなこといってゴメン!」
みおの目を見てハッキリ聞こえる声で謝った。 みおは俺から目を外さないで「……イヤ」と言った。
「だって、かんたんにやくそく、やぶるもん……」
——やくそく……?
……覚えがない、いや待て! 思い出す、思い出さないといけない。 これがみおが俺を許せないことだから思い出さないと!!
——いつだ……、いつの頃だ!
「ほんとうに、おぼえてないの?」
必死に記憶を探しているときに、冷ややかな声で言われた。 信じられないと言いたげな目で見られて、自分の記憶力のなさを呪った。
「……ゴメン」
「ウソでしょ!? やくそくしたつぎのひに、いったことだよ!?」
その約束が思い出せないから、次の日と言われてもなにもピンと来ない。 怒られることを覚悟して「なんのこと?」と聞いてみると、ため息を吐いて首を横に振った。
怒りを通り越して呆れられてしまった。
「1ねんぐらいまえ、いつものところであそんでたでしょ」
いつものところっていうと俺ん家の裏庭か……。 まぁ、みおと遊ぶってことだからおままごと……。
「あっ! おもいした!! あのとき、みおとずっとおままごとであそぶってやくそくしたんだ!」
「やっとおもいだした……。 そうだよ、なのにつぎのひ、おままごとイヤっていうから……」
そうだ、そうだ、確かにそんな約束したなぁ。 いやでも、『おままごとイヤ』て言ったのに訳があるんだけど、いま言うといいわけにしか聞こえないか……。
俺は頭を下げてまた謝った。 ため息を吐く音が聞こえた。
「もうおこるのにもつかれたから、ゆるすけどさぁ……、もうダイスケくんとはあそばないから」
「えっ?」
「あそばないっていったの」
それだけ言ってどこかへ行こうとするみおを慌てて通せんぼする。 鬱陶しそうな目で見られたけど、どこうとはしなかった。
「もうやくそくは、やぶらない! だから、またいっしょにあそぼ?」
「どうせやぶるから、イ、ヤ、だ!」
俺の脇を抜けて行こうとするのを身体を動かして防いで、ポケットからある物を取り出した。
「これ! これにちかって、もうやくそくはやぶらない」
俺はみおの目の前に四葉のクローバーを見せた。 本当はみおが許してくれたときに渡す予定だったけど、もうしょうがない。 物を渡して許してもらうような図になって、ぐてんぐてんに酔っぱらったお父さんがお母さんに許してもらうみたいでなさけない気持ちになる。
「……ほんとうに、まもれる?」
「まもる」
みおは少し間を置いて「こんかいだけだよ」と言って許してくれた。
「いやぁー、よかったね、ダイスケくん!」
最初にどこかに行ったショウが物陰からすっと出て来て、パチパチと拍手をしている。
「おまえ、いつから……」
「さいしょから!」
——ありがとういうのやめよ。




