三十二話
みおちゃんがあんな顔をするなんて思いもしなかった。 セイさんが『いつの時代も女は怖いぞ』と言っていたのがやっと分かった気がする。
——それよりほんとうにダイスケくん、なにやったの?
遊ぶのを断ったぐらいであそこまで怒らないと思うぞ。
肘でつっつくと「すまん……」と落ち込んだ声が返ってきた。 ダイスケくんもけっこうなダメージを受けているようだった。
「もうすなおに、あやまっちゃえば? それが、いちばんだとおもうぞ?」
「そう……だよな……?」
「なぜ、きく」
素直に謝ることには賛成するも、あまりノリ気ではない様子でちゃんと謝れるか不安になる。 「ショウもできることはするから」と言うと、少しだけだけど笑顔を見せてくれた。
「じゃあ、ちょっとみおちゃんのところいってくる」
「あのあとにいくのか……、ゆうきあるな……」
「ショウのいちばんのともだちだからな」
ちょっと怖いけど、みおちゃんの様子も気になる。 教室の隅で座ってそうだけど。
ポンとダイスケくんの背中を叩いてから、みおちゃんのところに向かった。
教室に行くとセンセイに「またみおちゃんとケンカ?」とちょっと怒ったような声で聞かれた。 センセイにダイスケくんたちのことを言ってもいいのもか迷ったけど、誤魔化すことにした。 たぶんセンセイに言えば力を貸してくれると思うけど、表面上の形だけの仲直りになってしまいそう。 センセイに限らずセイさんでも同じことになると思う。
だって大人がそばにいれば、否応なく仲直りせざるを得ないから。
アニメとかドラマで子供たちが仲直りするシーンには、大抵大人が難しい顔をして見守っている。 子供たちはそんな大人の顔色を見て「仕方ない……」といった感じで仲直りするのは、一人の子供として納得できない。
仲直りするのに時間がかかっても、将は本人同士で解決するのがいいと思ってる。
みおちゃんはどうか分からないけど、ダイスケくんは本気で仲直りしたいと思っている。 みおちゃんに言ったことを謝りたいと思ってる。 だったらダイスケくん気持ちを伝えるのがいい。
「本当に大丈夫?」
「だいじょうぶ。 こどもには、こどものやりかたがある」




