三十一話
ダイスケくんのお迎えが来るまで、どうやったらみおちゃんと仲直りができるか少し話し合った。
これまでダイスケくんは人形を持っていったり、折り紙の鶴を持っていったりと仲直りのきっかけを持ちかけても、プイっとそっぽを向かれて受け取ってすらもらえてないらしい。
物に頼らず素直に「ごめんなさい」すればいいのに、「それだとはずかしい」と言うから頭を抱えてしまう。 人間素直が一番、と三年しか生きてない将が言っても説得力の欠片もないから口には出さない。
でもダイスケくんの話から、物を使うのはダメだという事が分かった。
——それじゃあ、どっかによびだしてあやまるほうこうでかんがえてみるか? ダイスケくんのハジはムシのほうこうになるけど。 ……ん? ちょっとまてよ、いいことおもいついたかも。 ……うん、うん! これはイケるんじゃないか?
翌日の朝、いつものようにみおちゃんがで来るまでぼぉっとドアを見ていた。
昨日話したことがうまくいくかは将にかかってる。 緊張はしないけど。 だって可愛らしいケンカだろ? ちょっと微笑ましいぐらいだ。
「ショウくん、なにわらってるの?」といつの間にか来たみおちゃんが言った。
「ちょっとおもいだしわらい」と咄嗟に嘘をついた。
本当はあの二人のケンカ風景を想像してたら、自然と笑ってしまっていた。
そうとは知らずに「どんなこと?」と素直に聞いてくるから返答に困ってしまう。
「あぁー、うん、ちょっと……」と曖昧に答えると、「ふぅーん、じゃあいいや!」とこれからやるおままごとの設定を話し始めた。
今日は、いつぞやにやった高校生の幼馴染の続編をやるらしい。 前よりちょっと設定を付け加えてさっそくおままごとが始まった。
将も楽しく真面目におままごとをして、みおちゃんのご機嫌を取りつつ高校男子を演じる。 そして途中からみおちゃんの手を掴んで外に引っ張り出した。
外で遊んでいる園児たちの中から、緊張で棒立ちしているダイスケくんを見つけた。
「おーい!」と呼びかけると、恥ずかしそうに顔を下に向けて軽く手をあげて応えた。
「きみ、きょう、てんこうしてきたんだよね?」と将
「う、うん」とぎこちなくダイスケくん。
昨日、ダイスケくんを無理やりおままごとに参加させてしまえば、なんやかんやで仲直りするんじゃないかと思った。
みおちゃんは少しムっと膨れて、じっと将たちを観察するように見ている。 それでも、将とダイスケくんは必死におままごとをやってみた。
「ともだち、まだいないよね?」
「うん、いない……」
「どうかな? よかったらショウたちと——————」
「わたしはイヤだ。 きょうのおままごとはおわり」
みおちゃんはそれでけ言って、早足に教室に戻ってしまった。
将たちはみおちゃんが去っていくのを見て肩を落とした。




