三十話
「じゃあ、またねー!!」
手をふっりながらみおちゃんは帰っていった。 こうなってしまうと、将は一人になる。
みおちゃん以外の友達はいないし、だからといってどこかのグループに入る勇気もない。 誰かから話しかけられることも——————
「おい、すこしいいか?」
朝きた男の子だ。 朝と違って少し気まずそうな顔をしている。
「なに?」
「あさは、そのへんなこといってわるかった……」
「ん? あぁ、べつに、きにしてないからいいよ」
ほっと胸をなでおろして将のとまりに座った。 そしてなぜ朝へんなことを言ったのか話し始めた。
「ようちえんにはいるまえ、おれはみおといっしょにあそんでたんだ」
「ヤキモチ?」
「ちがう! さいごまできけ!」
——おこられてしまった。
「いいか、あいつは、おままごとでしかあそんでくれない」
「うん、しってる」
呆けた顔で見られたけど、これまでずっと遊んできたのがおままごとしか遊んでないから、そうだろうなと思っていた。 将から「なにかしたい」て言わなかったせいもあるかもしれないけど、おままごとやってるみおちゃんの笑顔を見てると言い出せない。
「たの……しいか? ほかのことしてあそびたくないのか?」
「たのしいには、たのしいよ。 けど、ほかのことで、あそびたいともおもってる」
楽しいものでもいつかは飽きがくる。 飽きが来ないようにするには新鮮な風を取り込まないといけない。 砂場で遊んだり、ボールを蹴ったりと他の遊びもしないといけない。 それをみおちゃんは分かっていない。
「たのしいとおもえるだけ、たいしたもんだよ。 おれは、にげちゃったからな」
「ケンカか?」
「うぅん……、そうかもしれん。 もうイヤだっていったら、あそんでくれなくなっちゃった。 きらわれたのかなぁ……?」
最後のは聞き取れないほど小さな声で言った。
「いまでも、みおちゃんとあそびたい?」と聞くと、小さくコクンと頷いた。
「だったら、ショウがなかなおりさせてあげる!」
「……できんの?」
「じしんはないけど、やってみる! だからよろしく、ぼくはショウ。きみは?」
「ダイスケ。 きたいするだけしてみる……」




