三話
遅刻ギリギリで会社のデスクについた。 新入社員も入って、先輩として気をひきしめなければならない時期なのにギリギリの出社。 だらしない先輩だと思われていないだろうか。
「先輩、危なかったですね」
隣のデスクでキーボードを打っていた後輩が椅子をまわし、さっそくイジってくる。
「将を幼稚園に送ってきたからな。 こんなにギリギリになるとは思ってなかったけど」
「あぁ、もうそんなに大きくなったんですか……。 僕たちも面倒見てきたから感慨深いなぁ……」
「そのことなんだが、将にがってん承知の助って言葉教えたの誰か知ってるか?」
「僕です!」
ドヤ顔でビシっと親指で自分のこと指した後輩の頭をひっぱたく。
「中村ー、社内暴力はその辺にしとけー。 新人も怖がるぞー」
部長に書類の入った分厚いファイルで頭を叩かれ、ファイルを差し出される。
頭をさすりながら受けとるついでに、目だけで新人が集まっているデスクを見る。 すぐに目線をパソコンの画面にうつして、始めから見てませんといったように仕事に打ち込むのをしっかりとこの目で見た。
幼稚園といい、会社といいあまり良い印象を与えられてないな……。
「それと中村と藤井、新人歓迎会を含めた花見やるから幹事頼めるか?」
俺と隣に座ってる俺の後輩である藤井に『無理にでも押し付けよう』と悪意のこもった笑顔で課長が言った。
顔にだけは出さないが、心の中では嫌で嫌でしょうがない。
花見はただ準備するだけじゃなくて、周りの人の邪魔にならないように気を付けたり、なにより朝早くから場所取りをしなければならないから面倒でしょうがない。 正直、やりたくない。
だけどここで駄々をこねても承諾するまで、絶対に部長から解放されないと諦めて渋々ながら承諾した。
その言葉を待っていたと言わんばかりに力のこもった手で、俺たちの肩を叩いて解放してくれた。
部長に気づかれないように肩をさすって、隣の藤井を見るとげんなりしている。
藤井は去年も幹事をやったから今年はないと思っていただけにダメージが大きいのだろうが、やると決まった以上最速でささっと終わらせるのが一番。
そういうわけで——————
「藤井、今夜空いてるか?」
「……空いてますよ。 家で待ってる人なんていませんからね」
「それじゃ、今夜うち来い。 早く終わらせたいし、うちで打ち合わせするぞ」
「そうですねー。 僕の結婚の話も早く決まってほしいですよ……」
それについてはノーコメント。




