二十九話
今日はおままごとの延長線で、お店屋さんごっこをみおちゃんとすることになった。 みおちゃんがお店屋さんで将がお客さんの役。
それでみおちゃんは「おはなさん、やりたい!」て目を輝かせて言った。 花壇の花を摘んでくるのもアレだし、紙に花の絵を描いてみることにした。 実際にはない色の花を描いたり、この季節に咲かない花を描いたりとこれだけでも楽しい。 それに本物には負けるかもしれないけど、これはこれで良いと思える。
「これぐらいでいいかな? それじゃあ、ならべるからまってて!」
「ショウもてつだうよ」
「ダメ! これはおみせのおしごとだから、おきゃくさまはまっててください!」
——もうはじめっているのか。 スタートぐらいはいってほしい。
多少の不満を持ちながらじっと待ち、花を並べ終えたみおちゃんがニコっと笑って「いらっしゃいませー!」と言った。
——いまいちスタートがとつぜんというか、ビックリする。
ワンテンポ遅れてお客を演じる。 並べられた花を見て、簡単に感想を言って今日のオススメを聞いてみる。
「そうですね……、今日のオススメはこれ? いや、これです!」
ピッと七つの色を持つ花を選んだ。
「きれいなはなですな」
「これはですね、このおみせでしか、とりあつかってないおはなです!」
「それはそれは、ぜひともほしいですな。 でも、おたかいんでしょ?」
「いえいえ、こちら1ぽん1000えんのところマケにマケまして、750えんのごていきょうです。 さぁらにきょうおかいあげのおきゃくさまには、こちらのおはなもつけて、なんとおねだんそのまま」
某テレビショッピングの社長みたいに高い声を出して、みおちゃんもノリノリな様子。 むしろあの社長を知っているのにこっちが驚く。
「じゃあ、それください」と紙で作った1000円を渡す。 それを受け取って「おつりの250えんです」と紙のお釣りを渡される。 それから花の根本に赤のクレヨンでリボンを描き足してからもらった。
これで遊びは終わり、と思っていたら男の子の集団が偉そうにやってきて、真ん中の男の子が将を指差した。
「おい、おまえ。 なにおんなとあそんでるんだよ! みててムカツクんだよ!!」
まわりも「そうだー! そうだー!」と声をそろえて言った。
「おんなのこでも、ともだちならあそぶだろ? それにムカツクならみなければ、いいんじゃないか?」
「そういうこと、いってるんじゃねぇよ! おとこならおとことあそべ! おままごとなんて、おんなのあそびであそんでるんじゃねぇ!!」
「そんなにこえをあらげるなよ……、どんなあそびしようがショウたちのかってだろ?」
また男の子が何か言おうとしたところで、チャイムが鳴って先生が集まるよう声をかけ始めた。
男の子集団はキっと将を睨んで、とりあえずはここまでといったように離れていった。
「なんだったんだろうね?」
「う、うん、なんだったんだろうね……」と少しおびえながらみおちゃんは言った。




