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二十五話

 将の案で鬼ごっこをすることになった。 最初の鬼は俺がやり、二人はわーきゃーと逃げ回っている。

 十秒数えて「いくぞー!」と走り出す。 二人とも一緒に逃げているもんだから、どっちを追いかけるかと考える必要はなかった。 でも、どっちを捕まえるかと考えてしまう。

 少しだけぞんざいに扱ってもいい将を追うべきか、可愛くていい子のみおちゃんを追いかけるべきか。 俺は大人として子供を楽しませないといけない。 というのは建前で、みおちゃんをどう楽しませるかだ。

 招いた客というと変だけど、みおちゃんは大切な将の友達だ。 今日は楽しかった、と思えるようにしてやりたい。

 そのために俺はどうすればいい?

 ……結局、考えても分からん。 初めて会う人を楽しめせるなんて芸は持ち合わせてない。 なら全力で俺も楽しもう。 大人とか子供とか関係なしで、全力で遊ぼう!

 将たちに合わせていた足を速く動かして、急加速をした。 大人の全力疾走に驚いているうちに将を抱き上げるように捕まえた。


「こどもあいてに、オトナげないぞ!!」

「はっはっは、何を言う! 全力で遊ばないと楽しくないだろ?」


 将を降ろして頭をぺしっと叩き、鬼が交代した。 将がむくれた顔で十秒数えているうちに、みおちゃんを抱きかかえて逃げた。 悪党にさらわれたヒロインの如く、「きゃー」っと叫んでいるが楽しそうに笑っていた。

 

「おにいさん、はっやーい!!」

「だろ?」

「でも、ショウくんが……」

「ちゃんと手加減するから大丈夫!」


 十秒数えているうちにずいぶん距離を稼いだから、もう走る必要もないな。 子供とは言え、人ひとり抱えて走るのはけっこうしんどい。

 それにやりすぎると、さすがの将も泣くかもしれない。


「あっセンセイだ!!」


 十秒数え終えた将が指差す方向に髪を二つに分けた人がいるが、木々が邪魔で肝心の顔が見えない。 首を振って木と木の間からなんとか顔を見てみようとしても、なかなかどうして木々が邪魔をする。 結城さんだったら挨拶に行かないと、と思っていると足に重い衝撃があった。

 こっそり近づいていた将が足に抱き付くように俺を捕まえて「タッチ」と鬼が交代した。

 

「センセイがいるというのはウソだ」


 やっと木々の間から顔を見ることができたが、将の言う通り結城さんではなくまったく知らない人だった。 よくよく考えたら結城さん、このあたりに住んでないから歩いてるわけないじゃないか! 騙しやがって、誰に似たんだか……。

 

「セイさんがまた、オニー!」としてやったりと笑いながら逃げていく。

「じゃあ、タッチ」と抱いているみおちゃんを捕まえた。

「えっ!? 10びょう、かぞえてないよ!!」

「イーチ、ニー……」

「はなしてー!!」


 俺の腕の中でもがくも、逃げることはできずにあっさりと鬼を交代した。  

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