二十一話
仕事をしながらの家事はいつになっても慣れない。 仕事の疲れでいいかげんになってしまう。
掃除機は三日に一度、洗濯は二日に一度、皿洗いなど多少の汚れがあっても「まいっかー」で済ましてしまう。
それでも一人暮らしの時と比べたら、ちゃんとやっている方に入る。 特に料理はちゃんとやっている。
俺だけならテキトーでいいが、将のこともあるからそうもいかない。 毎日違う料理を作って、栄養が偏らないようにしてやらないといけない。
親である限り、こればっかりはいいかげんにやるわけにはいかない。
将には病気せずに健康に育ってほしい。 その想いを込めて今日も料理をする。
「ごちそうさまでした」と手を合わせて将。
「はい、お粗末さん」と俺。
作った料理が空になるのは見ていて気持ちがいい。 毎日仕事をしながら考えてたかいがあったってもんだ。
皿を流し台に運んでモコモコとスポンジを泡立てる。
「みかん、たべていいか?」
カゴに移したみかんをひとつ手に取って言った。 「いいぞー」と許可を出すと、手に持っていたみかんをカゴに戻して綺麗なみかんを探しカゴを漁りだした。
「どれも似たようなものだぞ」
「これだけあるんだ、きれいなものもある!」
将の基準で、いくつか綺麗なものをカゴから取り出した。 その中からさらに綺麗なものを二つ選んで、「セイさんは、これをたべるといい」と一つ選んでくれた。
「あぁ、ありがとう。 テーブルに置いといてくれ」
将は俺のみかんをテーブルに置いて、ソファに座った。
まさか俺のぶんまで選んでいるとは思わなかった。 小さいころは自分のことしか考えてなかったから、あんな行動されると「本当に自分の息子か?」と不安になってしまう。
舞に似たんだろうな……。 少なくとも、小さい頃の俺はあんなことしたことがない。
俺には出来たすぎた息子ということですか、舞よ。




