十七話
お絵かきをしていたら「リリリーン」と電話の着信音が鳴り、ビックリする。 先生はエプロンのポケットからスマホを取り出し、「中村さんからだ」と言って電話に出た。
電話中の先生の顔はおもしろかった。 驚いた顔をしていると思ったら、真剣な顔つきになったりと一回の電話にいろんな顔を見せれくれた。
「将くん、今日は先生の家にお泊りです!」とスマホをしまって言った。
「セイさん、おしごとか?」
「取引先の方とお食事ですって。 最後の念押し、だとかどうとか……言ってたかな?」
セイさんは『コンビニでお弁当を買ってください』と頼んだのに対して、先生は『どうせなら預かりますよ?』と言って、ショウはセンセイの家にお泊りすることになった。 セイさんも断ろうとしたけど、センセイがどうしても譲らず今日一日だけセンセイの好意に甘えることにしたらしい。
「まあまあ、そういうのは置いといて、帰ろっか!」とエプロンを外して言った。
夕食だけでいい、と言って辞退すべきなのか、セイさんの言った通りお言葉に甘えるべきなのか未だに戸惑っている。
でも、おなかが減ってきてどうでもよくなった。 「うん!」と二つ返事でセンセイの家に行くことにした。
センセイの住んでるマンションは、一階にペットのヘアーカットの店がある三階立てのマンション。 各階に三部屋しか用意されておらず、こじんまりしていた。
センセイの借りてる部屋は三階の左端で、ベットだけで部屋の三分の一を占めるほどの小さな部屋だった。
「ベットに座ってていいよ」
部屋に入るなり、借りてきた猫のように立ち尽くしていたショウを軽々持ち上げてベットに座らせた。 女の人であっても、ショウぐらいの小さな子ぐらいなら持ち上げられることはできる。 でも、少し悔しい思いをする。
「これからごはん作るけど、嫌いなものってある?」
「ん? うぅん……、ヌメヌメしてるのはだめだ」
「ヌメヌメ? ねばねばは大丈夫なの?」
「そっちは、だいじょうぶ」
——なっとうは、むしろすき。 まぜすぎると、きらいになるけど。
センセイは「えらいね!」と感心したように言って、冷蔵庫の中を確認した。




