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第一話 柳川家のよくある朝

初めての投稿作品なので、文がかなり雑です。

「グッドモーニン愛しのマイシスター! 今日も最っ高にカワウィーぜ!」


 朝からハイテンションな状態で勢いよく自室の引き戸を開けた寝癖の残る男、柳川(やなぎがわ)家長男、柳川大吾(だいご)は、先に居間を占領していた妹に挨拶をする。


「ちっ。レア度も経験値も低レベルの雑魚キャラか。一日一度の無料ガチャだったというのに」


 ツンツン頭でボーイッシュな顔立ちをした柳川家次女、柳川小吾(しょうご)は、兄の挨拶を完全に無視してスマホゲームをプレイしている。


「おいコラ! お兄ちゃんの愛がマキシマムに込められたおはようをスルーするんじゃない!」

「このままでは気分が悪い。イベントは発生していないが、ここはレアガチャでも引いて立て直すとしよう」

「あの、小吾ちゃん? もしもーし」

「くっ、一体どういうことだ。なかなかのレアキャラを引き当てたというのに、気分がまるで優れない。流行病にでもかかったか?」

「お願いします! そろそろ私めと会話を!」


 八つも歳の離れた妹に相手に、土下座してまでコミュニケーションを取りたがる兄の姿がそこにあった。


「……む? 何だ。気分がよくならないと思ったら、貴様がそこにいるせいか」


 スマホを閉じた小吾は、腐敗物を眺めるような視線を眼鏡越しに向けて、大吾に得意の毒舌を披露する。


「月曜の朝から雑音と加齢臭を発するな。おかげで僕は耳鳴りと吐き気がする。早急に布団へ戻れ」

「やっとその気になってくれたか」


 安堵の溜息を吐く大吾は土下座から直立体形に戻る。


「しかし小吾よ。加齢臭云々は一時保留にしておくとして、本当に今日は調子が悪いんじゃないのか? 傷つけ方がいつもより優しすぎる。布団に戻れなんて二度寝を勧めるような真似、お前らしくもないぜ」


 大吾は日頃との小さな違いをにこやかに指摘する。

 簡単に動じないその精神力は、普段から小吾の毒舌を聞き続けた賜物である。


「寝るのは大歓迎だ。その方が密封しやすいからな」

「密封!?」

「『臭い兄には蓋をしろ』。昔の人はそう言った」

「誰だそんなパチモンな(ことわざ)後世に残しやがったのは!」

「やかましい。それ以上雑音を響かせるなら、密封後そのまま生ゴミに出すぞ」

「やめて! お兄ちゃんを珍事件の被害者に仕立て上げないで! そんな注目はいらないから!」


 そんな感じで、兄と妹の元気のいい雑談が家中に響き渡る中、肩まで伸びるサラサラの髪に、一目で美少女の言葉が思い浮かぶほどの整った顔立ちをした柳川家長女、柳川奈々香(ななか)は二人の声を聞き、朝食の為に用意したトーストを持って台所から居間へと向かう。


「おはようございます。兄さん」


 次女の小吾とは違い、丁寧な言葉遣いで朝の挨拶をする奈々香。


「おう! グッドモーニン奈々香! 今日も最っ高にカワウィーぜ!」

「もう、朝から何を言っているんですか」


 大吾の挨拶に若干頬を赤らめるが、軽くあしらった奈々香はテーブルの上に持ってきたトーストを並べていく。


「可愛くて、そしてエロいな」


 カラン! と陶器独特の衝突音が居間の中に響く。

 大吾の発言に驚いて皿を滑り落とした奈々香は、羞恥のあまり今度は顔全体を真っ赤に染め上げ、自分が食べる筈だったイチゴジャムの塗られたトーストが、カーペット上で無残な姿に変えられた現実を前に、小吾は顔全体を真っ青に染め上げる。


「ほ、ほ、本当ににゃにを言っているんですかっ!」


 一部分噛みながらも、怒りを大吾にぶつける奈々香。


「おいおい奈々香ちゃん。俺は正直な気持ちを言っただけだぜ?」


 失敗すら上書きする可愛らしさを目に、顔が緩んでしまった大吾が言う。


「中学に入ってから急激に成長したお前の体は既に超高校級だからな。エプロン越しでも隠しきれないそんなナイスバディを見せつけられちゃ、身内とはいえ、お兄ちゃん欲情しちゃうしかないじゃないのよ」

「妹に欲情しないでください!」


 胸元を守るように両手で隠しながら至極真っ当なことを言う奈々香。


「かっかっか。確かに欲情は世間体的に問題があるな」


 だが、と続けて言う大吾は、いかにもな指の動かし方をしながら奈々香に迫る。


「欲情ではなく、兄が振る舞う純粋な愛情ならば、たとえ度を少し超えたスキンシップでも何の問題はないへぶうっ!」


 厚さ八センチはあろうゲーム攻略本の角が、回転を加えながら大吾の頭に命中する。

 屁理屈を持ち出して妹に不埒な真似を働こうとした大吾に、婦女暴行未遂及び器物損壊の罪で、裁判長柳川小吾からの有罪判決が下ったのだ。 


「この低脳が」


 身も心も凍てつかせるような鋭い目で大吾を睨みつける。

 攻略本の予想外な威力に押され、横倒れになっていく大吾は。


(相変わらず容赦のない妹だぜ。だが、そこがいい……)


 心の中でグッドポーズをとりながら、大吾は自分の部屋への引き戸ごと、悦の表情を浮かべて倒れこんでいった。


「よし寝たか。奈々香、生ゴミ用の袋を」

「やめなさい」

読んで頂いてありがとうございます。初めてはどんな場所でも緊張しちゃいますね。感想などありましたらよろしくお願いします。

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