-7-
自分の目を疑う、信じられないくらいの素晴らしい成果でした。
その動画は僅か一週間で再生数を200,000以上に伸ばし
マイリスト数は優ににそれの10%を超えていました。
コメントも古いものは簡単に流れてしまうほどの量で、
好意的なものが大部分でした。
もちろん良くないコメントもありましたが、
それも人気ある動画・製作者のステータスの一つと言えるでしょう。
嬉しさと興奮で体が熱くなっていくのがわかります。
軽い運動で汗をかいた後のような、
心地よい倦怠感に全身が包まれました。
そして、そんな夢心地の状態で流れるコメント群を眺めていると、
賞賛と批判が入り乱れる中で、ふと目に留まるコメントがありました。
「こんな風になって残念です」
一体どういうことでしょうか?
なにか不満を示しているのは分かりますが、「こんな風」とは・・・?
しかしそれに気を取られたのは僅かの間で、溢れ出る他のコメントに流されて、
この時はあまり深くは気にせずに忘れてしまいました。
とにかく、なんにせよ今回の動画は大成功でした。
まったく、調査をした甲斐があったというものです。
情けない話ですが、僕は努力というものが苦手で、
少しでも障害にあたるとすぐに諦めてしまうようなタイプの人間でした。
そこにいくと今回は、今までに無い程の努力のしようだったと思います。
多くの時間を動画の巡回・研究に費やし、その後の動向を追い細かに記録する。
製作者は勿論のこと、その動画に携わった人達までチェックしました。
時間を好きに使える休みの日はまだ楽なもので、
仕事のある平日はそう簡単にいきません。
僕の職業が事務仕事であることは幸いでした。PCを使えるからです。
さらに幸運なことにネットワークにも接続されていて、その管理も杜撰でした。
この環境でリサーチを進めるに必要なのは、上司や同僚の目を盗む注意力です!!
背後に上司のデスクがある環境でしたので、なかなかスリリングなものです!
Webブラウザを上手く他のソフトでカモフラージュしながらオペレートします。
そして事務系ソフトの多くはデータの管理に便利であっただけでなく、
熱心に仕事をしているような、そんな雰囲気作りに大いに役立ちました。
そのようにして、上手く彼らの隙をついてリサーチを行いました。
トイレの個室は、スマートホンを使うに最適な環境であることは、
言うまでもないない事でしょう。
( 仕事のサボり方はもっと研究が進んでいるはずで、
僕はまだまだ洗練の度合いが低いと思いますが)
曲や動画製作は、もちろんそれ以上に大変でしたが、
ツラいと感じる事は全くありませんでした。
大変とは、ここでは「忙しかったが、充実した時間の使い方だった」
という程度の意味です。
本当に、随分と労力を費やしたものです。
まぁもっとも、好きなことを突き詰めることを「努力」とは言わないと思いますがが。
とにかく、晴れて有名P(僕もついにP名を頂きました!)となった今では、
それらは良い思い出となりましたし、
自分でもやれば出来るという自信にもなりました。
まったく、この集中力、行動力を仕事に活かせれば
とても高い評価をもらえるだろうに!
自虐めいた冗談を吐いてみて、浮かれた気分がもたらす
気恥ずかしさを誤魔化そうとしたものです。