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少々手間取りましたが、どうにか事は成りました。
女の子もわりと力があるものですね。それに重たい。
まったく、最後まで苦労させてくれるものです。
だけど、これでもう安心です。
真実を知っているのはもう僕と彼女だけです。
そして彼女は、自分から今回の詳細について口を開く事は無いでしょう。
彼女は永遠に「ミク」そのものとして語り継がれるはずです。
それは彼女だって深く望んでいたことでもあります。
そしてもう、誰も僕と彼女の、この関わりを断ち切る事は出来ません。
彼女はーーーミクはもう僕だけのものです。
幸せとは、こういう精神状態を言うのでしょう。
人が定められた、その人独自の、生かされている理由があるとすれば、
僕はもう、その成すべき全てを成したのでしょう。
もうどうなってもいいという気分です。
晴れ晴れとしています。
初めて曲を作って投稿した、あの日の朝を思い出しました。
どうしようもない、酷い曲だったな。
でもアレが始まりで、この幸せに辿り着く切欠だったのだから、
やはり僕にとっては特別な曲です。
その「どうしようもない」曲が、それだけが僕の部屋に響き渡る音の全てでした。
※
だから、もっと空っぽになるはずでした。
成し遂げた充実感からくる反動で、強い虚しさと、
それから胸を締め付けられるような切なさを感じるはずでした。
これ以上はできることがないという、心地良い無力感に囚われてもいい頃です。
だけど、どうしてでしょうか、
それらはいつまで経っても僕の心に襲いかかってはきませんでした。
相変わらず、ネットでは僕らの話題がさかんに交わされていました。
投稿した動画はいまだに伸び続け、それを元にした二次創作も増えています。
ニコニコ動画のボーカロイドカテゴリーにおいて、
トップから数ページは僕の動画とその関連創作物が占めています。
僕はそれらを一つずつ視聴していきました。
最早僕の作品集といった感じになっているカテゴリ最初の数ページ。
そういえば、自分の作品を投稿後に改めてよく視聴した事は無かったように思います。
いい機会です。一つ一つジックリと見直してみよう。
まだ時間はあるはずです。
この妙な気分の原因がわかるかもしれない。
そんなことを期待して、僕にとって最も思い出深い作品である、
「あなたにぜんぶあげる」を視聴しました。
※
忘れていたあの感じ。
克服したと思っていたのに。
なんのためにここまでやったんだろう。
全部無駄だったのだろうか。
僕は自分の動画を見ながら、
胸の奥から染み出すあの「嫉妬」という感情を感じ取りました。
一体どうして・・・自分の動画にどうして嫉妬するんだろう?
答えを求める混乱した頭は何をしたら良いかを理解できず、
ただひたすらに様々なボカロ曲や関連動画を視聴しはじめました。
どれを見ても何を聴いても!
この嫌な気分が、嫉妬という妙な感情が消えない!
それどころか、それはどんどん大きく強くなっていきます。
みんなの興味は、今も確かに僕に集まっています。
僕の製作物は、少なくとも今のところは
他の誰の作品よりも話題にのぼる機会が多いはずです。
多くの人の時間が、僕の動画や曲に費やされているのです。
僕の動画に・・・
僕の音楽に・・・
僕の・・・
ぼくの・・・
ぼくの
つづく




