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一度回りだした奇妙な仕組みは、その勢いを増す一方です。

最早、本物のアイドルと言っても過言ではない、

少なくともネットの上では・・・彼女はそういった存在となりました。

実際がどうであれ、この高い知名度と神秘性が作り出すカリスマを

彼女が持ち抱えて見えるという状態が大切なのです。

みんなが、彼女は現実に降り立ったもう一人のミクであるような、

そんな存在であると感じることに、あまり違和感を感じなくなっていました。

それは、ネット上でよく見られる「お祭り」騒ぎ的なノリなのかもしれませんが、

そういった状態を広く浸透させることも大きな狙いの一つでした。

既に多くのファン達は、あまり疑問なく雰囲気にのまれていきました。


この頃、「ミクさん?どっちの?」などという、

奇妙なやり取りがきかれるようになりました。



彼女を作り上げたのは僕です。

生きた伝説、本物の偶像に仕上げたのは僕です。

そして僕は、少しでも多くの人に彼女の素晴らしさに触れて

感動してもらいたいと思いました。

だから彼女を、初音ミクの現実への顕現を、

映像作品という形で分け与えているのです。

どうぞもっと彼女を愛してあげてください。

そして優しくしてあげてください。

その無邪気で柔らかな笑顔は、望んだみんなに与えられるのです。



だけど同時に、限度を弁える事も大切です。

踏み越えてはいけない一線があります。

神様の遣いである天使には、それと等しい敬意を示さねばならないのです。

彼女は、その彼女の笑顔は、まさに天使の祝福そのものです。

そして天使は人間とは違います。

天使には天使の、人間には人間の、それぞれにそれぞれの領分があります。

いつまでもこの世界ににとどまることは出来ません。

ここにいつづければ、純真無垢な彼女のイメージが、

ミクとしてのイメージが穢される可能性となります。

僕にとってそれは、おそらくみんなだって、とてもつらくて悲しい、

そして許し難いこととなるでしょう。



何事も、最後の仕上げが大切なのは言うまでもありません。

彼女が「ミク」として保存される、永遠に語り継がれるに必要な、

大切な仕事が残っています。


最後に投稿した動画の終盤。

彼女が、ミクがミクとしての情報を失い、その存在を閉じる・・・

人間で言えば命を失う、天に召されるという、そんな演出がなされています。

もう二度と、新しい彼女の姿を目にする事はないと言う暗示でした。

「会えなくなるかもしれない」という状況は、人にとって非常につらいものです。

視聴者の悲鳴が聞こえてきそうな、実際にコメントは悲痛なものばかりでしたが、

事実とても切ない、悲しい作品に仕上がるよう製作をしたつもりです。




つづく


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