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8月31日、初音ミク誕生から5周年を迎えるとの事で、

「おめでとう」の気持ちと共に、何か一種の感慨深さも感じています。

ヤマハの音声合成技術、vocaloid2エンジンを使用したヴァーチャルネットアイドル『初音ミク』。

リリース直後はそれこそ新し物好きのおもちゃといった感じでしたが、

ニコニコ動画にユーザーオリジナルの楽曲が投稿され始めると、

徐々に話題となり、楽曲の製作者を増やして来たのでした。

忍耐強さを求められる調整を重ねに重ね、それでも完全には消すことのできない、

まるでロボットのような不自然で不器用な歌い方。

しかし、そこに一生懸命な、健気な姿を感じ、「姿を感じる」とは妙な表現ですが、

ともかくそれが思いのほか感情を揺さぶる・・・感動出来る。

自分の中に新しい感性が生まれたような、そんな衝撃を与えてくれたのです。

特に初期の名曲達は、初音ミクの、そしてボーカロイドの普及に大きな貢献を果たしたと言えます。

今では、単なる「シンセサイザー」という扱いを超えて、一つの人格をも有したと言って過言無い・・・

いや、肉体を持たないという特性上、それを超えた存在と表現しても良いのかもしれません。

要するに「神」のような「何か」であると。

まぁもっとも、ファンの間では「天使」という呼び名のほうが親しいようですが。

その後も成長を続け、多くの派生ボーカロイドを生み、新たなファンを獲得し、

あらゆるメディアに進出を果たし、ついには現実の世界に舞い降りて

コンサートをもやってのけたのです!

それも日本だけはなく海外でも!

多くのファン達、-楽曲・映像・イメージアート・小説・漫画などの製作者、

そしてそれらを消費する人々-、を惹きつけ増やし続けるボーカロイド。

そのムーブメントは、今では製作者の過多やファンの好みの細分化で、

飽和状態とも言えるまで成長を続けています。


さて、ミクを「お迎え」(購入する事をそう呼ぶ)した人は、何に惹かれてそうしたのでしょうか?

曲を聴いて自分も作りたくなったから?

ずっと歌モノを作りたかったDTMファンでしょうか?

あるいはなんとなく流行っているから?

ミクの可愛らしさに惹かれて?

色々とあるでしょう。どれも理解できる理由ばかりです。

かく言う僕は、ニコニコで曲を聴いて「勘違い」したクチです。

ミクさえあれば、自分にも人を感動させる曲が作れる!

そしてニコニコ動画に投稿すれば、多くの人が聴いて反応を返してくれる!

上手く高い評価を貰えれば有名になれる!!


もちろんそう簡単なものではありませんでした。

MIDIキーボードからDAWまで一通り作曲に必要な道具を揃えたものの、

作曲のイロハやセンスまで手に入った訳ではありません。

立ち上げたDAWを前に、ただ呆然とするだけでした。

一気に興奮が醒め、機材一式はしばらくの間押入れの肥しとなるのでした。

ミクのパッケージを見る度に、なんとなく申し訳ない気分に包まれて

心の中で「御免なさい」と、幾度となく呟いたものでした。


そんな、情けないやら悲しいやら、悶々とした気分を抱えて過ごす日々。

作曲したいという情熱も、線香花火のように弱々しくなっていきました。

最後の支えになっていたのは、なんとも情けない事に、

「このブームの中に自分も存在したい」という感情でした。

日々ニコニコに投稿され続ける玉石混交の楽曲の数々。

それを取り巻くファンの熱気。

確かにそこで、何か大きな事が起きようとしている。

いや、もう起こり始めている!

そんな渦の中に自分も巻き込まれたい!

それも消費する側ではなく供給する側として!

わかりやすく言うと、要は有名になってチヤホヤされたいだけなのですが。



「わかりやすく言うと・・・?」

「いや、それは単なる綺麗事でしょうか?」

「もっとイカれた事を考えていたように思います」

「嘘をつく必要もないのかもしれない」

「本当はどうしたいか良く分かっているハズです」



・・・違います。

そんな下衆な考えは持っていません。

ちがうちがうちがうちがうちがう!!

僕はそんな人間じゃありません!


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