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第1話 喫茶hood(フッド)

「こんにちは〜!」


中学校3年生ももう終わる。私はいつものように地元の行きつけの喫茶店hood(フッド)にやってきた。


染み付いたほのかなコーヒーの香ばしい匂い。ダークブラウンの木目でできた床と壁。落ち着いた雰囲気が私のお気に入り。


店主のおばさんが私に気づくと、いつもの笑顔で迎えてくれた。


「あら、皐月(さつき)ちゃん、おかえり。今日は早いのね。」


「はい!今日は午前授業だったので!」


「注文はいつもので良いわよね!好きな席座っていいわよ〜」


「はい!ありがとうございます!あ、あと今日はオムライスお願いしまーす!!」


「はいはい。今日は大盛りにしてあげるわよ。」


おばさんに笑顔を向けた後、私は特等席に向かった。特等席。お店に入って左奥。窓際の静かで落ち着いた席にいつも座っている。中学校2年生になって通い始めてからもう1年ほど経つ。


このお店にはよく本を読みに来たり、ここ一年は受験勉強のために来ていた。

受験も終わり、自分へのご褒美としてこの喫茶店にやってきた。


「お待たせしました。こちらオムライスとカフェオレでございます。」


少し時間が経つと、身長が高くスラッとした細身の容姿。整った顔立ちのエプロンを着けた青年が落ち着いた低い声で私の席にオムライスとカフェオレを持ってきてくれた。


「あ…どど…どうも…ありがとうございます…。」


「失礼致します。」


「は…はい…。」


私はカフェオレを1口飲み心を落ち着かせた。


(やばぃ…ちゃんと話せてたかなぁ…綺麗な手だったなぁ…。は!何考えてるのよ私!)


私は焦ったようにオムライスを頬張った。やっぱりここのオムライスが一番おいしい。ケチャップの酸味とほのかなたまごの甘味。安心する味で私はすっかり笑顔になって口いっぱいに放り込んだ。


でも視線は彼を追ってしまう。


彼を見るようになったのはちょうど私が中学校3年生になった頃…。


〜半年前〜


夕方。家族の仕事の都合上、休日は食費を片手に喫茶hoodでお昼ご飯を食べ、本を読むのが日常。

大好物のオムライスを食べて、図書館で借りた本を読んでいた時、私は彼を見つけた。


(あれ…あの人初めて見る人だ…同い年…くらいかな?)


優しい笑顔で接客し、綺麗な手でコーヒーを入れる彼は私の目を惹いた。

次の日も。

(今日…あの人いるかな…)


その次の日も私は通い彼に会いに行った。


いつからか私は彼を見るのが楽しみになっていた。


(あの人…なんて名前なんだろう…お話…してみたいな…)


〜現在〜

それから半年が経ち、私は彼に片想い中である。


時間も頃合いでお会計を済ませようとレジへ向かう。レジには彼が待っていた。

(う~…名前も知らないのにいきなり話しかけるのヘンかな~…聞くか…いやぁ~でもそもそも私のこと認知してないかもだし…)


「あ、あのお会計を…お願いします…」

震えた声でしっかりと両手で伝票を渡す。彼は私の気持ちなんて微塵も気にしないそぶりで笑顔で受け取った。


お会計を済ませ、話す話題も見つからず、帰ろうとしたとき。


「受験終わったんですね。卒業、おめでとうございます。」

彼が優しい笑顔でレシートと一緒に私にくれた言葉。


私は目を見開いた。初めて彼との業務じゃない会話。そして私を個人として認識してくれてたこと。


「あ…ありがとうございます…こ、これからも通います…。」


喫茶店のドアの鈴が鳴る。まだ頬が熱い。両手で頬を抑えてさっきの会話を思い出す。

「また話せるかな…。」



そして私は中学を卒業し高校生になる。

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