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追放された万年荷物持ち、配信の切り忘れで【世界のデバッグ】を披露してしまう

作者: ちいもふ
掲載日:2026/03/08

「――悪いが、お前はここでクビだ。おとりとして死んでくれ」


 S級パーティ『暁の天剣』のリーダーが冷酷に言い放った。

 場所は、前人未到の深層ダンジョン。目の前には、最強のボス『魔龍』が鎮座している。


「……クビ? 僕を消したら、この場所の『ルール』が壊れて全滅しますよ?」


 荷物を下ろしながら、静かに問い返した。

 だが、リーダーは鼻で笑った。


「ルールだぁ? お前はただの荷物持ちだ。【ポイント指定移動】なんてゴミスキルしか持たない無能が、選ばれし俺たちに意見するな」



 彼らは転移石で逃げ去った。

 残されたのは、静かに僕を映し続ける配信カメラ。

 そして、眼前には食い殺さんと迫る巨大な魔龍。


 溜息をつき、空中に指を滑らせた。


「……まったく。あんな雑な戦い方をするなんて。『バグ』を直す身にもなってほしいよ」


【ポイント指定移動】。

 世間では「自分を動かすだけ」のハズレスキルだと思われている。


 だが、この目に映る景色は違う。

 世界は一種のプログラムのようなもので、その『設定データ』を自在に書き換える権限が、僕にはある。


対象ターゲット:魔龍。……あぁ、ここのデータ、記述ミスだらけだ」


 空間の数値(座標)を、指先で強引にいじくり回す。


「エラーを確認。……『修正デバッグ』完了。不要なゴミデータを消去デリートします」


 指をパチン、と鳴らす。


 次の瞬間。

 最強の怪物だったはずの魔龍が、文字通り「消しゴム」でこすったように、跡形もなく消滅した。

 断末魔すら上げられない。存在そのものが「なかったこと」にされたのだ。


「よし、これでバグは直った。……さて、荷物を整理して帰ろうかな」



【掲示板の反応】


 127:名無しの探索者

 は????????


 128:名無しの探索者

 今、何が起きた????


 129:名無しの探索者

 魔龍が……消えた!? あの荷物持ち、指鳴らしただけなのに!


 130:名無しの探索者

 待て、今のスキルの使い方おかしいだろ。


 131:名無しの探索者

 【悲報】S級パーティ、世界最強のデバッガーを捨てて逃走wwwww


 132:名無しの探索者

 同接100万人突破! これ、歴史が変わる瞬間だぞ!!



 リリアンは悠然と深層を歩き出す。


「おっと、ここも『設定ミス』で足場が浮いてるな。直しておこう」


 彼が指先で空間をなぞると、崩落していた道がパズルのピースがはまるように修復される。

 本来、数ヶ月の工期と国家予算級の魔力が必要なのに、彼は散歩のついでにこなしていく。



【配信スレ:特定班が過呼吸】


 405:名無しの探索者

 おい見ろ、今さらっと「地形データ」書き換えやがったぞ!!


 406:解析ガチ勢

 ありえない。あれは神の権限だ。座標指定の極致……。

 あいつ、ただの移動スキルを「世界そのものを動かす」レベルまで昇華させてる。


 407:名無しの探索者

 ゼオンたちのパーティ、地上で「感動の会見」の準備してるらしいぞww


 408:名無しの探索者

 今のリリアン見たら泡吹いて倒れるだろこれ。



 リリアンは、道中に現れるS級モンスターたちを「配置ミス」として次々とデリートしながら、最短距離で地上へと向かう。



 地上。ダンジョンの入り口前には、多くのマスコミが集まっていた。

 S級パーティ『暁の天剣』のリーダー・ゼオンが、嘘の涙を浮かべてインタビューに答えている。


「……リリアンは勇敢でした。僕たちの身代わりになって、魔龍に立ち向かったんです。彼の犠牲を無駄にはしません!」


 会場が同情の渦に包まれた、その時。


「――あの、すみません。そこ、僕の荷物置き場なんですけど」


 人だかりを割って、大きなマジックバッグを背負ったリリアンがひょっこりと現れた。

 静まり返る会場。ゼオンの顔が、見たこともない色に染まる。


「リ、リリアン!? お前、生きて……いや、どうやって逃げた!」


「逃げた? いえ、普通に『デバッグ』して帰ってきましたけど。あ、ゼオンさんの転移魔法、記述がガバガバで危なかったですよ。次から気をつけてくださいね」


 リリアンがスマホを取り出すと、そこには同接続数300万人を超えた配信画面が。

 ゼオンが彼を突き飛ばし、囮にした瞬間の映像が、大画面でリピート再生されていた。


「これ……配信されてたのか!?」


「ええ。仕掛けられたドローンが『強制公開モード』だったので、そのままにしておきました」


 逃げ場を失ったゼオンたちは、その場で探索者協会に連行されていく。彼らの「誇り」も「名声」も、リリアンの指摘通り「消去」されたのだ。




 数ヶ月後。

 リリアンは世界中の政府や研究機関から「神のエンジニア」として勧誘されていたが、本人はいたってマイペースだ。


 彼は小さな事務所を構え、看板を掲げる。

『世界設定・修正事務所:リリアン』


「リリアン様! 隣国のダンジョンで無限増殖のバグが!」


「はいはい、今行きます。……まったく、この世界の『仕様コード』は設計が雑すぎるんだよな」


 彼は「運命の相手」として再会した幼馴染エイミーと共に、今日も世界の歪みを直しに出かける。

 彼の目には、昨日よりも少しだけ「整合性」の取れた、美しい世界のプロットが映っていた。



【最終スレ:伝説の始まり】


 999:名無しの探索者

 結論:世界最強は、戦士でも魔法使いでもなく「デバッガー」だった。


 1000:名無しの探索者

 リリアンさん、俺の給料の低さも「設定ミス」として直してくれませんかね……。




(完)

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!


 荷物持ちだと思って追い出した無能が、実は世界のバグを直すデバッガーだった……というお話でした。

 ゼオンたちの自業自得な結末と、リリアンの淡々とした無双を楽しんでいただけていれば幸いです。


 もし「面白かった!」「掲示板の反応に笑った」「ざまぁがスッキリした」と思っていただけましたら、

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 ブックマークや感想も、すべて大切に読ませていただきます。

 リリアンの「デバッグ」な日常が、皆様のひとときの清涼剤になれば嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
リリアンさん、すごすぎます。 1000:名無しの探索者の話には笑ってしまいました。 ゼオンの芝居の途中で堂々と参戦して『強制公開モード』に気付くのも凄いのに平然とざまぁするのは凄すぎます! ゼオン、思…
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