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異世界転生したら肉壁だった

初投稿です。

宜しくお願いします

第一話


「底辺職《無能力者》」


 ――最初に理解したのは、音だった。


 金属がぶつかり合う甲高い音。

 獣の咆哮。

 人間の悲鳴。


 次に感じたのは、石畳の冷たさと、鼻を突く血の匂い。


「……ここ、どこだ?」


 そう呟いた声は、やけに若く、掠れていた。


 俺――神崎悠斗は、ついさっきまで日本で暮らしていたはずだ。

 仕事帰り、横断歩道で信号を待っていて、

 背後からクラクションと衝撃音が――。


「起きたか、無能力者ノンギフテッド


 見下ろす声は、冷たく、嘲るようだった。


 視界に映ったのは、鉄の鎧に身を包んだ男たち。

 槍、剣、盾。

 中世ヨーロッパの兵士そのものだ。


「……無能力者?」


「ははっ、まだ状況も分からねぇか」


 男の一人が俺の胸元を踏みつける。


「ここは王都外縁。

 怪物モンスターの群れを押し返す最前線だ。

 で、お前は――能力を持たないハズレ」


 周囲を見回すと、同じ年頃の若者たちが並んでいた。

 皆、何かしらの“光”をまとっている。


 炎を灯す者。

 身体を硬化させる者。

 風を操る者。


 そして――俺だけが、何もない。


「この世界ではな、生まれた時に《恩寵ギフト》が与えられる」


 兵士は続ける。


「強力な能力を持つ者は英雄。

 弱い能力は雑兵。

 無能力者は……囮か、肉壁だ」


 理解した瞬間、背筋が冷えた。


 ――異世界転生。

 だが、最悪の立ち位置。


「安心しろ。無能力者にも役割はある」


 兵士がニヤリと笑う。


「怪物の動きを引きつけて、

 能力者が仕留めるまでの時間を稼ぐ役だ」


 その時だった。


 城壁の向こうから、地鳴りが響く。


「来るぞ!《黒牙豚》だ!」


 巨大な影が土煙を上げて突進してくる。

 鋼のような毛皮。

 人の胴体ほどもある牙。


 ――死ぬ。


 本能が叫んだ。


「能力者、前へ!

 無能力者は……」


 指差された先は、最前列。


「お、おかしいだろ!?」


 叫んだのは、俺の隣にいた少年だった。

 彼も無能力者らしい。顔が真っ青だ。


「黙れ。役目を果たせ」


 次の瞬間。


 炎が走り、風が渦を巻き、

 能力者たちは自分の力を誇示するように前へ出た。


「雑魚だな」

「連携なんて要らねぇ」


 誰かが笑った。


 ――その慢心が、死を呼んだ。


 黒牙豚は、能力を放つ者ではなく、無能力者の列へ一直線に突っ込んできた。


「避けろォ!!」


 遅かった。


 衝撃。

 血。

 骨の砕ける音。


 隣の少年が、牙に貫かれ、宙を舞った。


「……あ……」


 声にならない声。

 地面に落ちた彼は、二度と動かなかった。


 一瞬の静寂。


 能力者たちの顔から、余裕が消える。


「な、なんで……」


 黒牙豚は、最も弱い場所を正確に突いていた。


 ――相手の力量を見誤ったのは、どっちだ?


 俺は、震える手を握りしめた。


 この世界は、

 能力が全てだと思わせて、

 容赦なく命を奪ってくる。


 そして俺は――

 その底辺から、生き残らなければならない。


(続く)


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