第一章 第8話「闇影の接近」
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昼下がり。
アルカディア学園の校庭には、いつもの賑わいが戻っていた。
だが、透真――篠原透真の胸には、昨日の練習で感じた疲労と共に、妙な違和感が残っていた。
(……何か、気配がある)
空気の色、遠くの風の揺れ、校舎の影――
微かだが、明らかに不自然な“闇の気配”を感じ取る。
フェトラルが腕で微かに振動する。
まるで、「注意しろ」と警告しているようだ。
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放課後、透真は訓練場でフェトラルを展開していた。
黒い鎖が腕に巻きつき、宙で渦を描く。
完全契約を果たした今、鎖の動きは自由自在だ。
そのとき、空気が一変した。
校舎の影から、黒い霧のようなものがゆっくりと現れる。
その形は不定形で、触手のように揺れ、どこからか呻き声が聞こえる。
(……異常空間か……!)
黒咲怜二の話を思い出す。
あの“闇の穴”と似た感覚。
しかし今回は、学園内に小規模ながら“異常空間”が発生しているようだ。
「……くっ、やつらか」
黒い霧の中心に、一体の影が浮かぶ。
異能者のような輪郭を持ちながら、人間離れした動きでこちらを睨む。
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御影詩音が駆けつける。
手には水流の刃を握り、緊張した表情で透真を見た。
「篠原くん、気をつけて!
この影……普通の生徒じゃない!」
「わかってる。フェトラル、準備はいいな?」
『準備完了。主よ、心して戦え』
黒光の鎖が腕に巻きつき、透真の意思を待つ。
鎖の振動が緊張を伝え、呼吸を整えさせる。
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影が一気に襲いかかる。
触手のように伸びた影が、地面を這い、透真と詩音を包囲する。
「詩音、俺が中央を抑える! お前は側面から攻撃だ!」
鎖を振り回すと、影が絡め取られ、地面に叩きつけられる。
しかし、触手は瞬時に再生し、全方向から攻撃が来る。
昨日の模擬戦以上の負荷が、透真の肉体に襲う。
(……くっ、これが、現実の戦いか!)
詩音の水流が触手を切り裂き、鎖と水の連携で少しずつ空間を支配していく。
だが、影はその度に形を変え、隙を作さない。
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透真は鎖の意志と完全に同調し、宙を飛ぶ。
鎖を伸ばして触手を絡め取り、反撃に転じる。
フェトラルの光は闇を裂き、触手を絡め取る度に空間が振動する。
『……主よ、力を解放せよ』
黒光が増幅し、鎖が暴走気味に伸び、影の中心に直撃する。
影が悲鳴を上げ、裂けるように消滅。
呼吸を整える透真と詩音。
しかし、その背後でさらに大きな闇が蠢いている。
(……これ、一つじゃなかったのか……!)
黒い霧が複数方向に拡散し、学園内の異常空間は拡大し始めていた。
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夜、寮の屋上。
透真はフェトラルを握り、遠くの校舎を見つめる。
胸の奥で、未知の敵への緊張と期待が入り混じる。
「……まだ始まったばかりだな」
フェトラルが微かに光り、腕を締め付ける感覚が伝わる。
まるで、戦いの始まりを告げる鐘のようだった。
無能力者だった少年――篠原透真は、鎖と仲間を信じ、未知の脅威に立ち向かう覚悟を決めた。
闇影の接近は、まだ序章に過ぎない――
七つの宝具を巡る戦いは、徐々に現実のものとなりつつあった。
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