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七つの宝具(レリック)戦記 ―Re:Lyc―  作者: じょんどぅ


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第一章 第6話「雷帝の試練」



---


 翌週。

 アルカディア学園の校庭は、異能の光で埋め尽くされていた。

 今日は一年生全員を対象とした**個別模擬戦**の日。

 学園の戦闘教官が見守る中、能力者同士が実戦形式で戦う――言わば、初の“真剣勝負”だ。


(ついに……天城と戦う日か)


 胸の奥が熱くなる。

 あの日、雷帝と呼ばれる天城零司に打ちのめされた俺は、今度こそ“戦える力”を手に入れた。

 フェトラルとの契約――その完全制御を得た今、全力で挑める。


---


 試合開始の号令と共に、天城が目の前に立った。

 金の瞳が俺を射抜く。

 周囲の空気が微かに震え、雷の匂いが漂う。


「お前、しっかり鎖を使いこなしてるな」


 軽い口調だが、その視線は殺気に満ちている。

 周囲の生徒たちは息を呑み、戦いの開始を見守った。


「行くぞ、透真!」


 天城が足を踏み出す。

 瞬間、空気が裂けるような速さで雷光が走った。


「くっ……!」


 俺は腕を振るい、フェトラルを展開する。

 黒い鎖が宙に舞い、雷光を絡め取る。

 だが、雷の一部が鎖をすり抜け、肩をかすめた。


「やるな……」


 天城はにやりと笑い、次の瞬間には前方に高速移動していた。

 俺は鎖を操りつつ、全身で攻撃と防御を切り替える。

 フェトラルの黒光が宙で渦を描き、天城の雷撃を縛る。

 しかし速度差は依然として圧倒的だ。


---


 俺の心は焦る。

 昨日の模擬戦とは違い、相手は圧倒的な才能と経験を持つ天城。

 鎖を全力で伸ばしても、速度や連携で完全に防ぎ切れない。


(……だめだ、まだ力不足だ……)


 フェトラルが脈動し、頭の奥に低い声が響く。


『主よ、我の力を解放せよ。制御を恐れるな』


 呼吸を整え、鎖の意識を全て集中する。

 黒光の鎖が腕から全身に伸び、地面に絡みつき、天城の足元を捉える。

 触れるだけで雷の電流を吸収し、彼の動きを一瞬止めた。


「これで……どうだ!」


 反撃の隙を見つけ、鎖を跳ね上げて雷光を絡め取り、地面に叩きつける。

 天城の金色の瞳が一瞬驚きに変わった。


「……面白い。お前、昨日の俺の攻撃を受けても立ってた理由が分かった」


 天城が姿勢を低くし、全身に雷光を纏う。

 周囲の空気が破裂音のように震える。


「――行くぞ、透真!」


 雷帝の一撃が全力で襲いかかる。

 俺は鎖を使い、防御と攻撃を同時に行う。

 鎖の末端が彼の雷撃を絡め取り、反動を利用して反撃する。

 その瞬間、足元に小さな亀裂が走り、地面が光を帯びた。


---


 戦いは次第に加速する。

 互いに攻撃と防御を繰り返し、周囲の生徒たちは息を呑む。

 鎖を使った戦法は予想外で、天城も完全には読めない。

 フェトラルは意思を持ち、俺の考えを先読みして動くように感じた。


(……これが、契約の力か……!)


 俺の中で何かが確かに変わった。

 恐怖や迷いは消え、集中と判断力だけが残る。

 フェトラルはただの武具ではなく、戦友として俺の意志に応えてくれていた。


---


 だが、完全制御には代償があった。

 全力で鎖を動かす度、肩や腕の筋肉が悲鳴を上げ、呼吸が乱れる。

 頭の奥で、微かな眩暈と吐き気が襲う。

 これが“覚醒の代償”――力を使う代わりに肉体と精神に負荷がかかる現実だ。


「……ふっ……まだだ……負けられない」


 再び鎖を握る。

 フェトラルが意志を返すように輝き、宙を走る。

 その瞬間、天城の動きが一瞬止まった。

 雷光を絡め取った鎖が反撃となり、彼の肩をかすめる。


「……なるほどな、やはり面白い!」


 天城が笑う。

 それは決して侮蔑ではなく、戦士同士の認め合う笑みだった。


---


 試合終了のホイッスルが鳴る。

 俺は倒れこみ、呼吸を整える。

 肩や腕には痛みが走るが、胸の奥の高揚感がそれを上回る。


 天城が近づき、俺の肩を叩いた。


「お前……強くなったな。だがまだ、俺に勝てる力ではない。

 だが次は――お前がどこまで戦えるか、楽しみにしてやる」


 金の瞳が輝き、彼は去っていった。

 その背中を見つめながら、俺は拳を握る。


(フェトラル……俺たちは、もっと強くなる。

 絶対に――誰も守れなかった過去を繰り返さないために)


---


 夕暮れの校庭で、御影詩音が微笑む。


「篠原くん……やっぱり、あなたはすごい」


「……まだまだだ。でも、これからだ。俺たちなら、やれる」


 黒いフェトラルが腕に巻きつき、微かに光る。

 それは、契約者としての誓いと、戦士としての決意の象徴だった。


 無能力と呼ばれた少年――透真の、戦いの幕は今、完全に開かれたのだった。


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