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七つの宝具(レリック)戦記 ―Re:Lyc―  作者: じょんどぅ


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第一章 第5話「覚醒の代償」



---


 朝の光が窓から差し込む。

 透真――篠原透真の右手首には、黒いフェトラルの痕が微かに光る。

 完全契約を果たした昨夜から、胸の奥に熱い感覚が残ったままだ。


(……力って、こういう感覚なのか)


 それは爽快感と同時に、どこか不安な重みもあった。

 フェトラルは完全に俺の意思に応じて動く。

 だが、これまでの暴走の記憶が、少しだけ心を縛る。


---


 今日は、学園の“初級実戦訓練”。

 一年生全員がペアになり、模擬戦を行う日だ。

 教室や訓練場の壁には透明な障壁が設置され、力の出力が安全に制御されているとはいえ、全力を出せば痛みは伴う。


「篠原、準備はいい?」


 御影詩音が隣に立つ。水色の瞳が真剣だ。

 彼女の指先から淡く光る水流が揺れ、戦闘態勢に入っている。


「……ああ」


 俺はフェトラルを呼び出す。

 黒い鎖が腕に巻きつき、意志通りに動いた。

 昨日よりも確実に、俺の手の延長として存在している。


---


 敵チームの先頭、火焔使いの少年が挑発してくる。

 手から赤い火の玉を作り、俺たちに向かって投げつける。


「よし、私に任せて!」


 詩音が水の刃を放ち、火焔の球を打ち消す。

 しかし敵はさらに増援を送り、火、風、氷――多方向から攻撃が集中する。


(くっ……全部対応するのか……!)


 鎖が反応する。

 黒光の鎖が宙を舞い、飛来する攻撃を絡め取り、地面に叩きつける。

 だが、速度、力、精度――全てに全力を要求され、体中の神経が張り裂けそうだ。


 額には汗が滲み、腕が重く、心臓が破裂しそうなほど早鐘を打つ。

 フェトラルはまだ“力の一部”しか引き出しておらず、完全な出力ではない。

 だが、意識を集中すればするほど、身体の限界が近づく。


---


 敵の集中攻撃が再び迫る。

 左腕に鎖を回転させ、攻撃を防ぐ。

 だが、腕の関節に痛みが走り、膝が震えた。


(く……限界か……?)


 目の前に詩音が水流の盾を作り、俺を守ろうとする。

 しかし俺は、彼女を巻き込みたくないと思った瞬間――


「……フェトラル! もっと力を貸せ!」


 鎖が腕から全身に回り、まるで筋肉のように締め付ける。

 反応が遅れる攻撃を絡め取り、空中で投げ返す。

 その瞬間、肩に激痛が走り、息が止まった。


(……やっぱり、代償が……)


 体の奥、心臓の周囲が熱く疼く。

 血の巡りが急に早くなり、手足が震える。

 力を使うほど、肉体と精神に負荷がかかるのだ。


 だが、目の前の敵――火焔使いが、再び詩音に向かって炎を放つ。

 俺は迷わず、鎖を解放する。


「行くぞ、詩音!」


 鎖が敵の攻撃を絡め取り、地面に叩きつける。

 その衝撃で床が割れ、土煙が舞う。

 息を切らしながらも、敵は動きを止めた。


「……はぁ、はぁ……なんとか……」


 鎖を腕から離すと、体中に疲労が押し寄せる。

 息が上がり、手足は鉛のように重い。

 フェトラルの力を使う代償は、間違いなく現実的だった。


---


 戦闘後、寮の自室で倒れ込む。

 鎖は腕から外れ、光を微かに残す。

 肩や腰の痛み、全身の疲労感。

 だが、心は清々しかった。


(……これが、力を持つということか……)


 思えば昨日までは、何もできなかった。

 だが今は、少なくとも攻撃を防ぎ、仲間を守ることができた。

 肉体は悲鳴を上げているが、心は確かに成長している。


 そのとき、窓の外に黒い影が映った。

 遠くに佇む黒咲怜二の姿。

 俺を見つめるその目には、好奇と興味――そして、何か暗い予兆が含まれていた。


(……まだ、戦いは始まったばかりだ)


 フェトラルを握り、透真は誓う。

 どんな代償が待っていようとも、仲間を守る力を手に入れる――

 そのために、無能力者と呼ばれた少年は、戦士としての道を歩み始めるのだった。


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