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二話 灯せない過去

転校生・藤原霞は、過去に「中学生探偵」として活動していたことから傷つき、誰にも知られない新しい町で静かに生きようとしていた。だが、転校先の高校で出会った同じく“探偵”を名乗る少女・一ノ瀬灯との出会いが、霞の止まった時間を少しずつ動かし始める──

自分を隠して生きる少女が、再び「自分の好きだったこと」と向き合う、そんな物語


ー読む前にー

あまり推理要素はないです

今後も推理といった推理はないかも

つたない文かもしれませんが全部読んでいただけると幸いです

ーー次の日ーー

あの人って、結局どこのクラスなんだろ?

聞いとけばよかったな〜。


「やあ」


突然、後ろから話しかけられた。


「うわっ、誰!?」

「誰とは失礼な。私だよ」

「え? 灯?どこから来たの??」

「……え?」


なぜか灯さんが不思議そうな顔をして、私も思わず、


「え?」


……。

少し沈黙のあと、灯さんが口を開いた。


「……あのさ、私、君の——二つ後ろの席なんだけど?」

「えええ!? 気づかなかった!」

「君が今まで周りを全く見てなかっただけでしょ。……そういや、再開したの?」

「なにを?」

「探偵業」

「あー、いや……まだ自信があまり持てなくて」

「そっか。まあ、ゆっくりでいいさ」


「ねえねえ!」


突然、誰かが灯さんに話しかけてきた。


「君が探偵をやってるっていう子?」

「そうだけど、何か用?」

「私、高橋エミって言います! ちょっと依頼があってきました!」

「内容によっては引き受けよう」


依頼かあ。

灯さんが謎を解くところ、見てみたいな〜。

どんな依頼なんだろ? 事件かな……?


「飼い猫を探してください!!!!」


ん???


「……まあ、いいよ、報酬はもらうけど」

「いくらなの?」

「猫探すならかなりの時間がいる」

「やっといて、私の宿題」

「うわ嫌な対価!てか私も探すんだけど!」

「筆跡は変えとけよー」


ーー放課後ーー


「じゃあ、私は自分の家のほう探してくるから、反対側よろしく!」


「行っちゃった……」

「というか、あんな依頼も受けるの?」

「探偵ってのは、だいたい暇なんだ。こういうのを生業としてる人も、大体は浮気調査とかが主だろう」

「え〜……ちょっと残念」

「……というか霞、ついてくるんだ」

「まあ、猫探すなら人が多いほうがいいでしょ!」

「それもそうか」


この人と一緒にいれば、何か掴めるかもしれない……


「あと、この件を引き受けたのは、暇だったからって理由だけではない」

「そうなの?」

「最近この町で、猫とか小動物の遺体がいくつか発見されてる」

「うわぁ……。でもそれと、今回の猫探しがどう関係あるの?」

「人を殺すような人間って、大抵は最初に小動物を殺すことが多いんだ。快楽殺人者とか、無差別殺人鬼とかね。まあ、全員がそうとは限らないし、なぜそうするかなんて、犯罪者の気持ちは知ったことじゃないけど」

「へぇ……。じゃあ今回のも、もしかしたら関係してるかもしれないってこと?」

「あくまでも憶測。でも、いるなら捕まえたい。私は、無差別とか快楽殺人とか、そういう何も考えずに自分が楽しむために人を殺すやつは……大っ嫌いだ」


とてもひどい顔をしていた。

ただの「嫌い」じゃない気がする……


「とにかく——探すしかないね」



「いたー?」

「どこにもいないー」


かれこれ3時間ほど探していたが、何も見つからなかった。

あたりはもう暗くなっていた。


(灯のスマホから通知音)


「あー、向こうも見つからないってさ」

「まじかー……」

「今日はもう遅いし、帰ろっか」

「……そうだね」


そう言って、私たちは歩き出した。


「そういや灯さんはさ——」

「灯でいいよ」

「あ、うん。じゃあ灯はさ、なんで探偵やってるの?」


「ああ、聞きたいよね。……少し長くなるけど……っ!?」


「どうしたの? ……あっ!」


灯が突然走り出した。


「待って! 何があったの?」


灯は公園の横に植えてある木の前で立ち止まった。


「何かあるの?」

「上……見てみな」


「……!?」

そこには、猫が首を紐で絞められた状態で吊るされていた。出血もしている。


「まさか……エミさんの猫じゃないよね……?」

「教えてもらった特徴は……グレーで、毛が長い」


完全に一致していた。


「少し調べてみるか」


そう言って、灯さんは滴っていた血を指で少し触った。


「血は乾いてない。多分、そんなに時間は経ってない」

「霞、スマホ貸すからエミさんに電話して。私はもう少し調べる」

「わかった」


……


「探偵? なにかあった?」

「あ、私、探偵じゃなくて霞です」

「ああ、一緒に探してくれてた子か。ありがとう。何か見つかったの?」

「うん、見つけたけど……」


「けど?」


言いにくい。でも言わなくちゃ。


「残念だけど……街の真ん中の公園の木で、遺体で発見されました」

「……っ」


「心中を察します。でも、明らかに他殺なんです。だから、犯人を私たちは探しています」

「ありがとう。でも多分、危険だからやめておいたほうが……」

「ううん。気持ちはわかるけど、やめるわけにはいかないんだ。なんたって、それが“仕事”だから」

「ありがとう……」


「少し話を聞きたいんだけど。ここ最近、この町で小動物の遺体が見つかる事件が起きてるのは知ってる?」

「うん。噂で聞いたことある。だから、うちの猫も……もしかしたらって思ってたけど……」


やっぱり他殺なのは確実、かな。


「あと、なんで逃げ出しちゃったの?」

「本当に情けない話だけど、窓が空いてたんだよね……」


エミさんの猫を“狙った”ってわけじゃなさそう。

やっぱり無差別に殺してるのか……


「ありがとう。灯と一緒に調べてみるね」

「こっちこそありがとう。私もそっち向かうね。自分の不注意で招いたことだし」

「わかった。気をつけてね、じゃあまた後で」

「そっちもね。気をつけて」


……


「灯さん! 何かわかった?」

「霞。こういう快楽殺人ってのはね、大抵その死体を見た人の反応も“楽しむ”んだ。本当に趣味が悪い」

「つまり……どういうこと?」

「ずっといるんだろ。あの物陰らへんに」


灯さんは、現場の木の少し奥にある林を指差した。


!?

……一人の男が出てきた。手には……ナイフ!?


「まずい。霞、逃げるよ!」


私たちは走った。かなり遠くまで逃げられた。


「ここまで来れば大丈夫だろ。早く警察呼ぼう。一応、もう少し離れておくか」

「……そうだね」


……少し歩いた時、私は突然、足の力が抜けるような——崖に突き落とされるような感覚がした。

そして思い出した。


「やばい!! あの現場にエミさんが来るんだった!」

「え? まずい、急いで行くぞ!」


また、私たちは無我夢中で走った。

でもさっき走ったせいで、足が重い……。でも、早くしないと……!


遠くに、さっきの男がナイフを持って、誰かに向けているのが見えた。

……エミさんだ。エミさんが狙われてる!


「おい! ナイフをしまえ!!」


灯が叫んだ。


「探偵、助けて……!」


エミさんも震えた声で、助けを求めていた。


私が追いついたとき、灯さんがつぶやいた。


「だから、“過去”や“動機”があまりないのに快楽で殺害してる奴は嫌いなんだ……」


そのすぐあと、男がエミさんに飛びかかった。


「逃げて!!」


私は叫んだが、恐怖で足がすくんでいたエミさんは動けなかった。

そして、私も……。情けないな。


「当たれっ!」


その時、灯さんが男に向かって石を投げた。


「っ!?」


その石は男の頭に命中し、少し怯んだ。


「今だ! 取り押さえるぞ!」


何かに押されるようにして、私も男を押さえつけに行った。

……が、男はすでに気絶していた。


「ふぅ。……流石にびびったわ」


灯が座り込んだ。


「灯、無事!? エミさんも!」


二人とも、特に怪我はなかった。


「ありがとう……。二人とも、助けてくれて」

「全然大丈夫だよ。これが仕事だからね」


灯が励ますように言った。


「仕事……かあ」


その時、


「大丈夫ですか!!」


警察が駆けつけてくれた。

その後は警察に事情を話し、現場は解散となった。


「なんで灯さん、表彰断ったの?」

「まあ……あんまり公表されたくないし」

「? まあいいや。お疲れ様」

「お疲れ」


よし、今だ。言おう——私も、次へ進むんだ。


「私……灯の助手になりたい!」


「ん? 君は探偵になりたいんじゃないの?」

「急には無理だと思う。君を見ながら、助け合いながら進んでいきたいの」

「私はそんなにすごい探偵じゃないけどな。給料出せないし。それでもいいのかい?」

「うん! 大丈夫!」


「じゃあ、助手になりたい君に私から依頼しよう」

「唐突だね」

「——私の過去と、私について知ってくれ。それを受け入れるのなら、助手にする」



あの子は、私の“過去”を見てどう思うだろう……

私のことを知って、どう思うだろう。


“過去”ってものは、非情なものだ——

最後までご視聴ありがとうございます

一ノ瀬灯の過去とは何か?なにを秘めているのか?

次回にご期待をお願いします

※不定期更新です(すみません)

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