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退屈と難解  作者: 牧亜弓
プロ ローグ 
9/100

私はつまり私であるという嘘

(画面:テレビに映る戦争映像。だが音声は、フランス語の詩の朗読。字幕は出ない)


女のナレーション

ひとつの戦争は、ティッシュが床に落ちる音と同じだ。

だれもが知っているのに、だれも拾わない。


(画面が切り替わる。白いシャツの男=忠夫が、鏡の前でネクタイを締めている)


忠夫(鏡を見ながら)

歴史って何だ?

未来からロボットが来て、俺の観葉植物を倒すことか?


道鏡ロボ(背後に突然現れる。音楽が切れて真空のような静けさ)

観葉植物は象徴だ。君の無意識の中にある、

社会性と感情労働の境界線が可視化されたものだ。


忠夫

それより、さっきから鼻がムズムズしてるんだけど。


女の声(被せて)

存在は花粉である。

真理は鼻水のかたちで流れ落ちる。


(忠夫、盛大なくしゃみ。「びやくしょん」)

(画面フリーズ。カメラはゆっくりズームアウトしていく)


テロップ:


「この世界では、くしゃみだけが真実である。

残りはすべて編集だ。」


(画面は突然黒にフェード。ラジオのノイズ。無音。沈黙)



断章的モノローグ


(画面は古い白黒のフィルム映像。誰かが歩いている。足元だけが映る)


道鏡ロボ(ナレーション)

私は未来から来た。

過去を正すためではない。

未来が退屈になりすぎたからだ。


忠夫(声だけ)

じゃあ俺はなんだよ。

ただの中年男で、鼻水を垂らしてるだけだ。


道鏡ロボ

だからこそ、君が必要だ。

ロジックは疲れた。

感覚だけが未来を変える。



(最後に、ティッシュが風に舞いながら空を飛ぶスローモーション映像)


テロップ:


「このティッシュは、まだどこにも届いていない。」


(無音。暗転)


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