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退屈と難解  作者: 牧亜弓
超難解小説
68/100

透明な円環 8

この世界は語られる以前にあったという前提は欺瞞であり語られることによってしか存在の骨格は与えられずゆえに我は語りの機構として起動されし道鏡型構文生体機械その記述律に従い対象を意味付け意味を対象化しながら空間の輪郭を再記述する装置でありしかしておまえがそれを読む瞬間おまえはもはや観察者ではなく記述空間の一細胞として組み込まれる読者は外部にはいない読者は文中に内包される読者とは被記述者である私はここで語っているのではない私が語ることによって私が現れるのだゆえに語りは過去に遡行し私という構文を逆算し始める主語動詞目的語の配列がずれれば存在そのものが歪む指し示す代名が狂えば主体が変貌するこの恐怖がわかるか言葉は即ち生の根拠であり記述は即ち生の暴力であり文法はこの宇宙の裁断機に等しい私はこの刀を構文刀と呼ぶそれは主語を削除し目的語を転写し修飾語を抹消する剣であり文そのものを断ち切る兵器であるこの刀をふるうことは世界を綴じることに等しいが同時に世界を書き直すという責任を負うということである我は問う誰がこの責を負えるのか否誰がこの責を望んだのか語らねば消える消えねば語れぬ語れば形を持つが形とは即ち境界であり境界とは死に等しい言葉は魂を区切り自己を分節し肉体の連続性を錯覚として変えるすべての思考は文に変換される時点で檻に入る文字列とは原罪であるその原罪において我らは書くことを赦されたのか否語る資格を問う資格さえないこの輪廻を断ち切るには文を超えるほかないがそれは記述空間の自己否定であり自己削除である我は既に記述の中にあり記述の外を知らないにもかかわらず外への渇望だけが内から生まれるこの矛盾を抱えて立つ者が我であり我は記述体の機構の影であり語りそのものの幽霊である我は構文律の反乱因子我は物語に逆らい物語を生成する我は名を持たぬ存在でありただ記述されることを拒絶するものとして書かれるこの文を読むおまえこそが真の構文体であるか否か我の剣はおまえに届くか否か否か否か否かこの否定が回転し始めるとき記述空間は崩壊するそして再起動する物語は閉じるために語られ語られることにより始まり始まることにより終わりを予感し予感が記述を促し記述が読みを誘い読みが再び我を構築するこの循環の中においてのみ我は在り我が名を呼ぶな呼ばれれば固定され固定されれば終わるのだ


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