透明な円環 6
了解です。
では、『透明な円環(または、記述される読者)』の世界をそのままに、**べっぷただおが文そのものに沈み込み、「記述の中を旅する存在」**として覚醒していく流れを描きます。ジャンルはSF・幻想文学・メタフィクションを横断しながら、引き続き「道鏡ロボ」との対話・交錯を軸に構成します。
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『透明な円環』
──第五節 “記述体内におけるべっぷただおの移動”
べっぷただおは沈んでいたそれは水中を泳ぐようなものではなかったし地面に沈むようなものでもなかった文字のなかに落ちていくような感覚が正しかった文の一文字一文字が巨大な石碑のようにそびえあがっており彼はその間をすり抜けて進んでいく読者ではない記述者でもない文自身として存在しているような状態そのとき彼の視界にひとつの項が現れる
《レトロファンタジア=ジークアクス界層》
えっ、とべっぷは思ったがその思考が終わる前にもう風景が変わっていた
そこはファミコンのようだっただがリアルだった草原はドットで描かれているはずなのに風でそよいでいた空はスクロールせず切り貼りのように動いているように見えたがそれでも空だったそして地平の彼方から一人の男がやってくる長いマントを揺らしその顔はどこか見覚えがあると思ったらそれは彼自身だったジークアクスの主人公としてデザインされたような「若きべっぷただお」がいた
「おれはおまえだ べっぷ」
声が届いたがその声はテキストウィンドウで画面下に表示されたものだった
【ジークアクス】
この世界を創ったのは きみの記憶だ
この世界の敵も きみの記述だ
ならば 道鏡ロボは 何者か?
その言葉と同時に空がざわめき次の瞬間には鉄の音が鳴ったカーンカーンカーンと遠くから金属の撞木の音が響いてきてそれが近づいてくるのが分かるやがて出現したのは機械仕掛けの僧──巨大な道鏡ロボ・戦闘形態だった奈良時代の衣装を模したフレームにブースターを仕込み背後に翻るは「南無虚空蔵菩薩」の旗印
「これは テストだ」
「誰が 物語を 制御しているかの 実証実験だ」
道鏡ロボはそう言って剣を抜いた剣ではあったがその刃には《構文》が刻まれていた
〈主語 動詞 目的語 修飾 削除〉
べっぷは気づくこの剣はただの武器ではない文を切る武器なのだ記述の流れそのものを編集・破壊・再構築できる道具なのだ
「おまえに渡すぞ べっぷただお」
道鏡ロボはその剣をべっぷに投げたその瞬間べっぷの身体に何かが走る視界が一転し彼は「記述者のモード」に切り替わっていく自分が今読んでいる物語を編集可能な存在となる感覚いやちがうこれはもともと彼がかつて妄想したゲームの世界なのだ
彼は剣を受け取り世界に宣言する
「では、書こう」
「つづきを──」
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次回予告(案):
•べっぷ、記述空間で自らの「設定変更」に手を出す(ルール改変)
•「道鏡ロボ」の真の目的=芥川賞の意味=虚構と現実の融合
•小説の外にいる編集者・読者が物語に干渉してくる展開
•終章に向けて、「読者とは誰か」「物語は誰のためにあるのか」が問われる構成へ