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退屈と難解  作者: 牧亜弓
プロ ローグ 
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別府忠夫 インタビュー

「びやくしょんと存在のあいだで」


(聞き手=架空文芸編集部)


──忠夫さん、今日はお時間ありがとうございます。


いえ、こちらこそ。ちょうどくしゃみも一段落したところでね。花粉の季節と人生の本質って、たいてい重なる気がするんです。ほら、予定していないのに急に来るじゃないですか、くしゃみも人生も。


──冒頭から深いですね。まずお聞きしたいのは、なぜいつもバルコニーに出てしまうのか、という点です。


ああ、それは…いや、特に意味はないんです。なんか、外に出たいなって思うと、玄関じゃなくてバルコニーなんですよね。バルコニーって、外と内のちょうど真ん中にいるような場所で…人生そのものなんじゃないかな。半歩外、半歩内。いつだって風が吹いてて、何かが倒れる。そういう場所に身を置いてると、「今、生きてるな」って思うんですよ。


──倒れると言えば、ガジュマル(カジュマル?)の件、毎回倒れてますよね。


はい。あれはもう、相棒みたいなもんで。こっちが人生でよろけると、あっちも倒れるんです。たぶん、気を遣ってるんでしょうね。僕が鼻水を垂らしてるときに限って、転がってきたりするんですよ。わかってるなあ、って思います。


──日常での“闘い”っていうのは、どういう形で表れてますか?


ティッシュがゴミ箱に入らなかったときとかですね。あれって、もう完全に重力との戦いなんですよ。自分の投げた軌道、思い、角度、風の流れ、全部が絡み合って、結果として「失敗」に帰結する。その瞬間、自分の存在がちっぽけに思えて。でも、僕はそこからもう一度、拾って入れ直す。人生って、そういうことじゃないですか?


──近年は道鏡ロボという新たな脅威も現れましたが…。


ええ、彼は象徴なんですよね。人間が制御できると思ってた“知性”や“歴史”が、暴走して目の前に現れる。僕はただ、ガジュマルを支えながら、くしゃみをしてるだけですけどね。でも、その姿勢が、世界に対して僕が出せる唯一の答えかもしれないと思ってます。


──最後に、今後の目標があれば。


うーん…ティッシュを一発でゴミ箱に入れること。あと、ガジュマルに「倒れなくてもいいんだよ」って伝えたい。

そうやって、今日をもう少しだけ、静かに過ごしたいですね。


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