56話
突然の事件に巻き込まれた二人、二人のずっと目の先にはナイフを人質に突きつけている男が居た。距離にしてみると近くはない、逃げようと思えば余裕で逃げられる距離だ。だからここにいる兄は妹を連れて逃げようとした、が妹はそれを拒んだ、なぜならその人質は彼女の中学時代の親友なのだったからだ……。
「美咲を助けなきゃ!お兄ちゃん!」
こよいが何かに急かされるようにそう言った、
「って言っても、お前……どうするんだよこよい」
「それは……」
次の言葉に詰まるこいつのことを真剣に思って自分の思っていることを並べていく、
「いいか、確かに友達が目の前で危険にさらされていて助けたいと思う、その気持ちは良いと思うけどな、俺たちみたいな奴らが下手にあの男を刺激したら美咲ちゃんはどうなると思う」
「・・・・・・」
「あんなにナイフを喉に突きつけていているんだから逆に刺さらないよう注意しているはずなんだ、だから俺が考えるには、そのまま気をつけてくれないと逆に首から血が流れる事になるっつーかあの位置は防犯カメラに丸映りじゃないか?はっ、バッカじゃねーの、そして誰も店員が来ねーのはどういうことだ?お客置いて逃げてんのか?」
どうもさっきからおかしい、少し俺もイライラしてきた。あの男は何がしたいんだ?人質を取って金が欲しいのか?だったらなんでそんな場所にいるんだ?レジに行けば良いだろうが。
そんな事を思っていると一人の男性が男に何かを言った、
「おいお前!一体なにがしたいんだ!その子を離しなさい!」
すると男は、
「う、うるせぇ!これは復讐だ!ここの店長へのな!」
と言った、復讐?一体何があったんだ、誰か聞きだせ、話で解決するならさっさとそうしろ。
「一体店長に何をされたんだ?」
その男性は俺の気持ちを代弁するかのように男に近づきそう尋ねた。
しかし、近づいて来た事に対して男は、
「おい!近づくなっ!こっこいつの喉が切り裂かれるぞ……!」
なんてことを言ったもんだから男性は一歩後すがりをした。
それから男はこう続ける、
「おい!警察なんて呼んだら殺すまでは行かなくともこの子の首に切り傷を入れるからな!!」
それは防犯カメラに対して発した言葉だった、なるほどだからそこにいたんだな、俺は少し納得した。が、さっき言っていた復讐とは何なのか、俺はそれが気になり始めた。
そんな時俺の携帯が鳴った、この着信音は電話だ、俺は携帯を開き、相手の名前を見てハッとして、急いで通話ボタンを押してそれを耳に当てた。すると、
「有ちゃん大丈夫?!今どこ!?ってかホントに大丈夫?!」
と俺のよく知る大好きな人からそんな言葉をかけられた。二度も大丈夫?と聞いてくる辺り、本当に心配してくれているんだと少し嬉しくなった。
「うん、別に大丈夫だよ、それから今お菓子売り場にいる、あと、こよいもここに」
そう答えると、
「今ね、そこで事件が起こってるの!だから有ちゃんは早くそこから避難して!」
と、言われた。しかしそれが出来ない、その理由も付け加えてこういった。
「いや、こよいのやつが離れたがらないんだ……少し咲月さんからも言ってやってくれないかな?」
「わ、分かった!だから早く代わって」
それから俺はこよいに代わるように言って、電話口にこよいを出した。
「こよいちゃん、いいから早くそこから離れて」
「やだ、こよいは友達を見捨てられないよ」
「……それって一体どういうこと?」
「咲月姉少し、善兄に代わってくれる?これは言わないといけないってのがこよいにあるの」
そう言って少しの間があり、こよいは今起きている事件について話し出した、恐らく今話している相手は善人だろう、そして電話を切る寸前にこよいはこう言い残した、
「その人質、美咲なの……お願い、助けてあげて」
それからこよいは電話を切り、俺にそれを渡す、そして俺は一瞬、しまった迂闊だったと自分を一喝し、素早く犯人の男の方を見た、するとそこに映っていたのは……。
ぐったりとしている美咲ちゃんと、違う!俺はそんなつもりじゃなかった!と、大声を張って音を立てナイフを床に捨てる男、そしてそのナイフを遠くに蹴っ飛ばし、救急車を呼べと叫ぶ男性だった。
そしてその次の瞬間、俺はうそだろ……と思わず声を漏らした。
男性が蹴ったそのナイフはこちらへと滑り込んできた、そのナイフがどんな形状なのか細かく分かるほどにまで。そしてそれを見て俺は声を漏らしたのだった、なぜならそのナイフの先端に赤い血が付いていたのだから……。
感想ください、お願いします。
また深夜から書いているのでクオリティが保障できません(現在26時43分)
では、眠いのでこれにて失礼します。