4話
本編スタートです
姫川咲月、彼女は周りの男子から注目を浴びている女子だ、それゆえに彼女の席の隣に決まった男子は座っているだけで顔が赤くなることがある。『一万円でその席を代わってくれ!』なんてこともある。
大抵の男子は彼女のことが好きであり、それゆえ、とある女子が頑張って男子に告白しても『俺、好きな人が居るんだ、だから…ごめん』と言われフラれてしまうことが多々ある。結果的に、姫川咲月のせいで告白が失敗した女子は校内のおそよ半分に近いんだとか……。
そして今その咲月は有二に告白し、OKを貰った。
他の男子がコレを知ったらどうなるのだろうか……。
オムライスを食べ、喜びを分かち合い、しばらくお話をしたところで有二は帰ろうとした。
が、咲月に止められた。泊まっていきなよ。そう言われたが、それでも悪いからと帰ろうとしたら今度はまさかの手刀が飛んでき、有二はこの日2度目の気絶を経験することになった。
それからの事、咲月は写真撮ったりツーショット撮ったりと【なんでもあり】の、この状況を楽しんだ……それより有二は大丈夫なのだろうか。
やりたい放題していると咲月はあることに気づく。
「それにしても有二君って呼ぶのもあれだしな~?…あっそうだ有ちゃんでいいんじゃない?!そうだよ有ちゃんが良いよー。うんうんそうしようーそうしよう~」
そう呼ぼうと決めた咲月は有ちゃん有ちゃんと嬉しそうに呟くと有二の隣で眠りについた……。
が、実際は恥ずかしくて恥ずかしくてなかなか眠れずにいたんだとか……。
◆
別の場所で、その事件は起こっていた。
有二が帰らない(帰れない)と言うことは当然、あの人が心配していたのだった。
「お兄ちゃん…帰ってこないな…」
テーブルの上にはお茶碗が2つ、そして台所には美味しそうなすき焼きの鍋が置いてあった。
こよいはまだ夕食を終えていない。ずっと……ずっと有二の帰りを待っていた。
ケータイで連絡を取ろうとしたが……全く返事が返ってこない。
元々2人で暮らしてるこの空間に一人ぼっち……こよいは不安で不安でしょうがなかった。
お兄ちゃんにもしもの事があったらどうしよう……。一人になるのは寂しい。
◆
平沢こよい、そして有二。この2人の親は実はお金の問題で育児を放棄し家を出て行ってしまった。
まだ2人が幼い時だったため有二もこよいも親の顔は知らないでいる。と、言うよりどんな顔だか分からないの方がしっくり来るかもしれない。
それから2人は母方の親に預けられ育った。
それから10数年経ったある日、有二は高校へ行ったら1人生活をすると言い出した。
それは自分がこの家庭において迷惑な存在なのだと判断した上での意見だった。
それに自分が出て行けばこよいも少しは俺がいなくなった分、裕福な生活が出来ると有二は思っていたのだ。
でもそれは違った…こよいにとっての幸せは有二と居ることであり、それを聞いたこよいは「こよいも行く!」と有二に言った……。いや、叫んだそうだ。
その意見を有二は反対した。1人だったらあの仕送りで何とかなる。でも2人だとどうだろう。
そう考えての反対だった。
そんな有二にこよいはご飯は?洗濯は家事とかちゃんとできるの?
と核を突いた質問し、その質問に言葉を詰まらせる兄に、ほぼ強引、いや、10割がた強引についていくことに成功した。
そうと決まればこよいは2人生活の準備を始めた。
勉強を放り出してまで料理修行に励んだ。もちろん有二のために……。
始めは分量を間違えたりやけどをしたり指を切ったりと散々だったのだがそれでもこよいはくじけなかった…ただ有二の【ありがとう】が聞きたいがために……。
◆
そして今がある、問題になっていたお金については何とか解決した。
こよいが手料理を作ってくれるおかげで安上がりで済んだのだ。わざわざ値引きシールの貼ってある弁当を買わなくても済んだ。
そういった日々を送り、そして今に至るというわけだ。
こよいは遠くなる意識を必死にこらえていた。
「まだ…帰ってこない……」
あれからどれくらい時間が経っただろう。ふと時計に目をやると短い針が12を指していた。
涙が流れてきた…すぐに拭き取った。
でないと有二が帰ってきたときに笑顔で迎えることが出来ないからだ……それでも涙は止まらなかった……。
「遅いなぁ、お兄ちゃん………」
溢れる涙を拭い、泣き声を抑えながらこよいは夜中遅くまで待ち続けた。
その部屋にはずっと1人孤独な少女の泣き声が響いていた……。
今日は入学式だけだったので早く終わりました、なので書きました
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ではこの辺で失礼します