31話
だんだん長期連載になってきましたね。初めはどうなる事やらと思っていましたねー。いや、元々この話はこよいが主人公で兄の有二が受けのラブコメでそこに咲月という第3者が割り込んできて……って設定だったんですよ。
秘話としてここに記しますね。では続きを……。
「起きてお兄ちゃん、朝だよ?遅刻するよ~?……でもこよい的にはこのままずっと隣で寝てたいんだけどなぁ……」
「……そんなこと俺が許さない、ちゃんと学校は行っておけ」
「ちぇーケチ、お兄ちゃん大好き」
「………………」
◆
まだボーっとしている頭をどうにか覚まさせようと洗面所に行き水を流し顔を洗う。
「はっくしょん!」
ちょっとやり過ぎたか……。冷たい冷たい、そう思っているとこよいが横からタオルを差し出してくれた。
ありがと、とそれを受け取るとこよいはえへへ、と微笑んだ。
「朝食出来てるから早く姉ちゃんとこ行ってね、こよいは学校の支度をしてくるから」
りょーかい、と顔を拭きながら答え、タオルをかごに投げ入れた俺は今言われたとおり、テーブルに足を運ぶ、味噌汁のいい匂いがする。具は何だろ?豆腐とか?ワカメとか、大根なんかも好きだなー。
色々な予想をしつつ俺はテーブルに座った。そしてまぁまぁ気になっていた具を覗き込んでみる。
「おぉー流石咲月さん、俺の好きなもの分かってるだけあるわ」
そう彼女に言った。
すると彼女は
「だって有ちゃんのお嫁さんだもん、コレくらい当たり前だよ」
と、お玉片手に最近大きくなったらしいその胸を張ってそう答えた。
咲月さんもエプロンを外し、いつもの場所に仕舞うとこちらへ戻ってきて座っている俺の頭をポンと叩いて隣に座った。
「こよいちゃんまだかな?」
「学校の支度だってさ、ったく高校1年にもなって朝用意するかよ」
「まぁまぁそんなこと言わずにさぁ、おとなしく待っていようよ」
そう言うと咲月さんは俺の肩に頭を預け、疲れたよと呟いた。
3人分作るのは大変だろう、そしてその分早く起きないといけないから更に大変だろうな。
しかも弁当も3人分作ってる訳だし。
いつもごくろうさんと寄りかかる頭をやさしく撫でてやると、咲月さんはううん、いいんだよ。あたしが選んだ道なんだし。と目を瞑って小さく答えた。
少しだけとても静かで心地の良い時間を感じた2人はどうせならこのまま時間が止まってくれたらどんなに嬉しいかとそう思っていた。
しかし良い時間というものはすぐに終わってしまう。ダッダッダッダッと階段をおりるこよいの足音で咲月はその目を開いた。
「はぁ、起きなきゃだねー……」
「妻は大変だ、頑張って咲月さん」
「うん、頑張るよ……だから、さ……キ、キス」
「こらー!そこの2人!こよいの前でイチャイチャしない!ジェラシー感じちゃうっ!」
「うるさいやつだなぁ」
「お兄ちゃんがいけないんだもん!……こよいというものがありながらお兄ちゃんは」
「いただきまーす」
「ふふっ、あたしもいただきまーす」
「無視するなー!もう……いただきます」
この1年で少しこよいに対する態度が変わったような気がする。
多分、咲月さんを意識しているからだと思う。
まぁ、早いところ兄離れをしてもらい所なんだけど……。
◆
午前中のだるい授業が終わった。それにしても鬱だ、午後も授業があるなんて……。
「有ちゃーん!弁当食べよー!」
朝とは違ってすっかり回復した咲月さん。そんな咲月さんを見るとこっちまで元気になってしまう、不思議なものだ。
「いつも弁当ありがとな、じゃ……」
2人で手を合わせて。
「「いただきまーす」」
敷き詰められたレタスの上に卵焼きやたこさんウィンナー、そしてハンバーグにサラダがついてお値段プライスレスな俺にとって世界一の弁当を食べ進めていく。
「あーんする?」
「え、しないよ」
「そっかーじゃあ、あーんしようか」
「日本語通じてる?……ングッ」
ハンバーグを口に入れられた俺は嬉し恥ずかしながらよく噛んで飲み込む。
「おいしい?」
首を少し傾げて咲月さんが質問する。
「うん、おいしい。流石俺の嫁ーははっ……ぁ」
それを言った瞬間、この空間に存在する男の嫉妬のオーラがその空間を包み込むのが分かった。ような気がした。ちょっと調子に乗ったかな……?
そんな緊迫している空気の中、咲月さんはそれをもろともせず、次のおかずをスタンバイさせている。俺はそれを見て、あははぁ、とどうしたものかなぁと困っていた。
そんな時、一人の男が堂々とこちらへ近づき俺に声を掛けてきた。この空気の中なのに、だ。
「おーい有二、いい所邪魔して悪いけど宿題写させてくれねぇか?300円やるから」
俺がその声に振り向いてみると善人が俺に手を合わせていた。
宿題写させる代わりに300円か、即決価格だな。
「おう、いいぞ。しかし前払いな、こういうところちゃんと取り立てるからな」
「あいあい、ほら300円。金はたくさんあるからな、助かるぜ」
100円玉を確かに3つ貰い受けると俺は机からノートを取り出した。そのノートには
宿題となった問題とそれに対しての俺の回答が書き綴られている。
それを渡すとあざぁーすとひとこと言って自分の席へと善人は帰って行った。
綾乃さんが大学へ行ってしまったときは分かりやすく落ち込んでいた。
ちなみにコイツは綾乃さんとたくさんデートをするためにがんばってバイトをしていた。
さっき言っていた、金はたくさんあるからな。というのはそれで手に入れた給料の事だろう。
用を済ますと食べていない弁当を食べてしまおうと箸を片手に弁当箱をもう片手に持ち咲月さんのほうを向く……すると待ってましたといわんばかりの笑顔で、あーんが待っていた。
調子が戻ってきたぁ!こんなカンジでしたよね、いつもいつも。
それではこの調子を保ちつつ連載していこうと思います。
毎回毎回、ほとんど進展も無い日常を繰り返す彼らですがどうか温かく見守ってやってください。
感想、評価、受け付けています。それではこの辺で失礼します。