3話
次から本編のスタートです
楽しく読んでもらえれば嬉しいです
『カシャ!』とケータイ音が部屋に響き渡った……。
咲月は写真を撮り終えると緊張した~とか言いながらベッドにダイブした。
いきなり大胆な行動に移った咲月には勝機があった。
◆
咲月がいつもどうり有二の近くにいた時だった。そう、いつもどおり。
その日、咲月は例の如く、大勢の男子に交際を迫られていた。そんな時、有二はその男子共を掻き分け、咲月の手を引き、助けてくれたという逃走劇があったのだ。そして、その時から自分を助けてくれた有二が気になっていた。それから彼女はいつの間にかいつも気づかれないように有二の近くにいた。
たま~に善人が『美少女の気配がする!』とか言ってバレそうになったこともあった。
でもストーキングに慣れてきたらそんなことも無くなっていった。
そんな事をしている日が続いたある日、実は有二に告白する者が現れた。
咲月はあまりの急展開に心底不安になった、有二君が取られたらどうしよう取られたらどうしよう……
そんな気持ちを抱えながらいつもどうり有二の声が聞こえる範囲内に隠れて耳を澄ませていた。
お願い、上手く行かないで、ただそう願いながら。
「あっ! あの! 呼び出しちゃってごめんね、あのさっ突然なんだけど平沢君って彼女とかいるの……?」
こいつ……! やっぱり告白する気だ! と敵意をむき出しにして、心の中で失敗しろーこのやろー!! と、叫びつつ咲月はその話を聞いていた。
「いやいや俺には彼女なんて居ないよ?」
笑いながら有二はそう答えた。それを聞いた2人は同時に良かった~と安心した。
しかし咲月はまだ完全に安心することは出来ない、今から始まるのは紛れもなく、告白だからだ。
「じゃ、じゃあさ平沢君、私と……その、えっと……付き合ってくれないかなっ?」
後半声が裏返りながらも勇気を振り絞って女子生徒はそう言った。そう、勇気を出して告白をした。
やっぱり告白か! そう思った咲月はいつの間にか手を組み、聞こえない程度の声で断れ断れ断れ断れと呟き始めた……。
そしてその問いに対し、有二は笑いながら答えた。
「ごめん…俺付き合うわけには行かないんだ、だって、俺には好きな人が居るんだ」
咲月は良かった~と心底安心した。でも今度はその【好きな人】が気になって仕方が無くなった。
そんな心配をよそに咲月の気持ちを代弁するかのようにその女子生徒は質問し始めた。
「一体、平沢君の好きな人って誰?答えてよ……お願い」
彼女は今精神的にきている。少し声が震えているのだ……。
「ごめん、教えるわけにはいかない」
有二はハッキリとそう言った。
「なんで?! いいじゃない! 私には教えたって!」
そう言われた女子生徒はムキになっていた。フラれたのが悔しかったんだろう。もう感情が抑えられなくなっている。
それでも有二は教えなかった……なぜなら有二なりの考えがあったからだ。
「ここでもし、あなたに教えたらあなたはその子に危害を加えるかもしれない。多分そんな事しないだろうけどもしそんなことをしたら俺は困るしもちろんその子も困る。そして一番困るのは……【あんた】だ」
急に有二の雰囲気が変わった。いつもは明るい有二がものすごい真剣になっていた。
いつもの有二君から何か変わった…? 咲月はそう感じていた。普段明るく楽しげに過ごす彼の感じは色にしてオレンジ色、しかし、今ここにいる彼の感じは色にして黒か青。
有二は言葉を続けた。
「……だから俺は答えない。それが彼女のためだから」
そう言って彼は去っていった。
しかし、去るのは良いがその途中に咲月が隠れている。
自然と咲月との距離が縮まっていく。
もしここで見つかったらなんとなくやばい気がする。そう思った咲月は口に手を当てて息を殺した……。
徐々に近づいてくる足音。咲月は心臓がバクバクしていた……。
そしてちょうど咲月が隠れている所を通り過ぎた後、有二はつぶやいた……いや、つぶやいてしまった。
「―――俺が好きなのは咲月さんだっつーの……」
「!!!」
それを聞いてしまった咲月は当然のごとく驚いた。そして有二の姿が見えなくなった後有二君の好きな人ってあたしだったんだ……うわぁー照れるなあ~。と誰にも聞こえない声で咲月は喜び大きくガッツポーズをした。同時に女子生徒に対して『ざまぁみろ!』と思いっきり悪なセリフを心で嬉しそうに叫んだのはここだけの話としておこう。
そしてそんな彼女は例の女子生徒を気にしつつ、教室へと戻って行った。楽しげにスキップを踏みながら。
そう、ここで聞いた言葉こそ【勝機】と言うやつだった。
告白しても有二君はあたしの事が好きなんだから大丈夫でしょ。そう思っていた。
◆
日も暮れ、薄暗い部屋に二人はいた。もうすぐ夕飯時と思った咲月はすぐそこで寝ている(気絶している)有二のためにとりあえずオムライスでも作ってやろうと思っていた。それ以前にやってみたいことがあった。
とにかく、怪我もなく、無事を作り終えた咲月は作りたてのそれを片手に有二を起こしに部屋へ急いだ。
「おーい夜だぞ~起きて~」
珍しい起こし方だなと思いつつ声を掛け続ける。
するとあと五分……と有二がつぶやいた、それが面白かったのか咲月は笑わないようにと口を手で塞いでいた。
笑いがおさまると今度はほっぺたを突きに掛かった。
つんつん、と突いては起きるか? 起きるか? とハラハラしながら有二の目を見る。
しかし効き目がないと分るともうたくさん遊んだのでもういいかげんに、起こしてあげようか。
そう思い、有二の耳元で、「起きて……」と、ささやいてみた、すると有二の体がビクゥゥと震え、ようやく有二は目を醒ました。
「ん?! あれ? 俺……あれ? 何で咲月さんが? そしてここは……?」
まぁなんとも分りやすいリアクションなんだろうと笑いつつ咲月は事情を説明した。
いろいろと説明され、しばらく沈黙が続くと、有二はそうだったんだと一言呟いた。
そしてそうなんだよーと咲月は言い返した。特に話すことがなくなった咲月はさっきの作りたてのオムライスを有二の前に差し出した。
「えっと……俺に?」
「うん、そうだよー」
「で……これって……もしかして……? まさか」
「うん、文字どうりそのまさか……だよ?でさ答えは?」
答えが分っているとはいえ、少し恥ずかしかった。
しかし、予想通りの答えが返ってきて咲月は安心した……。
「もちろんYES!」
そう有二は答えたのだ。
その答えを聞き咲月は有二に抱きついた。
「やった~! 成功した成功したよー!!」
「あ、あはは~まさか咲月さんが告白してくるなんて思わなかったよ……夢じゃないよね?これ」
普通の男子なら凄くドキドキするようなシチュエーションだが、こよいのせいか、それともおかげなのか、有二はある意味、耐性が付いていたため咲月の予想と裏腹に至って抱きつかれても普通通りに接する事が出来た。
充分に。そこからさらに、余計な喜びを分かち合った後、有二は咲月のオムライスを食べ始めた。
「ぁ! これおいしいよ!」
「そう?! やった褒められちゃった」
……ちなみにそのオムライスにはケチャップで【付き合ってくれる?】と頑張って書かれていたんだとか。
明日から学校です…1週間に1話ペースであげると思います
それを判ってもらいたいです、お気に入りに追加してもらえると嬉しいです
感想も書いていただけたらうれしいです(批判だけは避けたいけど…
レビューとか書いてくれる人がいらっしゃったら感謝します
ではこの辺で失礼します