24話
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なんでも無い日のことだった。
「はい、お兄ちゃんはお留守番よろしくね」
こよいは有二を置いてお買い物へ出かける。
「おう任せろ!行って来い行って来い!」
こよいの束縛から解放される有二は少し嬉しげ。
「なんか機嫌良いねー?何か隠し事でもあるのかな?どうなの?」
「なーんもないって」
「ふーん、まぁ良いけどね、じゃ買い物行って来るねいつも通り6時半には帰るから」
そう言ってこよいは靴を鳴らす。
「りょーかい、じゃあ気を付けて」
「じゃ、じゃあ行ってらっしゃいのチュー」
いつも通りこよいはふざけて求愛をする。いや、ふざけてはないか。むしろ本気だろう。
この時こよいはまさかあんなことになるとは本人でも予想できなかっただろう。
「んなもんあるか、さっさと行って来いって」
そう言うとこよいはほっぺたを膨らませ甘えるような声で返した。
「うー、たまにはいいじゃんかよー」
「まぁそうふくれるなよ」
「今日のところは見逃すとしよう、じゃあ行ってきまーす」
まさか有二に『一緒に行けばよかった』と後悔するような日が来ようとは微塵も考えられなかった。
その頃、白川家ではこんなことが
姉弟が集合するこの部屋で綾乃が紗希に服選びを手伝ってもらっていた。
「姉ちゃん今度のデートなに着て行けばいいかな?こっち?それともさっきのやつ?」
綾乃はいくつかの種類の服を鏡の前で着替えてはうーんと唸っていた。
「やっぱりさっきのが良いんじゃない?」
「じゃあさっきのにしよっかな」
「服選びはいいけどさ……普通に弟が居るところで着替えなんてするんじゃねーよ、まぁ綾姉だから別に大丈夫だけど」
「でもあたしとなると事態は一変しちゃうんでしょー?」
からかうかのように紗希は巧に聞いた。
「うん、なんかいろいろとヤバく変化するいろいろと」
そう返事した瞬間巧のほっぺたをつねる手が出現した。
「―――こら巧いいいいい!って事は何?!あたしに魅力がないと!?サービスもサービスでなくなると?!そう言いたいのかな!!?巧!?」
たーてたーて、よーこよーこ、とその手を上下左右に動かす綾乃。
「やめろほっぺたつねるなこら、綾姉やめろって」
下着の姉にほっぺたをつねられる巧。いたって冷静であるが仮にこれが紗希だとする、恐らく巧はこんなに冷静を装えないであろう。何故かって?それは悟ってもらいたいところである。
「そうだよ綾乃、あんた今下着だよ?さっさと何かに着替えなって」
綾乃の体を指差し紗希はそう言った。
「う……そうする」
確かに今自分は下着以外何も身に着けていない。もしこれを恥らわないなら乙女として重症である。そう思った綾乃は即座に着替え始めた。
「ったく綾姉は……」
「まぁまぁ巧。綾乃だって一応女なんだしさ少しは恥らってあげなよ。確かに綾乃は魅力が少ないし、あたしみたいに胸が大きいわけじゃない。でも貧乳はステータスって言うじゃん?だからさ心遣いでいいから恥らってあげてね?」
そう言って紗希は巧を説得する。が、そこに
「さり気なくフォローになってないフォローが聞こえるのは気のせい?!」
と綾乃がツッコミを入れた。
「え?何か言った?綾乃」
白を切る紗希。
「いえ、なにも言ってませんが何か……!」
呆れて無かったことにする綾乃。
「おぉー綾姉からドス黒いオーラが!」
「出てないって!んなもん出ないよ!」
「いやいや綾乃だし。出せるかも!」
「出るわけないでしょうが!」
「ってかさっさと着替えてよ綾姉!なんかこう……あぁーもう!なんでもない!」
……とまぁ今日も平和な白川家だった。
所変わってこよいはスーパーで買い物をしていた。
「さぁてお兄ちゃん、今日の晩御飯は何にしようかなー?って居ないんだった」
ある意味あの一件で食料品売り場が怖くなった有二はしばらく買い物には付き合わないとの事。
いろんな野菜とにらめっこをするこよいに声を掛ける人が居た。
「おや?こよいちゃんじゃないか~」
「咲月さ……咲月姉ちゃんじゃないか~」
それは咲月だった。ちょうど買い物に出ていたようだ。
「ふふっ可愛いのーお主~わしの嫁にならんか~?」
何故かプロポーズをする咲月。なぜプロポーズをしたのかは……謎である。
「お兄ちゃんが居るならそれでも良いよ~」
快くプロポーズを受けるこよい。何故かは……やはり謎である。
「へへっもちろん有ちゃんも一緒だよー」
「なら良いよー、でさでさ咲月姉ちゃんは今日の晩御飯何にするの?」
主婦なお話に路線が変更された。
「あたしはねちょっと今日は疲れちゃったからさっさとチャーハン作ろうって考えてる」
この日咲月に何があったのかはまたの機会と言うことで。
「じゃあうちもチャーハンにしよっと」
「あらら、決めてなかったのね?」
二人で楽しくお買い物、作るものが作るものだったからあんまり長くは話せなかったようだ。
簡単に材料が集まってしまったのだった。
「じゃあまた会おうねこよいちゃん」
「うん、絶対だよ?」
「ふふっ、りょーかい」
そう言って二人は別れた。
この時咲月は一緒に帰ってあげればよかったと後で思う事となった。
そして事態が急変した。こよいが帰宅しているところへ二人の男女が現れた。
これがきっかけだった。こいつらが現れなかったら良かったんだと有二は後でこの二人を恨む事に。
「あなた、やっぱりこの子【こよい】よ」
「あぁ、分かってる、じゃあ行こうか」
そう言う二人はこよいのことを知っているようだった。
「買い物袋重いなーこういうときお兄ちゃんが居てくれたらいいのに」
そうこよいが呟いた時だった。
「すいませんちょっといいですか?」
「え?何ですか」
目の前には女の人、その後ろに男の人が立っていた。女は今にも泣きそうだった。男は俯いたまま何も
言わないで立っていた。
「やっぱりこの子が……大きくなって」
まるで自分を知っているかのような台詞。思わずこよいは2歩3歩と後ろに退いた。
「ちょっと何ですか?あなた達一体誰なんですか?」
「ごめんなさい、紹介がまだでしたね。私たちはあなたの親で、あなた達を引き取りに来ました」
この女は自分たちは親だと言った。そして引き取るとも言った。
それを聞いたこよいの表情は一変して真剣な表情へと変わった。
そして最善策を考えた。自分たちを捨てた人のところへ行くなんて最悪だ。
じゃあどうする……そうだ今のところ自分から名前を明かしていないじゃないか
相手に完璧な素性がばれていないのなら―――
「人違いじゃないですか?」
こよいはそう言った。
「え?」
女の人はまさに目が点といわんばかりの表情。後ろの男は相変わらず申し訳なさそうな表情をしていた。
「人違いですよ。それじゃ急いでるから失礼します」
そう言ってこよいは走り出した。まだ気は抜けない。こよいはわざとあらゆる道を使って帰宅した。後ろから追いかけられ追いつかれないためだ。
「人違い……?いえ、そんなはずは」
財布から2枚の写真を取り出す。そこには保育所の時代のこよいと有二。そして中学時代のこよいと有二が写っていた。これは母方、要するにこの女の母から譲り受けた写真だった。
一体何?親?いまさら何をしにきたって言うのよ?とりあえずお兄ちゃんに言わなきゃあと咲月姉ちゃんにも言っておこう、いざと言うとき助けてくれるかも
そう思いながらこよいは玄関のドアを開け、さっさと閉めた。
シリアス回ってこんな感じでしょうか?
とりあえず次回が気になれば僕は嬉しいです。
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