14話
感想ください。おねがいします。
「いてぇよ!いてぇよ!!いてぇよ!!!痛いって言ってんだよこの野郎ッッ!!!!」
俺は1人のおばさんと商品の取り合いになった。
引っ張っては引っ張られ、引っ張っては引っ張られを繰り返していた。
事件は俺が引っ張ろうとした時に起きた。
俺が引っ張る瞬間、おばさんはそれを引っ張り返さずに逆に押した。
もちろん極端にバランスが崩れ商品から手が離れ俺は床に尻餅をついた。
それだけなら良かった。
すぐに立ち上がろうとし俺は床に手をつき立ち上がろうとした。
次の瞬間、俺たちが求めている商品で争っていた他のおばさんが俺の手を靴で踏んだ。
踏ん張るがゆえに力が入っていたそして……よりにもよってその靴はヒールだった。
まず最初にその手を退かそうと思った。凄く痛い
しかしなかなか抜けない…動かそうとすると激痛も走り一気に顔が青ざめていった。
そこへ追い討ちを掛けるがごとくヒールのかかと部分が更に患部へ食い込んで来る。恐らく踏ん張ったのだ。
そして俺はその痛みのあまり叫んだ……。この際声が枯れたって良い、だから誰か気づいてくれ頼むから助けてくれ……。
この大騒ぎの中あいつはこの異変に誰よりも先に気づいていた。
「お兄ちゃんから離れて!!!!!」
あいつの必死に叫ぶ声はここには届かなかった。
「あぁあああああああああ!!!!!」
力を振り絞り俺はもう一度叫んだ。気付いてくれ……!クソッ……!!
『そこのあんた!足!足!!!早くお退き!』
ようやく気づいてくれた人が居た……青ざめたままだったが少しだけ生気が戻ったような気がする。
「え?何だって?」
俺の手を踏むこのおばさんはまだ気付いていなかった。
「―――お兄ちゃんから離れろッッ!!!!!」
「こよい…?」
こよいの声がした。それはとても殺気立っており、いつもより声のトーンが低い、周りに居たおばさんは思わず腰が砕けてしまっていた。言うならば殺戮状態、その普段のとは似ても似つかない殺気立ったその瞳、いや、眼球は俺の手を踏むおばさんを捉えており、こちらから見ても『殺ス……』という感情が痛いほど伝わってくる、正直自分のことよりこのおばさんの心配をした程だ。
それからこよいは俺の周りを囲む人を掻き分け俺の手を踏んでいたおばさんを思いっきり力いっぱい蹴った。パンッッ!!と肉が叩きつけられる音がする、こよいがなりふり構わずそれこそなぎ払うかのように回し蹴りをしたのだった。見事にヒットしたその蹴りを放つや更に追い討ちを掛けようと右腕を斜め後ろへ引き始める、その表情から見て殺そうとしていることが分かる、どうみたって『お手をどうぞおばさま』なんて顔をしていない、止めないとマズイことになる。それを目撃したみんながそう思っていただろう、でもあれに巻き込まれたくないんだろう、止めに入るものは誰一人としていなかった。
「痛!ちょっとアンタ何して―――」
2メートルか3メートル程だが確かに蹴っ飛ばされたおばさんが後ろを振り向きそう言い放った。
そのおばさんが全てを言う前に怒りでそのセリフを遮断するかのように叫ぶ。
「―――こっちのセリフだおらぁ!!よくもお兄ちゃんを……!!!あんた……いっぺん死ぬ?」
その言葉にはもはや殺気以外の何物でもなかった、鋭利的なそのセリフはまさにナイフのようだった。
「こよい!待てってこよい!―――痛ッ!!」
立ち上がろうとすると案の定手に痛みが走る。
「―――!ッ大丈夫!?」
俺に悲鳴を聞いたこよいは我に返ったかのように俺の方へ振り向き顔を覗き込む、さっきまでの表情とはまったく違ってもう今にも泣きそうなくらいの表情をしていた。
「頼むから警察沙汰になるようなことはしないでくれ……頼むから」
俺がそう言うとこよいはごめん、とだけ言った。
◆
その頃、この事件を嗅ぎつけたお客がざわざわし始めていた。
「あれ?なんか騒がしい…ハッ!しまった~今日はタイムセールの日だった~」
頭を抱えて悔しがりながら彼女は騒がしい方へと近寄ってみた。
「一体どうしたのかな~?何があったのかな…?ただ事じゃなさそう」
みんなの様子がおかしいことに気付いた彼女はただの興味でその事件があったと思われる場所を覗き込んでみた。そして彼女は驚愕した……!座り込み、少女を睨み付けるおばさんとそのおばさんを殴りかかろうとしている少女、そしてその少女の足元には見知った顔が。
「―――有ちゃん!!?」
彼女ははすぐさま買い物袋を床に置き怪我をしたと見られる手をもう片方の手で覆って痛みをこらえる彼の下へ駆け寄った……。
◆
ところでこの2人、いったいどこへ行くのだろうか。
行くあてなどあるのか?これではただの散歩である。
「はぁ~やっぱりぶらぶらしてるだけなのは暇ですね~」
ふいに綾乃はあはは~と苦笑しながらそう善人に言った。
「そう…だね」
……まだ善人はタメ口を使う事に気が引けているようだ。
「そういえば善人はどの辺に住んでるのですか?」
思い出したかのように綾乃は質問をした。
「この先真っ直ぐのところ…」
多少緊張しながらそう善人はそう答えた。…いい加減タメ口に慣れないのだろうか?
「―――私の家ここら辺ですよ!?お家どこですか?!」
「あはは~もう通り過ぎたぜー」
「―――え!?どこどこ?!どこですかぁ!?」
「教えませーん」
「教えてくださいなのです~!」
「やーだ」
どうやら善人のいたずらスイッチがONになったようだ。
「あぁ~教えてくださいーもしかしてあれですか?」
「不正解。残念」
「じゃあ……あれ!」
「おぉー!すげぇ!」
「じゃああれが―――!」
「不正解です!」
「ガクッ…年上相手に結構やりますね…」
善人はいじめるときは自分が満足するまでいじめる習性があったりなかったりする。
「あはは~絶対教えなーい」
「…善人のいじわる…私をいじめないで欲しいのですよ…?」
「その上目遣い…かわいいです」
「わわっ!?かっからかうのは良くないのですよ?!」
「からかってなんかないよ?」
「善人のいじわる」
これが善人の初恋の始まりだった。
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