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姉妹の微笑み

リフュレスの営む占いの館に匿ってもらって、少しの仮眠を取った。

 目を開けると外は薄暗くなってきている時間だった。

「グラディ起きたのね。まだ大樹には戻れないわ」

 リフュレスは椅子に腰かけて、本を読んでいたようだ。

 本をパタンと閉じ、飲み物を渡してくれた。

 安心して、少しため息をついた。

 それでも何か胸騒ぎがした。

「グラディ、少し地下室に逃げてなさい。もう少しで人間軍が来るから」

 そういって、俺が仮眠を取った部屋の隣の部屋。

 そこは普段リフュレスが書斎として使っているところらしい。

 リフュレスはその部屋の床に、机にあった羽根ペンを刺した。

 すると、床が開閉できるようになり、地下室への階段が表れた。

「これ作るの大変だったのよね、中からは簡単に開けれるけど、私がいいって言うまで出てこないで」

 そして、リフュレスは扉を閉めた。

 周りは真っ暗で、何も見えない。

 明かり貰えばよかったなと思った矢先、ドアに近いところから順に、松明の火が灯った。

 地下室には1ヶ月ほどは持ちこたえられるであろう食料、衣服、布団類などが置かれていた。

「用意周到すぎるだろ」

 そう思いながら、胸に手を当てる。

 普段よりかはずっと早い心臓の鼓動。

 恐怖か、緊張か。

 どちらかは分からなかった。

 仮眠はとったけど、少し目がトロンとしてきた。

 布団を敷いて、また仮眠をとることにした。


「すまない、我々は人間族の聖勇軍という、少しこの館を調べさせてもらいたい。指名手配である、魔王リミュオーバ、そしてその逃走に手を貸したであろう人間族グラディバスディアを探している。もしやましいことがなければ、拒否はするまいな?」

 そう脅しをかけるのは、ジルラギル。

 自分が教えていた2人に慈悲はなく、今や完全なる敵であると言わんばかりの語気だった。

 リフュレスはもちろん拒否することはなく、聖勇軍は、全ての部屋を見る。

 とは言っても占いの部屋、仮眠室、書斎しかないのだが。

「仮眠室はついさっきまで使われていたように見えるが、誰が使った?」

 ジルラギルは敷かれている布団をみて、リフュレスを問いつめた。

「私が少し仮眠していました。つい三十分ほど前に起き、今はこの書物を読んでいました」

 そう言って本を見せる。

「一応こちらも確認させてもらう」

 そう言ってリフュレスの手から本を奪い取る。

「特に問題は無いようだ、書斎の方はどうだ」

 部下は首を横に振る。

 地下室の存在はリフュレスしか知らず、その隠蔽魔法はスーパースキル「完全感覚遮断」を使っているため、並大抵の人間では見つけることは出来ない。

「私の疑いが晴れたのであれば、早く出ていって欲しいですね、私のプライベートもあるのであまり探さないで欲しい」

 聖勇軍は書斎の本棚、クローゼットの服、タンスの中にある衣服も全て出し、2人を探していた。

「それは済まない、女性の家でするようなことではなかったな。部下にはきつく言っておく、申し訳ない。なにか情報があれば教えて欲しい」

 そう言って、聖勇軍はリフュレスの館を後にした。

「出ていくなら片付けて言って欲しかったわね」

 少し愚痴を吐いて、リフュレスは片付けを始めた。

「この本棚を荒らされなくてよかった」

 リフュレスは本棚の壁に自分が持っている本を押し付ける。

 その本の形に壁はへこみ、四角い穴が開く。

 そこには4人の男女が笑顔で映る写真があった。

 その4人の男女は小さい頃のリレイヤ、リフュレスと大人の男女だった。

「エンディア様、スティリア様、グラディは私たち姉妹が絶対に守ります。どうか勇気を、そして私たちを見守っていてください」

 リフュレスは写真を抱き、涙を一筋流した。

 そして、四角い穴に写真を戻し、魔法をかける。

 これも床と同じ魔法をかけている。

 リフュレスにとって、相当大事な写真なのだろう。

 本は壁から押し出され、パタンと倒れる。

 その本を書斎にある机に起き、書斎、仮眠室を1人で片付けた。

 聖勇軍が来てから、一時間程だろうか。

 荒らされる前と同じ位に綺麗になった。

「さて、そろそろグラディを呼ばないと」

 そう言って耳に手を当てて、目を閉じた。

『グラディそろそろいいわよ』

 テレパシーを送るが、グラディは反応する様子は無かった。

 心配になったリフュレスは羽根ペンを床に刺す。

 リフュレスはもう一度床を開けて、地下室に降りる。

 地下室では、スゥスゥと寝ているグラディが居た。

「可愛い寝顔ね、これが世界の終焉を導く神とは思えない。でも、あの二人の息子なんだから簡単に堕ちないわよね。グラディには私たちが付いてる」

 そう言って、目を閉じて、グラディの額にキスをした。

 リフュレスの口紅が額につき、その口紅が淡く輝き消えた。

 うーん、と寝返りを打つグラディ。

 リフュレスはその光景を見て、上に戻り、また書籍を読み始めた。

『姉さん大丈夫だった?グラディは無事?』

 リレイヤからのテレパシーだった。

 『えぇ、可愛い寝顔で寝ているわよ』

 羨ましいとリレイヤは少し嫉妬した。

 『まぁいいわ、もう人間軍はこの国にはいはいわ、グラディが起きたら大樹に送ってね』

 『リレイヤ少し話さない?数十年ぶりなんだから積もる話もあるでしょ』

 2人の妖精の姉妹は時々笑い、懐かしい姉妹を思い出していた。

 グラディはまだ目を覚まさない。

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