妖しい占い師
「それはどういうことだ?俺が世界を破壊するって」
露店にある1つの寂れた占いの店。
その店主であろう、ダークエルフは水晶を見て、俺が世界を破壊すると言った。
そのダークエルフは、口元を隠しているが、目元だけでも美人とわかる。
尖った耳には紫色のパールのピアスをしていた。
首元には装飾が凝られたネックレスをかけていて、そのネックレスはどことなく大樹に似ていた。
俺は占いを信じる訳では無いが、ここは女神の国。
エルフの中には未来予知できる者もいると聞く。
もし、このダークエルフが未来予知できるエルフならば、笑って聞かなかったことにできるような話では無い。
もっと、詳細に占ってくれと頼んだ。
ダークエルフはもう一度水晶を見る。
「あなたは闇に染まり信じていた友と敵となる。涙ながらに友を斬り、もう1人の友と共に涙を流す。眠る友に最大の脅威を必ず倒すと誓いながら、また立ち上がり、終焉を告げる」
そんな不穏な占い結果をダークエルフは伝えた。
信じていた友、そしてもう1人の友とはリミュとホーリーのことだろう。
終焉を告げるというのは終焉の神のことか。
つまり俺はどちらかを殺すことになる、のかそんなわけ、ないよな。
でも、それを否定できるような材料は無い。
俺が操られて殺す可能性も大いにある。
いやいや、と首を横に振る。
ん?てか待て、2人の友ってことはホーリーは生き返るってことか?
もしそうだとしたら、俺にとってひとつの希望になる。
その希望を確実なものにするため、もう一度ダークエルフに占いを頼む。
「なぁ、その時の友っていうのは俺が想像している2人でいいのか?」
そのダークエルフを完全に信じる訳では無いが、もし、そうだとしたら。
「今私が見えているのは、勇者と魔王、そして終焉の神とその右腕だけ。」
その結果は俺に希望を持たせるのには十分だった。
やっぱりホーリーは生き返るんだ。
終焉の神と右腕は俺の事か?
もっと詳しく知りたい。
「俺はどうやったら操られずに済むんだ?」
ダークエルフは少しキョトンとした顔をした。
変な事聞いたかな。
「あなたが操られることは無い、ただ、助ける手段は何も分からない」
操られている訳では無い?
じゃあなんで俺はリミュかホーリーを殺しているんだ。
「未来を指し示す2人の王、皇帝と将軍。そして、未来を繋げる女神、そして、未来を創る魔王と勇者。その5人と1人は世界を救い、世界を壊す。」
1人って誰だよ。世界を救ったのに壊すって。
色々思考を巡らせようとした。
しかし、その思考はゴーンという大きい鐘の音によって止められた。
「ここはもう店じまい。リレイヤによろしく。」
そう言って、店からすぐに追い出し、店の入口に鍵をかけた。
リレイヤによろしくって、女神に様付けしないエルフ族も珍しいな。
色々と困惑しながらも、大樹に戻った。
その頃には既に女神リレイヤも帰ってきていて、ホピリスと話していた。
帰ってこない俺を心配していたらしい。
「お主どこをほっつき歩いておった。まさか、いかがわしい店に行ったりしてないだろうな!」
まさか、と否定して、俺は露店であったことを話した。
その話を聞いた女神リレイヤとホピリスは血相を変えた。
「そのダークエルフは今どこに!?」
女神リレイヤはそのダークエルフの所在を探る。
「どうしたんだ?急に」
そんな顔を見た事がない俺は、ただ戸惑うことしか出来なかった。
「ホピリス、今すぐにそのダークエルフを探せ!」
なんなんだ、あのダークエルフは何者なんだ。
「あなたが話したのは、我が姉リフュレスよ。姉様は未来視が出来て、過去には大樹が枯れることも言い当てていた。でも唐突に、未来が見えなくなったと言って五十年前にこの国を出たの。私を呼び捨てするなんて、リフュレス以外にいないわ」
なんで、そんな人が俺なんかに。
魔王と勇者といい、女神と言い、本当に偶然なのか。
「ねぇ、あなたのそのポケットから出ている手紙は何?」
リレイヤから言われて初めて気づいた。
ポケットにはピンク色の手紙が入っていて、その便箋には大樹のスタンプが押されている。
「その印は王家しか押せない印よ、差出人は誰!?」
直ぐに確認した、手紙の差出人はリフュレス、受取人はリレイヤ。
リレイヤは俺から手紙を奪うように取った。
リレイヤは、その手紙をすぐに開き、読んだかと思えば、大粒の涙をこぼした。
「お姉様、ずっと見守ってくれていたんだ」
詳しくは話してくれなかったが、
「リレイヤが女神として立派になっていて嬉しい、ずっと見守っている。
もし壁に当たりそうな時はふたりのヒミツの場所で。」
と書かれていたらしい。
ヒミツの場所が気になったが、聞くのは野暮だろう。
リレイヤは涙を拭った。
「お姉様、ここが嫌いになったわけじゃなかったんだ。良かった」
安堵した表情を浮かべて、また一筋涙を流した。
「ありがとう、今日は休みなさい」
普段見せないような、優しい表情でそう言った。
リレイヤも妹なんだな。
部屋に戻り、その優しい表情を思い出しながら、同時に2人のことも思い出していた。
俺にとって、リミュとホーリーは兄だった。
その2人に向ける眼差しとどこか近い眼差しだった。
いつもその2人を追って、走っていた。
2人の背中は遠く感じた。
ずっと尊敬する2人だった。
2人との思い出を巡らせながら、俺は瞼を閉じた。
「お姉様、やっぱりグラディが終焉の神なのね」
「ええ、私の水晶に写ったから絶対にね」
「皇帝と将軍に知られる訳には行かない。グラディはリミュとホーリーが遺した希望でもあるんだから」
大樹の頂上にある桜の広場で2人のエルフは話していた。
その会話を知る由もなく、グラディは鼻ちょうちんを膨らませていた。




