瞬く希望
ホピリスに誘われ、女神リレイヤの国に来てから一週間、ホピリスはドライアドの中でも上位の存在だったらしい。
命導師様と国中から呼ばれていた。
その由来は、この国に咲き誇る桜の大樹かっこ「ドリフィラーの神木」が一度枯れかけたことがあった。
それが終焉の神が過去に復活した時の出来事。
その当時の女神は重症を負い、息も絶え絶えにリレイヤに女神を託した。
しかし、その時のリレイヤはまだ若く、神木を甦らせる力はまだ無かった。
その神木が枯れた時、女神の力は失われ、大勢の命が失われる。
そこに光明を差したのが、賢者と呼ばれたホピワルとその娘ホピリスだった。
ドライアドでも伝説と言われているホピワルは、瞬く間に神木を甦らせる儀式を組んだ。
しかし、ホピワルにはその儀式を完成させる力はもう無かった。
その儀式を完成させる人柱として、ホピワルは魔法陣の中に立った。
ドライアドを始め、女神の従属の種族は皆涙して、止めようとした。
しかし、ホピワルの覚悟は硬く、
「我が命を導き、このドリフィラーの神木を蘇らせし、命導師ホピリスに私の未来は全て託している。私が居なくとも、女神様は、この国は堕つ事は無い」
その言葉を聞いてもなお、止める者は後を絶たない。
「我が名を持ち、この国に最期の命令を下す。この世界を救い、希望をもたらした賢神ホピワルに未来永劫の英雄の称号を与える。英雄の最期を祝福して迎えよ」
リレイヤの先代女神はリレイヤに女神を託した後、この言葉を最期に息を引き取った。
そして、ホピリスは涙をこらえ、儀式を完成させ、神木を蘇らせた。
2人の英雄女神と賢神の命を導き、世界を救ったホピリスは命導師として、崇められることになった。
「その話は格好よく聞こえるが、ただ私に力が無かっただけの話だよ。」
ホピリスは心を読みすこ恥ずかしがりながらそう話す。
でも、赤面してる頬とは裏腹に、ホピリスの目はどこか寂しいような、そんな雰囲気を感じた。
というか、俺って普通に魔王、勇者の友人で、命導師が師匠って肩書き負けしすぎだろ。
世界に名を馳せるような英雄たちの友人や弟子は無名って大丈夫なのかなぁ。
「心配するな、お前は無名で終わるような男では無い」
心読まれるの恥ずかしいなと思いながら、この国の図書館の本を読み漁る。
座学の時間はずっと本を読み漁っているが、この国の図書館には数万どころじゃない数の書籍がある。
ホピリスに聞いてみると、
「私はここに置いてある本を十五万冊読んだが、それでも半分に満たないよ」
それって少なくとも30万冊以上はあるってことだよな。
少し気が遠くなる。
まだ数百冊程度だが、それでも知識は相当身に付いた気がする。
半日近く図書館にこもり、手当たり次第に読む。
座学が終わったあとは、実技に移り、スキルの習得に励む。
「こりゃ、勇者と魔王が毎回のように目を輝かせて話してくるわけだ」
ホピリスでも驚く程にスキルの習得が早いらしく。
この国に来る前にスーパースキルを2つ覚えていた、「タイムブレイカー」と「空中乱舞」、コモンスキルとノーマルスキルは十種類程度だったが、この国に来て、コモンスキルを二十、ノーマルスキルを十、スーパースキルを三、ノーマルスキルの中からエクストラノーマルスキルになったのが1つ。
ノーマルスキル「神速」はエクストラノーマル「閃光神」に進化した。
神速の場合は覚えている人は多いが、閃光神になると、相当少なくなる。
その理由は単純明快、速すぎるからだ。
神速の時点でも、普通に走る状態から数百倍の速度だ。
そこから更に数百倍早くなるんだから、制御出来ない人もいる。
理由的には空中乱舞と似ているな。
そして新しく覚えたスーパースキルが、
「斬撃閃」これは、斬撃を光の速さで飛ばすスキル。
そもそも剣の心得がないと覚える以前に、挑戦すら出来ない。
そして、閃光神の習得が最低条件だ。
次に「剛堅赫礫」
これは身体を数千度の鉄に変える。
相手の物理攻撃は防げるし、そもそも近くにすら寄れないぐらい熱い。
最後に「聖陽鳳使役」
これは、幻獣の召喚を行うスキルで、聖陽鳳は幻獣四天王の一種である紅い燃え盛る鳥だ。
幻獣四天王の召喚ができる人はいるがそれを使役できる人は数少なく、呼び出して簡単に葬られる人が後を絶たない。
この3つだが、一週間程度で覚えられるようなスキルでは無いため、ホピリスは笑っていたが、女神は引き攣っていた。
「私ですらスーパースキル4つなのに、あんた化け物でしょ!」
そう言い放つリレイヤに女神の威厳はなかった。
「面白いからいいでは無いか、どんどん習得していくのも楽しいぞ」
ホピリスは二十種のスーパースキルを会得しているらしいし、当面の目標はそれかな。
「さて、私は皇帝に会って来なくちゃ」
皇帝はオーガ族を始めとした、亜人族を総べる皇だったはずだ。
亜人族ということで、ドワーフなどもいて、鍛治や建設に関しては他の国とは大きな差があり、五大国の中では圧倒的な武力を誇る。
種族を総べる王の中では、リーダーを務めているらしい。
「魔王と勇者の件も話さないといけないのよ、あんたは来るべき時まで強くなりなさい」
その言葉に俺は拳を握りしめた。
まだ俺は弱い、強くならないと。
「とは言っても今日は終わりだな。無駄な鍛錬は身体を壊す。今日はゆっくり休め」
俺を見るホピリスが吹き出した。
「お前分かりやすすぎるだろ。えーって声に出してないのに顔にでかでかと書かれているぞ」
それを見て女神のリレイヤも笑っていた。
恥ずかしくて赤面して、照れていた。
「リミュもホーリーもあなたといて楽しかったのでしょうね、私に会う度にあなたの話をしていたから。私も話したくなるような、愉快な人ね」
リミュとホーリーはどこまで俺のことを話してるんだよ。
「恐らくは出会った人物全員じゃないか?あの二人だし」
女神もウンウンと頷いていた。
あの二人にもう一度会えたら絶対に謝らせよう。
それを誓って、女神リレイヤを見送り、少し街の散策をした。
街にはリミュの指名手配は全くなかった。
人間族の国とは大違いだ。
「あなたは、世界を破壊する」
歩いていると、露店で、占いをしているダークエルフにそう言われた。
俺が世界を破壊する?