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意図せぬ来客

「ジルラギルさん!リミュは絶対にやっていない!ジルラギルさんも近くで見ていたからわかるだろう!」

 俺は全力でジルラギルさんを止める。

 何故そこまでして止めようとしているのか、今人間と魔族による戦争が起きようとしている。

 人間の英雄勇者ホリレストを殺害したのが、魔族を総べる王であるリミュオーバだからだ。

 魔族は全てがリミュオーバの考えに染っているとして、人間族が滅ぼされる前に滅ぼそうということだ。

 阿呆らしい、そんなことしたら人間にも被害が出るのなんて分かりきっている。

 今やっと、魔族と人間族のわだかまりは薄れ、友好関係を築けているのに。

 こんな戦争なんてしかけたら、二度と魔族と人間族は相容れない関係になる。

 そんなことが分からないジルラギルさんじゃないはずなのに。

 きっとホーリーが殺されて、気が動転しているんだ。

「うるさい!小童がリミュは元々ああいうやつなんだ!だから私が国王に指導員兼監視を言い渡されていたのだ。そこまで庇うとなれば、お前リミュと会ったな。その時に洗脳をくらったはずだ、誰かこいつを牢屋に入れておけ」

 その冷酷な指示に疑うことも無く、近くの衛兵が俺を捕らえて、地下牢に投げ捨てられた。

 何があったんだ、ジルラギルさんに。

 衛兵がどこかへ行き、俺一人になった。

 牢屋にはなにかの根が這っていた。

 もう何十年も掃除されていないのかな。

 なんてしょうもないことを考えていた。

「リミュ、ホーリー」

 いつの間にか、か細い声で、2人に助けを求めていた。

 来るはずもないのに。

「これが、あの魔王と勇者の認めた子なの?もっとしっかりしてよ」

 誰もいないはずの牢屋に女性の声が響いた。

 俺は怖くなって、逃げれるはずもないのに、逃げようとしていた。

 でも、今は逃げている場合じゃない、2人を助けるために、誰の手でも借りてやる。

「誰だ、俺の事を知っているのか。もし知っているなら助けろ!」

 怖さをかき消すように叫ぶ。

「そんなに大声出したら衛兵が来ちゃうでしょ」

 牢屋に這っている根から、女の子が飛び出してきた。

「現女神リレイヤ様より命を受けまいりました、ドライアドのホピリスと言います」

 その少女はドライアドを名乗った。

 ドライアドは森を守る精霊だったはず、エルフの眷属で、女神の統べる種族のひとつだったはずだ。

「ホピリス、今ここから出してくれ、俺は友達二人を助けないといけないんだ。」

 俺の焦る顔を見て、ホピリスは指を振り、

「まぁまぁ落ち着いて、今すぐにできるのはここを出ること、助けるのは後。動くのはリレイヤ様から話を聞いてからね」

 女神からの話?いや待てよ、女神は勇者、魔王と並ぶ種族の王だ。

 もしかしたら何かわかるかも。

 というかそれを教えにホピリスを派遣したのかもしれない。

「分かった、ここを出るためにはどうしたいいんだ?」

「簡単だよ、この種を飲み込んで」

 そう言って、木の実を差し出してきた。

 本当にただの木の実だから飲み込むのを躊躇う。

「それを飲まないんなら、二人は助けれないわよ」

 二人を助ける、そして二人に並ぶんだ。

 意を決して、口に放り込み一気に飲み込んだ。

 少し苦い味がして、嗚咽した。

「はぁはぁ、飲んだぞ」

「よし、じゃあ私の手を取って。言伝(ことづて)の樹を通って、リレイヤ様の所へ行くわよ」

 その指示に従い、ホピリスの手を取った。

 ホピリスが右手を牢屋に這う根に触れた瞬間、その根に引き込まれた。

 周りを見る間もなく、一瞬で移動した。

 根からポーンと放り投げられて、尻もちを着く。

 周りは綺麗な花がたくさん咲き誇り、風に揺られて喜んでいるようだった。

 って喜んでいるわけないのに。

「本当に喜んでいるわよ、さっき飲み込んだ種は言伝の樹の種、言伝の樹は植物の心も分かるようになるのよ」

 ホピリスが右手を差し出してくれた。

 その手をつかみ立ち上がった。

「リレイヤ様のところに案内するね」

 花のカーペットを歩いていると、桜風が頬を撫でる。

 綺麗な桜が満開の大樹の根元に、玉座のような形が作られている。

 そこに座る女性は、僕やホーリー、リミュと同じぐらいの若い女性だった。

「あなたが、リミュの言っていたグラディ?リミュの言う通りみたいね。その言っていたことは今は秘密だけど」

 少し目を合わせただけで色々理解されたようだ。

「私はエルフ族とその眷属を統べる女神リレイヤ。勇者と魔王がその力を認めし友人グラディに全てを伝えんとするもの」

 急に厳かな話し方になった。

「まずは、ジルラギル、いえリーズィーの話をしましょう」

 リーズィー、なにか聞き覚えがある。

 確かホーリーが探していたやつだ。

「ジルラギルは終焉の神の手先の1人リーズィー、このことを知っているのは今ここにいるホピリスと私とあなただけ。ジルラギルという名前も偽物の名前、RIZURAGIRUリズラギルの最初の三文字を反転しただけ。終焉の神はそういう言葉遊びが好きなのよ」

 そんな、ジルラギルさんが終焉の神の手先なんて。

 じゃあなんで俺に色々教えてくれているんだ。

「ただあなたが脅威になるなんて思っていないだけよ。実際は一番の脅威なのにね」

 俺の心は何でも見透かされている。

 なんか恥ずかしくなってくるな。

「これからはホピリスに教わりなさい、そして、勇者ホリレスト、魔王リミュオーバはこんなことで消えるような存在じゃない、信じなさい、あなたの親友を」

 俺の消沈した気持ちすらも読んで、希望になる言葉をくれた。

 今はただ、二人に会った時に恥ずかしくないように強くなるだけだ。

 というか勇者魔王女神の三人に会うってそんな簡単なことなのか?

「そんな簡単なわけないでしょ、少なくとも種族の王よ、あなたが運がいいだけよ」

 ですよねぇ。

 もはや心を読まれることに慣れてしまいそうだ。

 少しの期間、エルフの国に居候させてもらうことになった。

 エルフは美人が多いと聞くが本当に美人が多く、修行にならない。

 なんて言ってる場合じゃない、エルフの国の図書館の本を読み漁り、毎日新しいスキルを習得するために勉強、研鑽を重ねる。

 二人ともまた会った時に驚かせてやる。


「あの小童が脅威になるとは思えません、計画は順調でございます。万事上手くいった場合にはこのリーズィーを右腕に」

 

 

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