終焉
目の前で砕けた態度を取る終焉の神、本当に世界に終焉をもたらす恐ろしい存在なのか疑ってしまう。
いや、こいつは本当に世界に終焉をもたらすんだ。
今油断したらダメだ、殺される。
そう思い、もう一度気を引き締めようとした。
その瞬間後ろの卵から、2人の人物が現れた。
男性と女性。
俺はその2人を見た瞬間、涙が溢れた。
終焉の神なんてどうでもよく、大粒の涙を落としながら、2人の元へ走った。
走った軌道に涙が輝きながら道を作る。
その道は一本だけではなく、もう一本。
リーズィーも共に作っていた。
2人に抱きつく俺たち。
そう、この2人が俺の両親。
会ったことはない、顔も知らない。
でも、本能でそう感じた。
大人に近づいたはずなのに、家族の温もりを感じて、子供のようになきじゃくる。
母は優しく包み頭を撫で、父の大きい手とその温かさを感じて、嘘じゃないと安心した。
「感動の再会か。」
その低い声に、俺はゾッとした。
そう、今この場にいるのは世界の終焉をもたらす邪神だ。
直ぐに俺は戦闘態勢に入ろうとした。
「カオルド、あんたビビらせすぎよ。」
母親は邪神にフレンドリーに話しかける。
「それはごめんって、久しぶりの外で嬉しかったんだよ。」
そう言って、身体を包んでいた黒いオーラが一瞬にして消え去る。
醜いように見えた腕や足はスラッとして、顔もイケメンと言わざるを得ない美麗な顔立ちをしていた。
「とりあえず、まずは我々の開放感謝する。君たちの力が強大であること、我々が残した種は強く芽吹き、咲き誇っていることを感じさせてもらった。」
父はみんなに、感謝と賞賛の言葉を送った。
「僭越ながら、エンディア様でお間違いないでしょうか、今のこの状況を説明願いたい。」
賢絃はいつ暴れてもおかしくない終焉の神を牽制しながらも、冷静に状況を確認する。
「それはブルワルド改め、カオルドが話すべきではないかな。」
父の言葉に、終焉の神は頷いた。
「そうだな、私はたしかにこの世界を終焉に導こうとしていた。しかし、卵の中で君たちを見ていると、世界の終焉とはちっぽけな話で、一人一人の正義、愛情、友情を深く感じた。この2人とも沢山話し、世界の素晴らしさ、美しさを知った。私は、終焉の神ブルワルドという名を捨て、世界の理を表す神カオルドを名乗ることにした。」
「その言葉は我がエンディアバスディア、並びに妻であるスティリアバスディアの名を持ち、真実であると保証しよう。」
母も静かに頷いた。
この言葉は、世界の終焉が訪れることは無いということを確実にするものだった。
2人の名前の影響は凄まじく、その2人の言葉、俺たちの態度で疑う余地もなく、みんなは緊張の糸がほぐれたのか座り込み、倒れ込みと各々が平和を感じていた。
ホーリーとリレイヤは生きてることを実感して、手を繋いだ。
セバルとスレイは抱き合い、賢絃と靂時雨は静かにこの平和な時を楽しみ、アロリエル、サクリアル、ラムリアルは3人で並んで座った。
ナイトレストとドリグレストは頑張りを褒め合い、ストレイグやネロム、シルディラス、スオルドは自らの武器を当て合い、これからの友情を確かめていた。
ホピリスとリフュレスはその光景を見て、涙を浮かべていた。
父と母は、リフュレスの元へ行き、
「これからグラディをよろしくお願いします。それにしても、あなた達姉妹はリワルスに似ているわね。」
「もちろんです、グラディの一生を添い遂げます。まだ、お母様には遠く及びません。これからも姉妹力を合わせてエルフを始め、女神族を守護できる存在として研鑽していきます。」
改めて、添い遂げると聞くと少し恥ずかしい。
「現五王に問いたいことがある。」
カオルドの言葉に、全員が注目した。
「今のお前たちに種族の隔たりは必要であるか否か。」
カオルドの前に、五王は立ち。
「いいえ、今の我々に種族の隔たりは必要ありません。人間、魔族、エルフ族、オーガ族、獣人族、その全ての力を共に高めたことで今ここに私たちはいます。そして、私は生涯を共にしてもいいと誓える伴侶が出来ました。この想いも、今この場にいる者たちがいなければ芽生えることは無かったでしょう。」
リレイヤとホーリーの繋いだ手が少し強く握られた気がした。
セバルとスレイも、リミュも強く頷いた。
その同意に言葉は要らない。
「ではひとつ提案だ。種族の隔たりを完全に無くすことは出来ないが、寿命を統一することは出来る。エルフ族は長命であり、人間族は短命、その運命を私は悲しいものだと思うがどうする?」
その問いかけに、全員が顔を合わせる。
「カオルド、その質問は少し酷ね。この子達は強いとはいえまだ若い。その結論は今出すべきじゃないわ。」
母の言葉にカオルドも頷いた。
「では、いずれ答えを出す時が来たならば、教えてくれ。私はここで世界を見守ろうと思う。私を復活させようとしてくれた者たちにも協力を仰ぎたいと考えている。賢絃、手伝っては貰えないか?」
ただ、純粋な依頼に賢絃も疑うことはなく、首を縦に振る。
「もちろんです、今のあなたならば、世界を見守る新たな神として世界は祝福すると思います。私の力で良ければぜひ協力させてください。」
そしてふたりは握手をした。
みんなで生を実感したあとは、各々の国へ戻り、世界の平和を各国の民に伝える。
獣人族では、平和と共にカオルドの神殿の建設なども伝えた。
そして、勇者と女神、皇帝と将軍、冥王と時の繋ぎ人の恋愛関係が伝わった。
勇者と女神だけは今更?と民からも言われた。
そして、その3組だけではなかった。
「ホピリス、俺と付き合う気はあるか?」
国へ戻る前の告白に、全員が驚く。
リミュがホピリスに告白したのだ。
「愚問だ。リミュこれからも共にいてくれ。」
4組目のビッグカップル、ホピリスはスレイヤとリフュレスに問い詰められていた。
リミュは魔族とホーリーにいじられていた。
「こうして見ると、みんな先代に似ているのね。」
母はそう言って微笑んでいた。
世界の平和を告げる宴が各国で行われ、人間族の国に全員が集まり、これまでの協力、これからの協力、友情を願った。
そして、その日から1週間。
「カオルド、我々の出した結論は全員の寿命を人間族に統一してくれ。我々の種族の中では1番短命だがそれがとても儚く美しい。」
カオルドは静かに頷いた。
『ワールドリライト』
そのスキルの力で、人間族の寿命に変わったと魂に刻まれたような気がした。
「私は世界の美しさをこれからも守っていこうと思う。時々話し相手になってくれ。」
全員でもちろんと返事をした。
数年後
ゴーンゴーン
鐘の音が響く中で、清純な白いドレスとそれが際立てる褐色の肌。
緊張しながらも一生を添いとげる誓いをした。
そう、リフュレスと。
重ねる唇に感じた温かさに、幸せを感じた。
どんなスキルよりもチートスキル、幸福。
チートすぎるチートスキル、だな。
~Fin~




